R027話 行き先
1941年中旬~下旬 『アメリカ各地』
「お前ら日本人のせいでぇーー!」
「お、俺はアメ、アメリカ人だ、や、やめてくれ、たすけて」
白人の男達が目を血走らせ、鬼の形相をしながら若い東洋人を容赦なく蹴りつけていた。
暴力を振るわれているのは彼だけではなかった。
「お前らが、お前らが悪いんだ!!」
「や、やめてくれ……」
地面に倒れている中年の東洋人を白人の男達が角材で滅多打ちにしている。角材は見る見るうちに赤い血に染まっていく。
「俺の子供を返せぇ―――!」
「メリンダの仇だ!!」
「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
殴る蹴るでは飽き足らず白人の男達が若い東洋人の背中をナイフで滅多刺しにしていた。
リンチが行われていた。
ニューヨークの避難民キャンプで、シカゴの避難民キャンプで、各地の大都市近郊に設けられた避難民キャンプで東洋人に対する酷いリンチが頻発していた。
誰もそれを止めようとはしない。
ウラン爆弾(原子爆弾)という強力な兵器で大勢のアメリカ人が死んだ。
ウラン爆弾(原子爆弾)を使われた都市は地獄のような有り様だった。
この惨劇を招いたのが日本の攻撃だとわかると、アメリカ人の怒りの矛先は日系人へ向けられた。
ウラン爆弾(原子爆弾)に家族を殺されたアメリカ人は「復讐だ!」とばかりに東洋人に容赦なく暴力を振るう。
リンチの横行だ。
家族を殺された者には怒りしかない。
その怒りは直ぐに一線を越え何人もの東洋人が無惨に殺されていく。
そう「東洋人」にだ。
そのリンチを受けた中には少なからぬ中国人もいた。
殆どのアメリカ人には日系人と中国人の見分けはつかない。
巻き添えを喰らった者が大勢出ていた。
日系人にしてもリンチを不本意に感じる者は多い。
特に日系二世の中には、日本に一度も行った事がなく日本語のできない者もおり、もはや自分はアメリカ人だと認識している者もいるのだ。
だが、そんな事はアメリカの白人には関係無かった。
日系人へのリンチ、いや殺人は日を追うごとに増加する。
日系人はアメリカ人の敵視とリンチに脅え、生きた心地がしなかった。
怯えて息を潜めて隠れ住むような暮らしをするしかない。
難民キャンプから逃げ出す日系人も増えて行く。
日系人とて大勢が原子爆弾の犠牲になっているのに……
閑院宮摂政はアメリカに住む同胞を犠牲にする事に躊躇しなかった。
同胞諸共アメリカの大都市を殲滅していたのである。
アメリカに住む日系人からしてみれば、祖国日本に裏切られたと感じる部分もあった。
だが、アメリカ人からも今や自分達は敵視されている。
複雑な心境だった。
ともかく死にたくはなかった。
家族共々どこかに逃げたかった。
しかし、そのあてが無い。
どこにも居場所が無い……
どうしたらいい?
どうすればいい?
このままでは家族が危険だ。
日系人の苦悩は大きかった。
そんな時だ。どこからともなく見ず知らずの日系人が現れ情報を教えてくれた。
日本軍なら日系人を喜んで受け入れてくれると。
日本軍が占領している東部のケンタッキー州フォート・ノックス基地。
中西部にある日本軍の拠点「愛と平和の教団」の農村共同体。
西海岸の日本軍占領地帯。
そこを目指せと……
日系人達は藁にも縋る思いで、この話しに飛びついた。
遠い異国で同胞の絆は貴重だ。
知り合いの日系人にも声をかけ、逃避行が始まった。
西海岸周辺にいた者は日本軍の西海岸占領地域へ。
ニューヨークを始め東部にいた者達はケンタッキー州のフォート・ノックス基地へ。
シカゴや南部の者達は中西部にある日本軍の拠点「愛と平和の教団」の農村共同体へ。
日系人達は人目を忍びながら、それぞれ日本軍の拠点を目指す。
日本が、祖国の同胞が救けてくれる事に望みを託して……
【to be continued】




