本日のお姉様は、殿下を避けているようです。
筆が進みました。
「ついに、表情を隠すのをやめたんだね。ララ」
そう言われ、フローラは視線だけをフィリクスへ向けた。あの日以来、フィリクスが屋敷を訪れ、こうしてお茶を共にすることが増えていた。
「……お姉様に、何かしたのですか」
「何もしてないよ」
「では、嫌われるようなことを?」
「それもないと思うな。学園でも、挨拶を交わす程度だしね」
「では、なぜ……っ」
思わず声を荒げかけて、フローラは唇を噛む。
(……そうでなければ)
幼い頃から、ロゼリアはいつもフィリクスの隣にいた。誰も入り込めないような空気を纏いながら、並んで歩いていたのだ。
(私には、あんな顔を見せてくださらなかったのに)
フィリクスの前では、昔から少しだけ柔らかかった。だからこそ、フローラはずっと遠くから見ているしかなかった。
それなのに、今は違う。
フィリクスと距離を置くようになったロゼリアの姿が、どうしても理解できなかった。
「僕はロゼリアの許嫁ではあるけれど、ローゼンベルク家の娘であれば、婚約相手はどちらでもいいと言われているんだ」
フィリクスは紅茶をひと口飲み、穏やかな声で続ける。
「――この意味、分かるかい? フローラ」
スカイブルーの瞳が、真っ直ぐにフローラへ向けられていた。その言葉の意味を、理解できないほど子供ではない。
――けれど。
「私はあなたのこと、幼い頃から嫌いです」
そう言い放つと、止めていた手を動かし、マカロンを口へ運ぶ。優しい甘さが口の中で溶けていく。
――その甘味を壊すように、フィリクスの笑い声が響いた。
この設定思いついた時も、お風呂だったんですけど、お風呂で思いつきました。お風呂素晴らしい。




