39 かきかけの作品➄
招待状には十五時に広場の噴水へ集まるよう書かれていた。
「ここですね」
噴水周辺には出し物がないから人気は少ない。それでも僕らが手に持っている封筒と同じものを所持している人が十人くらい集まっている。
やっぱり僕ら以外にも参加者がいたか。けど思った以上に人数が少ない…もっと数十人くらい集まるものだと勝手に想像していたのに。
「時間ね」
筒紙さんが時計台を見つめながらそう呟く。
秒針が上を差すと、噴水の裏から一人の女性が現れた。
「…全員集まったようですね」
真面目そうな長髪の女性は集まった面々を見回す。
「私の名前は長門菊…今回の企画の主催者です」
※
「これから皆さんには“ある物”を探してもらいます」
長門さんはそう言って一枚の封筒を取り出す。
僕らが手にしたものと同じ物だ。
「この封筒に入っているQRコードでダウンロードしたアプリにはAIが搭載されています。既に新しい情報がそれぞれの端末に更新されているでしょう」
みんなは咄嗟に自分のスマホを確認した。するとメッセージしか表示されてなかったアプリの画面が変わっている。
「そのアプリを手掛かりに学園祭を探索すれば、隠された賞品の元に到達するでしょう」
なるほど、つまり宝探しゲームだな。
ダウンロードしたアプリが攻略の鍵ということだ。
「以上が企画の概要なのだが、最後にもう一つ…」
長門さんは急に声のトーンを落とす。
「ここに集まる皆さんには大きな目的があって華岡学園に入学したのでしょう」
大きな目的…?
進路…という話ではなさそうだ。
「今回の賞品はある人から託されたものでもある。もし手に入れることが出来れば、目的達成に大きく役立つでしょう」
ある人から託された?
何の話をしているのか分からない。
「……」
「…」
でも五十鈴さんと筒紙さんは目を丸くしているような気がする。
…ああ、そうか。
五十鈴さんは入院先の先輩からノートを、筒紙さんはお姉さんの残した“かきかけの作品”を託されている。大きな目的を達成するために華岡学園に入学したといっても過言ではない。
そう考えれば長門さんの言うことも納得できる。
でも…どういうことだ?
確かに似た展開ではあったけど、二つの物事に関連性はまったくない。それなのに長門さんは無関係ではないと言っているようだ。
「あの、質問いいですか」
僕は咄嗟に手を上げた。
「申し訳ないが質問は受け付けない」
話を終えた長門さんは背中を向ける。
「聞きたいことがあるなら、アプリの中のAIに尋ねてみるといい」
そう言い残してこの場を後にした。




