38 かきかけの作品④
午前はみんなで学園祭を堪能した。
朽木さんと出雲さんが出場した障害物大会は、まさにテレビでやってるSASUKEそのものだった。運動神経の良い二人は見事に一回戦突破、明日は今日よりもっと難しい障害物が用意される。
芸能人とかも飛び入り参加して大盛り上がりだった。
みんなで一緒にお昼ごはんを済ませた後は自由行動になる。予定通り僕、筒紙さん、五十鈴さんの三人は大学部へ向かった。
華岡学園は正門を抜けると二つの道がある。
左に進むと通い慣れた高等部の校舎に繋がっていて、途中の道を曲がれば中等部の校舎に向かうこともできる。そして右の山のような急斜面を登ると大学部の校舎に到着する。
ここに来るのは僕たちも初めてだ。
「うわ…すごいですね」
大学部入口を抜けると、広大な庭園が僕らを迎えてくれる。日ノ国さんの家の朝顔畑にも驚かされたけどここも引けをとっていない。
「綺麗な花……」
五十鈴さんも圧倒されている。
校舎の作りとしては高等部とほぼ同じ…でも地図で見ると敷地の広さは倍くらいある。遠くに行くと牧場やゴルフ場なんかもある。入口で自転車の貸し出しをやってるのも納得だ。
「ここへは前の学園祭で来たことがある」
筒紙さんは初見ではないようだ。
「そして前回と同じなら…あっちに行ってみましょう」
珍しく筒紙さんがリードしてくれるようだ。
イベント開始の十五時まで時間があるから少し寄り道してみよう。
※
筒紙さんが向かったのは広い庭の左隅。
「やっぱりあった」
そこには怪しげなテントが設置されていた。
看板には“占い”とだけ書かれている。
「占い師の出店ですか」
普段なら占いなんてオカルトは信じないけど、ここはあらゆる天才を集めた華岡学園。占い師の天才がいても不思議ではない。
「おやおや、いつぞやのお嬢さん」
するとテントの中から眼鏡をかけた文科系の女性が姿を現した。何というか流石は大学生、雰囲気がしっかりとした大人だ。
「ご無沙汰しています」
「占いの通り素敵な出会いがあったようだのう」
「まぁ…それなりに」
どうやら筒紙さんとは知り合いのようだ。
「それじゃあまた占ってみせよう」
占い師はテントの中に入るよう促す。三人で入るのは少し狭そうだから、僕は少し離れた場所で立っていよう。
「前回は水晶占いだったから、今年はタロットカードで三人の運命を占ってみよう」
占い師はパラパラとカードの束をシャッフルする。
「さあ、引いてみるといい」
「…」
筒紙さんは無作為に一枚のカードを引く。
「ふむ…隠者の逆位置。何者かによって欺かれ、真実が見えなくなっている。目的を達成させることは容易ではないようだ」
何者かの手によって欺かれる?
なんだか物騒な話だな。
「そして真実を示すカードは…そこのお友達に捲ってもらおう」
「……!」
五十鈴さんは緊張しながらカードを一枚だけ引く。
「戦車の正位置ですな」
戦車…どういう意味だろう。
「真実へと到達する道は困難でも臆さず進むことだ。多くの人がそれを望み、力を貸してくれるだろう」
力を貸してくれる?
誰がそんなことしてくれるんだ。
「このカードは記念に取っておくといいよ」
そう言って占い師はタロットカードを筒紙さんと五十鈴さんに渡してくれた。
※
占い師に手を振られ、僕らはテントを後にした。
「なんか意味深なことをいろいろ言われましたね」
まるで僕たちに目的があることも見透かしているようだ。筒紙さんの“描きかけの作品”を探し出すのは困難な道のりだけど、協力してくれる人は必ずいるという。
「とにかく前に進んでみよう……!」
五十鈴さんは戦車のカードを掲げながら意気込む。
「…本当に、どこまで真実を知っているのか」
そう呟いて筒紙さんは貰ったカードを鞄に収める。
「そろそろ例のイベント会場に向かいましょうか」
「あ、もう時間ですね」
果たして僕らのパンフレットにだけ入っていた招待状が、どんなイベントを巻き起こすのか。適当に参加しながら筒紙さんの探し物の情報を集めよう。




