R026話 結社
1942年◯月 『アメリカ』
アメリカ合衆国には様々な組織がある。
史実において1924年にアメリカで発行された本に「A Dictionary of Secret and Other Societies(秘密結社の辞典)」というものがある。
これには約1600を超える結社が載っている。
この中には外部からは秘密結社と認識され、あるいは呼ばれているが、自分達では秘密結社ではないとしている組織もある。
それはともかく、こうした秘密結社の多くは厳かな秘密儀式を行い会員を入会させるが、その目的は会員の共済、相互扶助、社交を目的とした組織が多い。
ただし全ての秘密結社の活動が円滑というわけではなく、中には「古きハイバー二アン」や「カトリック・アメリカ騎士団」のように短期間で消滅した結社もある。
秘密結社の方向性も様々だ。
「◯◯ン◯◯◯騎士団」などは宗教組織としての色合いが強く、入会資格は18歳から45歳までの男のカトリック信者しか入れない。
アメリカ全土に支部があり1930年代の時点で約60万人が会員になっている。
「◯◯ー◯◯」は農民の為に創られた結社であり、現代でもアメリカにある三つの大きな農民組織のうちの一つとして影響力を持っている。
「◯ー◯」は、子供を大切にする結社で孤児院や職業訓練所を独自に設立している。1920代に既に65万人もの会員を抱える組織になっていた。
「◯◯◯◯」は、元は芸術家達の集まりから始まったが、芸術家以外にも門戸を開いた事から会員が100万人を超えた時代もあった。後には愛国的政治家達の社交クラブとしての性格が強くなり、1930年代にはアメリカの上下両院議員の約6割が会員となっていた。
「◯◯ィ◯◯の騎士団」はルーズベルト大統領も会員になっていた結社だ。白人のみの組織で有色人種は入れない。ユダヤ人も入れない。現代の生命保険・医療保険の様な会則があり、会員が病気になったり死亡すると保険金が送られた。1920代の時点で75万人もの会員を抱えていた。
こうした生命保険・医療保険の様な会則がある秘密結社は多い。それどころか現代のアメリカにある某大手生命保険会社もとある秘密結社がその始まりである。
こうした秘密結社はその活動内容や会員について不透明な事からよく謀略論で名前をあげられる。
そのよく名前のあがる秘密結社に「◯◯ー◯◯◯◯」がある。
実は史実において太平洋戦争が始まった時、上海を攻略した後で日本海軍は、この有名な秘密結社の支部を制圧し、その実態調査に乗り出している。
その時の調査で判明したのは実に多くの結社の支部がありインド、中国、仏印、蘭印、マレーシア、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ等に総計で3000を超える支部がある事が判明している。
なお、この上海攻略の時には他にも複数の秘密結社の支部を制圧し証拠品を押収している。
日本海軍も秘密結社に一応の関心は持っていたようだ。
今回の歴史において日本の攻撃によりアメリカは大打撃を被った。
連邦政府が消滅し、アメリカ軍も被害が大きい。
州政府が健在な州はよかったが、州政府が消滅した州もある。
そうした州政府が消滅した地域に住むアメリカ国民は、家族と自らが生きる道を探るべく模索し始める。
村単位、町単位、市単位、郡単位で纏まり助け合おうという地域もある。
移民コミュニティで助け合おうとする動きもあり、中には旧ヨーロッパ王家の末裔を旗頭にしようという動きも活発だった。尤もこれについては裏で閑院宮摂政が動いていたのであるが。
他にも様々な道が模索されていた。
秘密結社の力をあてにするのもその一つである。
秘密結社の共済、相互扶助という秘密結社の存在意義が、ここで大きくクローズアップされ、秘密結社の会員達の中には自らの加入している結社の力を頼りにする者も多かった。
そうした秘密結社の中には時世の流れのままに自衛武装組織へと変貌していった組織も少なからず現出したのである。
それは、混乱するアメリカの情勢を更に複雑にするものであった……
【to be continued】




