本日のお姉様は、殿下とのお茶会を薦めてきます。
社畜しすぎて筆が進みません。
目の前に座る王太子殿下を見つめながら、フローラは紅茶にそっと口をつけた。金色に近い髪は太陽の光を受けて輝き、まるで宝石のように煌めいている。
フローラが黙っているせいか、王太子殿下――フィリクスも言葉を発することはなかった。目が合うと、にこりと微笑むその姿に、きっと世の姫君たちは皆、虜になるのだろうなとフローラは思った。
あれほど彼に執着に近い感情を向けていたロゼリアが、今は彼とどこか距離を置いているようにも見える。きっと――
(この男が、ロゼリアお姉様に何かしたんですわ)
怒りを含んだ瞳を向けるフローラを見て、フィリクスは小さく息を吐きながら笑った。
「君は相変わらずだね、フローラ」
表情には出さないようにしていたつもりだったのに、見抜かれていたらしい。きっと、ロゼリアなら完璧に隠せただろう。悔しいような、でも誇らしいような気持ちが胸を満たす。
「気安く名前を呼ばないでください、王太子殿下」
「幼い頃のように、フィーと呼んでもいいんだよ」
「ララ」
幼い頃に呼び合っていた愛称を、いとも簡単に呼ぶフィリクスに、フローラの顔は歪む。その表情を見て、彼はさらに面白そうに笑った。
不満げに彼を見つめる視線の先、木陰からこちらを覗いていたロゼリアを見つける。フローラの様子を確認すると、彼女は嬉しそうに微笑んでいた。
(お姉様……!!笑っていらっしゃるわ。その笑顔も可愛らしい)
声をかけようとしたが、ロゼリアはそそくさと姿を消してしまった。落胆の気持ちで、フローラは紅茶に手を伸ばす。
「君の色んな表情を出すのは、昔から僕じゃないのが残念だな」
フィリクスは、誰かを思い浮かべているのか、そう呟きながら紅茶をひと口。フローラも同じように口に運ぶ。
先ほどの紅茶より、少し苦く感じた。
(ロゼリア▶︎王太子殿下とのイベントを終わらせ満足。次のイベントに備える)




