ガレット
携帯端末を買った紅太郎たちは、遅めの昼食をとろうと、メインストリートを歩いていた。
「このあたりにおいしい店があるんですの。
そこのガレットは絶品でして……」
六花が熱心にランチメニューの話をしていたが、紅太郎は別の事を考えていた。
しかし俺の知っている神前とはえらい違いだな。もっとこう悪魔みたいな、怪人の俺らよりも怪人らしいというか。
この数日間で紅太郎が持っていたイメージは180度変わっていた。こうして見ているとただの女子高生にしか見えない。
「……でいいかな?紅太郎?」
「はい?」
話を聞いていなかった紅太郎は、素っ頓狂な返事を返してしまう。
「昼ごはんの話だよ。六花のおすすめのそのお店でいいかな」
「別に来たくなければ私とお姉さまで行きますから、あなたは来なくてよろしくてよ」
「いや行くから。なんで俺の事ハブろうとしてんだよ」
正直ハブられる理由がわかっているだけに、紅太郎もあまり強くでれなかった。
店につくと昼には少し早いにも関わらず既に満員に近かった。
幸いオープンテラスの席が空いていて、3人はその席に座った。
「ここはガレットもオススメですが、パンケーキも絶品との事ですの。弓塚さん曰く周りはカリッと中はフワフワらしいですわ」
六花が目を輝かせながら、桜花に対しておススメの料理の説明をしていた。桜花も同じく目を輝かせながら、メニューを見比べていた。
紅太郎はガレットがなんなのかわからなかったが、桜花や六花の反応をおそらく若い女子が好きなものなのだろう。ていうか弓塚さんもこういうとこが好きなのか……
大体パンケーキは飯じゃなくて、完全におやつの範疇だと思うのだが……
ピリリリリッ
急に六花の端末が鳴り始めた。
この音は本部からの緊急要請だ。
「はい。ええ……。いまは例のカフェに……いえ私1人でも……二手に別れて…………であれば仕方ありませんわね」
どうやら紅太郎たちが六花と一緒にいることがわかっていて、連絡をしてきたようだ。
六花としては自分だけでどうにかしようとしているようだが、この際仕方あるまい。
「緊急要請?」
「ええ。2つの地点に怪人が出没してますわ。駅前にBランク1人に、Cランク3人。区役所前にはCランクが1人ですわ。どちらもこの周辺ですが真逆の方向です。戦闘員は伴っていないようですわ」
思わず紅太郎は桜花と顔を見合わせる。基本的に英雄機関では、ヒーローの単独行動は認められていないからだ。
「弓塚さんの指令では私とお姉さまが駅前、九条さんと雪乃さんが区役所に行くようにとの事です」
「雪乃が?」
「ええ。この区画の隣にいらっしゃる様ですの。先行して九条さんに合流してもらえる様です」
「紅太郎……気をつけて」
「ああ大丈夫だ。お前こそ俺以外の奴に遅れをとるなよ」
とは言いつつも紅太郎は桜花の事は何も心配していなかった。Sランクの怪人である自身を持ってしても、まるで歯が立たない化け物だ。それをBランク以下の怪人が、仮に100人集まってもどうこうできるわけがない。
「?……わかったよ。行くよ六花」
「はいですわ」
そのまま2人は駆け出して行った。




