本日のお姉様は、嫌われてしまったらどうしましょう。
ミアンの後ろを歩くフローラの足取りは、どこか重かった。
(お姉様に、嫌われましたわ……)
初めての屋敷の外。
初めて見る街。そして、ロゼリアとのお出かけ。
それが嬉しくて、浮かれてしまった。
本来の目的から離れてしまったのは、フローラ自身だった。
学園への入学を控えたフローラのために、街で必要なものを揃える。それが、今回のお出かけの目的だった。
当初、父は心配して、ロゼリアだけを行かせようとしていた。それでも、自分も一緒に行きたいとわがままを言ったのは、紛れもなくフローラ自身だ。
(せっかく、お姉様が同行することを許してくださったのに……)
きっと、以前のロゼリアなら、フローラの願いを断っていただろう。そもそも、こんなふうに一緒に出かけることさえ、許してもらえなかったかもしれない。
最近のロゼリアは、少しだけ優しくなった。
挨拶を返してくださるようになった。
ストールまで貸してくださった。
だからこそ。
そのロゼリアが、また以前のように戻ってしまうのではないかと思うと、フローラの胸は締めつけられるようだった。
(また…前みたいに戻ってしまうのかしら)
そう思うと、フローラの足取りはますます重くなった。
ロゼリアとの待ち合わせ場所に近づくにつれて、フローラの足取りはますます重くなっていった。
「ロゼリア様」
ミアンの声に、俯いていたフローラは顔を上げる。
数メートル先には、ロゼリアが座っていた。ミアンの声に気づいたのか、ロゼリアは立ち上がると、こちらへ向かってくる。
その姿を見た瞬間、フローラの胸に罪悪感が込み上げた。
思わず目を閉じる。
(きっと、怒っていらっしゃる)
そう思ったのに――。
「フローラ! 怪我はない?」
予想もしなかった言葉に、フローラは驚いて目を開けた。目の前まで来たロゼリアは、少しだけ心配そうな顔でフローラを覗き込んでいたのだった。




