Cランク怪人の実力
桜花たちが行ってから数分後。雪乃と合流した紅太郎は怪人が出没した地点に向かっていた。
「怪人名シマシマタイガー。虎の怪人らしいですが。現在どこの組織にも属していません。名前からして雑魚ですね」
雪乃は駆けながら息一つ切らさず、向かう先の怪人のデータを紅太郎に教えていた。
「神前姉妹が行った先にいるのは、ダイナストの下部組織の怪人達です。おそらくリーダー格はBランク上位の怪人アイアンマスクです。中堅どころの怪人で、普通ならかなりの脅威です」
「まあ普通のヒーローならな」
紅太郎はさして興味の無いように答えた。
そこに向かうのはSランクヒーローの神前桜花だ。
Bクラスの怪人にもなれば銃弾は弾き返すし、鉄骨でさえ粘土細工のように曲げられる。
おおよそ普通の人間では、倒す事は難しいだろう。
だが逆にその程度の力では、いかなる手段を用いても、桜花に傷一つ負わせる事は出来ないであろう。
世界最高峰のヒーローである桜花にはそれだけの実力がある。
おそらくなんの心配も必要無い。
市街地を駆け抜けていくと、遠くに怪人の姿が見えた。その名に違わない大型の虎の怪人だ。
民間人を人質に取っているようで、20代くらいの女性を羽交い締めにしていた。
「っ!?」
人質に気づいた瞬間、紅太郎は加速し怪人に突進を仕掛ける。
「貴様とまれ! さもないと人質の命はながっ」
怪人が台詞を最後まで口にするよりも早く、紅太郎の渾身の力を込めた蹴りが顔面に叩きこまれていた。
紅太郎の全体重が乗った蹴りは、怪人を吹き飛ばし、少なくないダメージを与えた。
「ん!?ああっ?」
その隙に雪乃が怪人の隙をつき、人質を助け出していた。意識は失っていたが目立った外傷はない。息もしている。その事を確認した紅太郎は胸を撫で下ろした。
「ぐっ!貴様人質がいるのに攻撃を仕掛けるとは正気か?」
「あぁん?」
紅太郎はこう言ったケースでは硬直状態こそ一番危ないと、過去の経験上知っていた。
「だいたいてめえらは人質を殺しちまうほうが多いじゃねえか。そんなんじゃ取引する気も起きねーわな」
紅太郎の心には、理由のわからない怒りが発生していた。
こういうやり方を見ていると、なぜかムシャクシャしてくる。
「卑怯な真似ばっかしてんじゃねーよ!! てめーらがそんなんだと怪人の格が下がんだよ!!」
一瞬怪人は逃げるそぶりを見せたが、それよりも早く紅太郎の右ストレートが怪人の顔面をとらえ、10メートルほど吹き飛ばす。
怪人の体はビルの壁に当たって止まったが、気絶しているのか力なく崩れ落ちた。
――たく弱いくせに怪人なんてやってんじゃねーよ。
「これで終わりですかね?」
人質を誰かに任せたのか、雪乃が手早く怪人に手錠をはめていた。英雄機関で作られている特注品で、並の怪人では破壊する事は出来ない代物だ。
「そうだな。やっぱりCランク一人じゃこんなもんだろ……なあやっぱり桜花たちの方が本命だよな……」
まあ雑魚が束になってかかっていったところで、あの神前桜花をどうにかできるとは思えないけどな。
「ちっと俺はあいつらのほうに言ってくるわ。その怪人の始末任せてもいいか」
「わかりました。ここは引き受けます」
返事を聞くなり、紅太郎は桜花たちの方向へと駆け出していく。
「やっぱりなんだかんだいって心配なんですかね……」
雪乃はため息混じりにつぶやいていた。




