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姉妹

「おいっ!! 大丈夫か!?」


 暴走する車に吹き飛ばされた六花は倒れこみ、ピクリとも動かない。


 紅太郎は急いで六花に駆け寄る。


「っ!?」


 頭を切っているようで、出血が酷い。

 流れ出る血液が、地面に血溜まりを作り始めていた。


「おい六花っ!! 返事をしろ」


 耳元で叫ぶが反応がない。

 しかし息はしている。死んではいない。

 いや、仮にもAランクのヒーローが車にはねられた位で死ぬ訳がない。


「弓塚さん聞こえますか!! ええ。六花が負傷しました。意識なしです。……お願いします。あと桜花の様子がおかしくて……わかりました。こっちは任せてください」


 通信を切り辺りを見回す。

 すると弓塚の言っていた通り、英雄機関の救急車が現場に到着したところだった。




「六花、りっかぁ」


 六花が担架で救急車に乗せられる寸前、錯乱気味の桜花が近づいてきた。


 救急隊員より搬送時の付き添いを頼まれたが、今の桜花を1人にする訳にもいかなかった。結果、無理を言って紅太郎と桜花の2人で乗せてもらう。


「りっか……」


 救助隊に窘められたため六花の体にこそ触れていないが、桜花はその綺麗な顔をくしゃくしゃにして泣きじゃくっていた。


「大丈夫だ。六花は死なない。主要な動脈も切れてないし、骨折もしていない。頭の血だってもう止まっているし、おそらく脳震盪で気絶しているだけだ」


 紅太郎は事実を言っているだけだったが、それでも少しは桜花の不安はやわらいだようだった。


「私はいつもこうなんだ」


 桜花が話し始めた。何をと思ったが紅太郎は口を挟まなかった。


「大事な人をいつも守ることができない……。私と一緒にいるとみんな不幸になるんだ」


 紅太郎はなぜか憤りを感じ、思わず大声で叫んでいた。


「そんなことはない。六花は死なないし、お前の近くにいたとしても俺も六花も死なない! 絶対に大丈夫だ」


 何の根拠もなく紅太郎は言い切った。

 ヒーローという立場上絶対はない。そんな事は分かっていたが言わずにはいられなかった。




 紅太郎と桜花が病院についてから三時間が経過していた。

 病院に到着した六花はすぐに処置された。目は覚まさないものの命に別状はないようだった。

 

 紅太郎の予想通り頭以外の傷は軽傷だった。

 頭の傷も出血はあったものの、脳内出血もないようだった。ただ打った場所が場所だけに、いつ目を覚ますかがわからなかった。


「六花まで死んでしまったら……」


 桜花は病室で六花の手を握って何度も何度も呼びかけていた。


「おねがいだからっ死なないでっ!!」


 何度目かわからないその声に反応したのか、六花の瞼がピクっと動いた。


「私は……死なないよ……お姉ちゃん」


 呼吸器越しで苦しそうだったが、六花は意識を取り戻していた。


 桜花は六花を思い切り抱きしめる。


「お、お姉さま……」


 一瞬六花は苦しそうな表情をしたが、すぐにだらしない顔に変わっていた。


 桜花は紅太郎が呼んできた医者に注意されるまで、六花を抱きしめ続けていた。

 



 結局桜花は、今夜は六花に付き添うことになった。もちろん紅太郎は付き添う訳にはいかないので、明日また様子を見に来る事にした。


「じゃあまた明日な。桜花もちゃんと寝ておけよ」


「うん」


 泣き腫らして真っ赤になった眼のままだったが、顔には笑みが浮かんでいた。


「今日は本当にありがとう。紅太郎が一緒にいてくれて本当に良かった」


「あ、う、うんまあな。当たり前だろう」


「また明日ね!! 紅太郎もちゃんと休んでね」


 力強く握られたその手にはいつも通りな力強さが戻っていた。


 だからこそ、逆に紅太郎には先程までの桜花の弱々しさを思い出していた。


 そういえばこいつも女の子だったんだよな。


 そう気づいてしまった紅太郎の心臓は、不覚にも大きく鼓動を刻んでいた。

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