本日のお姉様は、新たなものを知りました。
最近、ネジ外しゲームにハマってます。
「これを飲んで、落ち着くといい」
差し出されたのは、いつも飲んでいるティーカップとは違う器に入れられた飲み物だった。白い湯気が立ち上るそれを眺めていると、差し出してくれた白い髭を生やした年配の男性が、ハッとしたように声を上げた。
「すまない。うちにはこんな物しかなくて。どこかの令嬢であるお嬢さんには、飲めなかったな」
「あ、いえ!そんなことはありません。初めて見る飲み物だったので……」
いつも口にしている紅茶とは違う、初めて目にする飲み物に、フローラは不思議そうにそれを見つめる。
「ああ、失礼。これは『新茶』というものでね。この国ではない、別の国では一般的に飲まれているものなんだ」
男性は毒味をするように、フローラに差し出したものと同じ飲み物に先に口をつける。
それを見て、フローラも新茶へと口をつけた。
紅茶とは違う、ほんのりとした苦味が口の中に広がる。
「……美味しい」
フローラの様子に、男性は安堵したように微笑んだ。
温かい飲み物を口にしたからか、先ほどまで張り詰めていた気持ちも、少しずつ落ち着いてきたように感じる。
フローラは改めて、辺りをそっと見渡した。
「ここは、何かのお店ですか?」
「ああ。ここは異国の物を取り扱っている店だよ。まだ数は少ないんだけどね」
そう謙遜する言葉とは裏腹に、店内にはお菓子のような物から本まで、様々な物が所狭しと並んでいた。
けれど、決して雑然としているわけではない。どの商品も綺麗に整理されており、店主のこだわりが感じられる。
「異国の物ですか……」
「ああ。興味があるかい?」
「興味……。幼い頃、本で読んだことがあるくらいで……いつか、行ってみたいとは思っていて」
病弱な身体で、自由に外へ出ることができなかったフローラにとって、本は友達のようなものだった。
その中でも、物語に描かれる異国の風景や文化は、幼いフローラにとってとても興味深いものだった。
本の中でしか知らない遠い国。
いつか自分も、そんな場所へ行ってみたい。
幼い頃から抱いていた小さな憧れは、今もフローラの心の片隅に残っていた。
(その時は、お姉様も一緒に行ってくれるかしら)
そんな小さな願いが、ロゼリアに届くことはきっとないのだろう。そう思いながら、フローラは静かに目を伏せた。




