犯人
「はあっ、はあっ」
暗闇の中を1人の怪人が走っていた。
ーーくそっ!! 絶対に逃げ延びてやる。
その人影は紅太郎達相手に人質を取り、逃げ延びた怪人だった。
六花が搬送される中、どさくさに逃亡をはかり、どうにか港の近くまでたどり着いていた。後は船さえどうにかできれば、逃げ延びることができる。
「っ!?」
怪人はふと目の前に人影を確認し、立ち止まった。
しかしそれはよく見ると知っている人間ーー今回の依頼人だった。
「あ、あんたか!? 助かった。急いで船を手配してくれ」
「ああ、そうだな」
依頼人は薄ら笑いを浮かべ、その場を動こうともしない。
「おい! 早くしてくれっ!! 大体あんた、話が違うじゃないか。神前桜花は人質を取れば手出しができないって言ってただろ」
言われた男は嘲笑しながら答える。
「確かに神前は動けなかっただろう。妹やペーペーの新人にやられたんじゃ、どうしようもねーなぁ」
依頼人の話は確かに正しかった。桜花は実際、人質を取られた直後には動けなくなっていたのだから。
「くそっ!! そんなことはもうどうでもいい。俺を助けてくれ。このままじゃ捕まる」
周囲ではサイレンが響き渡っていた。かなりの数の検問が敷かれているようで、逃げ場はどこにもなかった。
「大丈夫だ。船を用意してある」
言いながら男は怪人に近づいてきた。
「そ、そうか助かる。でも港まで行くには結構距離があるぜ。どうやって――」
ズグシュッ
濡れた音が辺りに響いた。
「がばっ」
男は血を吐きそのまま地面に倒れこむ。
「三途の川行きの片道切符だけどな。ヒヒッ」
刺された男は自分の身に何が起こったのか、知る間も無く絶命していた。
依頼人は自分の冗談が面白かったのか、笑いながら立ち去って行く。
依頼人の片腕には手の代わりに血に濡れた刃が生えていた。




