R037話 公開
1942年夏 『日本 東京湾』
多数の民衆が詰めかけていた。
埠頭や砂浜は人、人、人で溢れている
「すげぇー」
「でっかいな」
「無傷で手に入れるなんて凄いな」
「さすがは無敵皇軍」
人々が指差しながら話しているのは海に浮かぶ22隻の軍艦の事だ。
この日、東京湾で拿捕したアメリカ軍艦が民衆にお披露目されていた。
元ニューマン艦隊の巡洋艦シカゴ、アストリア、ポートランド。駆逐艦5隻。そして空母レキシントン。
元ハルゼー艦隊の巡洋艦ノーザンプトン、チェスター、ソルトレークシティ。駆逐艦9隻。空母エンタープライズ。
巡洋艦が一番手前、次に空母、そして駆逐艦が並んでいる。
民衆からすれば、この時代はまだ大艦巨砲主義の戦艦中心の時代だ。
空母の重要性に気付いている者は少ない。
それ故に巡洋艦を前面に押し出しお披露目していた。
去年の12月に鹵獲したにも関わらず、夏に公開になったのは、海軍との共同調査と慣熟訓練に時間が掛かっていたからだ。
それにプラスして海軍と陸軍の間で、この鹵獲艦の帰属について揉めたからでもある。
海軍としては、陸軍にこれらの鹵獲艦を譲ってもらいたかった。
餅は餅屋に任せてほしいという考えである。
陸軍としては摂政直属の「桜華」部隊による鹵獲である為、摂政に判断を委ねていたし、決めるのも摂政であるのが当然の事だと判断していた。
そして摂政の考えは、このまま「桜華」部隊での鹵獲艦使用の方針を打ち出す。
ただし、摂政は駆逐艦1隻と海軍のある物との交換を望み、それは海軍も同意して実行に移されている。
しかし、海軍上層部はともかく、陸海軍部課長会議の海軍の中堅幹部達は納得していなかった。
空母2隻、巡洋艦6隻、駆逐艦13隻ともなれば小国にも匹敵する艦隊である。
それを陸軍が運用!?
それでは日本軍の中で海軍が二つあるようなものであり、戦力運用の観点から効率を欠くと粘りに粘ったのである。
正論である。
しかし、陸軍としても自分達が押さえた戦利品とも言うべき鹵獲艦を、タダで渡すのは面白くないし、何よりも摂政が決めた事である。
断固、拒否した。
このゴタゴタは長引き、海軍と陸軍との間でしこりを残す事となったのである。
「陸軍東遣艦隊」
それが新たに設立された陸軍の艦隊である。
陸軍の持つ海軍という存在だ。
艦隊乗員は閑見商会の海運会社で元海軍士官に鍛えられた「桜華」の孤児達である。
既に訓練は完了している。
この艦隊が出撃する時期は間近に迫っている……
【to be continued】




