買い物
「つまりはそういうことですの。お姉さまたちにはご迷惑をおかけしませんから大丈夫ですのよ」
「いや、そういうわけにはいかないよ。何かあったら私達にも説明するんだ。わかったね」
「はい。お姉さま」
六花は満面の笑みを浮かべ返事をする。
先ほどの話の通り、六花の説明は簡潔だった。
今日は自身は繁華街のパトロールを請け負っていたが、たまたま桜花達の行き先と地域が重なっていた。
そのため桜花達に同行しながら、パトロールを行うというものだった。
一見紅太郎達に迷惑な行為に見えるが、実際はそうではないと紅太郎は判断していた。
六花は幼く見えるが、英雄機関の中でも桜花に次ぐ実力の持ち主だ。
もしもパトロール中、1人で対処できない様な事態であれば、それは桜花や紅太郎に出動要請がかかる事態であり、どちらにしろ休日は丸潰れとなるからだった。
ヒーローは休日といえども有事の際には動かなくてはならない。
なかなか大変な職業であるが、ふとナインライブズには、休日という仕組みそのものがなかった事を思い出した。
……まあ別に職業で怪人やってるわけじゃないから、どーでも良いんだけどな。
六花の説明を聞きながら歩いていると、最初の目的地である携帯ショップに着いていた。
桜花の私用の携帯電話が、先のナインライブズとの戦闘で壊れてしまったため(壊したのは紅太郎だが)新しい物を揃える必要があったためだ。
「では私はこの周辺をパトロールしてきますわ。お姉様はゆっくり買い物をしてらっしゃってくださいまし」
「あっでも私たちが店を出るのがわからないんじゃ。紅太郎の番号を教えてもらった方が……」
「結構ですわ」
六花の顔は笑っていたが、まるでゴミを見る様な目を紅太郎に向けていた。
くそっ!!俺が……何をしたって…………したなぁ…………まあしょうがないか。
自分がした事を考えると、その視線を受けざるを得ない。
「それに私は携帯など使わなくてもお姉さまの居場所はわかりますわ。私の事は気になさらずにショッピングを楽しんでくださいまし。ゴミ虫がいるのが気に入りませんが……」
「おいいまお前すげー事言わなかったか!?」
あまりの言動に、さすがに紅太郎は抗議をする。
しかし六花の姿は既にそこになく、紅太郎と桜花だけが取り残されていた。
「いろいろな機種があるな」
気を取り直して店に入った紅太郎達は携帯電話を、眺めていた。
そして紅太郎はブツブツと独り言をつぶやき始める。
よしここはチャンスだ。ここで知識のあるところや、経済力のあるところをアピールするんだ。
雪乃から渡された本にも、頭の良い男や金持ちの男はモテると書いてあった。
あくまでスマートにだ。決して金や知識をひけらかしてはならない。
「随分と色々な機種があるんだな」
ーーいまだっ
「そうだなー。こんなに種類があると迷っちゃうよナー。あっこれなんてどうだ?見た目も可愛いしネットの回線も強く、データの容量もかなりあって……」
「でも丈夫ならそれでいいかな」
「えっ」
「ん?どうしたの紅太郎」
「いや……なんでもない」
桜花は既に機種を選び終えて、カウンターへと向かっていた。
「じ、じゃあここの支払いは俺がするよ」
慌てた紅太郎は、経済力という手札を切りにかかる。
「大丈夫。私は普段、英雄機関から給料でてるけどほとんど使ってないし。紅太郎はまだ給料出てないでしょう?」
「いや、俺もそれなりに給料は出てたし。玉藻の奴は人使いは荒かったけど、金払いだけは良かったから」
「えっでも、紅太郎はずっと入院してたんじゃあ……?」
「…………あ、うん、そうだ……な……」
「給料出てたの?」
給料はもちろん出ていたが、ナインライブズの怪人、九条紅太郎としての給料だ。
「いや……出てない……」
「……?」
桜花は首を傾げながらカウンターへ向かう。
その隙に、紅太郎は店の外に出て、雪乃に対して通信を行う。
「おい!お前にもらったマニュアル通りにしたけどダメじゃねーか。どーなってんだ?」
「ああ、そうですね。やっぱマニュアルに頼る男はダメです」
「てめぇっ」
「最近の女子は、奢られるのは好きじゃないって人も多いみたいですよ。桜花さんなんかは典型的なタイプかと」
「先に言っとけよ!!」
「まあ普通食事くらいなら奢りますけど、携帯奢るとか聞いた事ないですけどねー。愛人かなんかかみたいな」
「……あ、愛人!?」
「まあとにかく作戦は続行しましょう。今度は失敗しないでくださいよ」
「…………」
紅太郎は心底うんざりしていたが、頷かざるを得なかった。




