第四話 マジでおいしくもない不味くもない普通の味、"ラーメン畑"
「村長、そういえばマリモの新作が出たらしいですよ。」
「え?本当か?」
「昨日のニンテンダイレクトであったじゃないですか。」
畑道が広がる真ん中に草が生えている砂利道を僕と酒田鮭が歩いていた。
広畑村村議会の帰り道のことだった。
その建物の前に僕達は声が出ないほど唖然としたのだ。
「「ラーメン屋なのに、畑のど真ん中…だと。」」
そのラーメン屋はボロボロの店の上にある古びた看板に「ラーメン畑」と書いていた。
「村長!うちの村役場か隈本市様様の方で営業すればよかったものを、なぜ畑のど真ん中にあるんですか!?」
「鮭議員落ち着け。とりあえず、入ってみよう。私のおごりで。」
「はい!ありがとうございます!」
僕達はドキドキしながら、ラーメン屋の扉を開けた。
「いらっしゃい。」
おばさんが元気よく挨拶をした。
ラーメン屋の中は奥から厨房、カウンター、4人がけのテーブル席が2つ、食券発行機があった。
鮭議員は恐る恐る、食券発行機でラーメンの価格を確認した。
「ラーメン…。400円!?チャーハン350円!餃子350円!?あまりにも安すぎる!赤字経営になります!1000円取れるもの400円で…。ここの店主バカじゃない!生粋なバカですよ。」
「店主がいる前にバカは不味いやろ…。とりあえずラーメンとチャハーンを一人一つずつ、餃子を一つ買ってみよう。」
食券発行機にお札を入れると、なぜかまた戻って来た。
「え?!なんでぇ?!新札が…。」
「あぁ。新札不対応なの。」
「新札導入から、2年くらい経っていますよ!どういうことですか!村の問題になりますよ。それ!」
とりあえず、たまたま財布に入っていた新500円玉3枚と100円玉3枚と50円玉を入れると、500円玉だけ返ってきた。
「あの…。新500円玉て…。」
「もちろん。不対応よ。」
「もう4年くらい経っていますよ!国の補助金使えよおぉ!」
村長が困っていると、鮭議員が財布を確認していた。
「村長、夏目漱石の1000円札、2枚。持っていますよ。」
「いつのだよぉ!古すぎるねん!」
食券発行機に恐る恐る入ると、なぜかいけた。
「どうしてぇ!どうしてぇ!夏目行けるんだよぉ!」
「村長!機械が更新してないところは夏目…。行けるらしいです。」
「マジか!一生使わない知識ありがとう。」
とりあえず、議員に新札2枚を渡し議員が代わりに夏目で払った。お釣りを僕が受け取り、おばちゃんに食券を渡した。
「普通とバリカタで。」
「すみません。バリカタとかはやっていません…。」
「あ…。じゃあ、普通で。」
ご飯ができるまでを待っていると、酒田議員があるものに向けて表情が固まっていた。
なんでだろうと、その目線の方を見るとそこには衝撃なモノがあった。
「猫!?村長!衛生環境大丈夫なんですか?」
「猫を飼う許可は貰ってないけど、衛生許可は貰っているから大丈夫やろ。」
「大丈夫じゃねぇ!猫の許可もとれよ!まぁ僕ならめんどくさすぎて最低限問題ないなら、衛生許可出しますがね。保健所の連中なんてこんなもんですよ。」
「疑いすぎだよ!」
「疑いすぎではありません!自分ならめんどくさくなってそうします!最低限大丈夫なら大丈夫です!」
と、店主のおばさんがラーメンとチャハーンと餃子を持ってきた。
「はいよ。ラーメン2とチャハーン2と餃子1ね。」
ラーメンはもちろん、店主の指の脂まで入っている。
「「いただきます…。」」
二人は阿吽の呼吸で料理に食らいついた。
ズルズル。パクパク。ジュワ。
……。ここまで苦労したのに不味くもおいしくもねぇ普通のラーメンじゃねぇか…。
おばちゃんが厨房で聞こえそうな小さな声で言った。
「今日でこの店も終わりか…。」
「「閉店!?」」
終わり




