40 かきかけの作品⑥
こうして学園祭一日目は終了した。
あれから僕たちはすぐ日ノ国さんたちと合流して、封筒に関わるイベントの内容を伝えた。でも高等部のイベントが盛り沢山すぎてこの件は後回しになってしまった。
家に帰宅して落ち着いた頃。
僕は改めてダウンロードしたアプリを開いてみる。
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Talker 『』
Answer『』
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トーカーとアンサー…話し手と答え手。
Talkerには文字を入力することが可能だ。
イベント主催の長門先輩はこのアプリにはAIが搭載されていると言っていた。つまりTalkerに文字を入力して質問すれば、Answerから返事が返ってくるはずだ。
最近は技術が進化していると話題のAIだけど、僕は意思疎通をしたことがない。しかも華岡の天才が生み出したものか…まさか自我なんて持ってないだろうな。
ピコン
アプリを見ているとにゃいんの方から通知がきた。
五十鈴さんからだ。
『園田くん、ちょっといい?』
『何でしょう?』
『その、アメ先輩について話があるんだ』
…
アメ先輩とは五十鈴さんが病院に入院していた頃の先輩で、一緒に『元気になったらやりたい100のこと』をノートに書いてくれた人だ。
それ以外の情報は何も知らない。
先輩とは会ったことすらない。
『これを見てほしいの』
続いて五十鈴さんは写真を投稿してくれた。
それはやりたいことノートの、まだ見たことのないページだった。
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61 宝探しをする。
62 アルバイトに挑戦。
63 ラーメン屋でマシマシしたい。
64 ボランティアに参加する。
65 珍しい昆虫を採取。
66 天体観測をする。
67 潮干狩りを体験。
68 川で釣りをする。
69 のんびりキャンプ。
70 闇鍋パーティーを開く。
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『宝探しをする…ですか』
内容としては実に面白そうなイベントの数々だけど、だからこそ最初の項目に違和感を覚える。一つだけ曖昧というか何をしていいのか分からない。
でも今の僕たちが読めば達成の目処が立つ。
まるでこの日のために用意されたかのような項目だ。
『その…アメ先輩って華岡の生徒なんですか?』
僕は思い切って質問してみた。
五十鈴さんと出会ってもう一年と半年以上…親しい友達になった今だからこそ、絶望だった入院生活の過去に少しだけ触れられる。
いったいアメ先輩とは何者なのだろう。
『分からないけど、華岡の入学をおすすめしてくれた』
『先輩は今も学生ですか?』
『ううん…私と同じ病気で、治らなかったんだ』
『…なるほど』
やっぱりアメ先輩はもうこの世にはいないんだ。
薄々とそんな気はしていた…生きていたらノートを書かせた五十鈴さんを一人にするはずがない。同じ病気で先輩に先立たれた五十鈴さんの当時の心境は想像を絶する。
『もし生きていたら、歳はいくつくらいに?』
『大学生になってるはず』
『イベント主催の長門先輩の同級生かもしれませんね』
『うん…それに、ある人から託されたって言ってた』
改めて情報を整理すると辻褄が合う。
このイベントにはアメ先輩が関わっている可能性が高い。
『でもどうして僕や筒紙さんまで招待されたのでしょう?』
『それは…分からない』
不可解に思える点は他にもいくつかある。
他の参加者との関連性は何なのか、どうしてこんなイベントを開催させたのか、託したい物があるならどうして生前に渡してくれなかったのか。
やっぱりアメ先輩とは関係ないイベントなのか?
『どちらにせよお宝とやらを手に入れればハッキリするでしょう』
『うん……!』
様々な疑問もイベントに関わっていけば解けるはずだ。まずは長門先輩の言う通り、アプリの中のAIを使って校舎に隠された宝物のありかを探し出してみよう。




