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R030話 西海岸

 1942年2月 『アメリカ西海岸』


 アメリカ西海岸、オレゴン州南西の港町ノースベンドとクーズ・ベイ、カリフォルニア州の北西の港町クレセント・シティとユリーカ。この4つの港町周辺を占領した日本軍「桜華丁班」に対しアメリカ軍の動きは鈍かった。


 ワシントンDCの陸軍省と海軍省が壊滅しサンフランシスコにあった西部防衛軍司令部もウラン爆弾(原子爆弾)による攻撃で殲滅されていた。

 西海岸一帯を統括する上級司令部が消えたのだ。

 残された下級司令部が混乱するのも無理は無かった。


 その上、そうした下級司令部に開戦直後から、ありもしない日本軍機の空襲や日本艦隊出現の錯綜する誤情報が伝わり、その対応に右往左往していた。


 しかもカリフォルニア州の中規模の港町サンタ・バーバラ、グローヴァ・シティ、小規模の港町カンブリア、カーメルと言った港町が日本軍「桜華甲班」の攻撃を受けていた。


 カリフォルニアの防衛を担当する第3軍司令部はモントレーにあった。

 ここは日本軍の攻撃から被害を免れている。


 第3軍司令官スティウェル中将は、日本軍によるサンタ・バーバラ、グローヴァ・シティ、カンブリア、カーメル、そしてクレセント・シティとユリーカへの攻撃は、アメリカ軍の兵力を引き付ける陽動作戦だと判断していた。


 本命はロサンゼルス周辺に来るものと判断している。 

 そしてロサンゼルスと、その周辺の油田こそが目的だろうと。

 

 もはや石油は戦争と経済に不可欠で重要な物だ。 

 ロサンゼルスの南北にはカリフォルニア州有数の油田が集中している。

 南はロサンゼルスに近い順にエルウッド油田、ロングビーチ油田、エルウッド油田があった。

 北はロサンゼルスに近い順にミッドサンセット油田、ケットルマン油田、コリンガ油田があった。

 これらの油田でアメリカで産出する石油の約2割を占めている。

 戦前にはそれらのカリフォルニアの油田で産出される石油の約3割が日本に輸出されていた。


 スティウェル中将は兵力をサンタ・バーバラ、グローヴァ・シティ、カンブリア、カーメルへ送り込み、上陸して来た日本軍を制圧させた。

 また特殊爆弾(ウラン爆弾)の攻撃により大被害を被ったサンフランシスコやロサンゼルス、サンディエゴに救援隊を送り込む。

 また、それらの都市の防衛も固める。


 しかし、兵力が充分とは言えなかった。

 特殊爆弾(ウラン爆弾)の攻撃によりサンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴでアメリカ軍将兵の多くが亡くなっていたからだ。


 それにプラスして軍需品の補給が滞っている。

 大都市への特殊爆弾(ウラン爆弾)の攻撃で、生産工場が破壊されたり、鉄道への破壊工作で物流が寸断されている。


 それ故に戦略的に重要とは言えないカリフォルニア州の北西の港町クレセント・シティとユリーカへの対応は後回しとなっていた。


 幹線道路に少数の警戒部隊を配置すめる共に、付近の民間飛行場に戦闘機隊を送り込み、偵察機を飛ばす措置をとっていた。

 補給の目途がつかないため、大部隊を派遣する事ができず奪還作戦を行えずにいる。


 日本軍はクレセント・シティとユリーカ付近の防衛を固め積極的に占領地を拡大する動きには出ていない。

 そのため、この方面では戦闘機同士の空戦がメインの戦いとなっていた。


 だが、第3軍には補給と同じく補充機が送られて来ない。

 しかし、散発的とは言え空戦を繰り広げていれば機体の消耗は嵩む。

 仕方なく窮余の一策として民間に呼びかけ元軍用機の供出とパイロット経験者の志願を求める措置をとっている。


 そうした対応で精一杯だった。

 それがアメリカ西海岸南部の状況だった。



 アメリカ西海岸北部も似たような状況だった。

 西海岸北部のワシントン州にある第1軍団司令部では、司令官のチャールズ・スコット少将と幕僚達が苦悩していた。


 ワシントン州のシアトル、プレーマートンが特殊爆弾(ウラン爆弾)の攻撃により壊滅し、ボールダーダムまで破壊された。

 特にボールダーダムの破壊による下流での被害はかなりのものだ。

 水も電気もストップした地域は広く、物流も寸断されている。

  

 助けなければならない人々は多く、兵力はそれに比べあまりにも少ない。


 しかも、日本軍は気球に兵士を乗せて飛ばして来た。

 ワシントン州周辺の陸軍航空隊も海軍航空隊もこの気球の迎撃にかかり切りとなっている。


 とてもオレゴン州南西の港町ノースベンドとクーズ・ベイを占領した日本軍に対応できる余裕は無かった。


 それに日本軍の上陸したオレゴン州は州とは言え人口は約100万人でしかない。

 面積に比べ人が少ない。

 一番発展している大都市がポートランドであり、そこは既に日本軍の特殊爆弾(ウラン爆弾)の攻撃により壊滅している。

 しかもボールダーダムのあるコロンビア川はオレゴン州との州境でもあり、ダムの破壊による下流での被害はオレゴン州にも及んでいる。


 元々オレゴン州に配置されていたアメリカ軍部隊は少数であり、しかもポートランドでの攻撃により被害を出していた。

 ノースベンドとクーズ・ベイを占領した日本軍に対抗できる筈も無かった。



 こうした要素が絡み合い、日本軍「桜華丁班」が占領しているアメリカ西海岸地域では散発的な戦闘はあるものの未だ本格的な地上戦闘には至っていなかった。

 主たる戦いは空戦だった。

 だが、空戦で戦線は動かない。


 この方面は膠着状態になっていた。

 それがいつまで続くのかは、いつ終わるのか、まだ誰にも分からぬ事であった……


【to be continued】

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