R013話 NI設立!
【筆者からの一言】
摂政殿下は、いったい何人アメリカに送り込めば気が済むのか……と、思っている読者様。
まだ、まだ続きます。
1942年◯◯月◯◯日 『アメリカ ワシントン州 某所』
二人の男が話し合っていた。
いや片方が片方を説得している。
「今、君の力が必要とされているんだ。君がリーダーになれ」
「俺は政治には関わりたくない」
「まだ、わからないのか。君がそう言おうと、どう思おうと君の引く血はそれを許してくれない。
だから収容所に入れられたんじゃないか。
君のお父さんもお兄さんも殺された。
次は間違いなく君の番だぞ」
「そうは言っても……」
「望むと望まざるとに関わらず、もう君が生きて行くには表の舞台で力を付けるしかないんだ」
「だけど……」
「我々が力になる。せっかく助けたその命なのに、君は殺されたいのか?」
「………わかった。リーダーになるよ」
「有り難う。心より感謝するよ。
心配はいらない。俺達がいる。それにきっとお父さんの信奉者達が集まって来るよ」
「そうだといいんだが……」
男は消極的ながらも説得を受け入れた。
この数日後、アメリカ合衆国ワシントン州の小さな町で一つの組織が設立され、そのニュースが世界に流された。
その組織の名は「新インターナショナル」
組織の代表者はセルゲイ・セドフ。
レフ・トロツキーの次男である。
レフ・トロツキー。
レーニンと共にロシア革命において大きな役割を果たした人物である。
彼がいなければ革命は失敗しソ連の建国も無かった可能性すらあり得る人物だ。
ソ連の建国初期には政府要人として重要な地位に就いている。
しかし、レーニン死後における政府内での権力闘争に敗れ他国への亡命を余儀なくされた。
共産主義の在り方、その方向性、理論をめぐっての対立が切っ掛けとなり、それが権力闘争に結び付いての事だっらしい。
そのトロツキーが亡命先から世界の共産主義者達に呼びかけ、設立されたのが「第四インターナショナル」だ。
トロツキーの唱える共産主義理論に同調する共産主義者達が集まって連帯した組織である。
第四と言うからには当然の如く第一から第三までインターナショナルはある。
「第一インターナショナル」は1864年にイギリスのロンドンで、イギリス、フランス、ドイツ、スイス、イタリア等の労働者団体の指導者達が集まり結成される。
この時、ドイツの労働者団体代表の一人として、後にマルクス主義で世界的に有名となるカール・マルクスも参加している。
しかし、こ組織は方針をめぐって対立が起きたり、政府の対応も国によっては非合法とするところもあり、結局1876年には解散した。
しかし、まだ諦めない者達がいる。
「第二インターナショナル」が1889年にフランスのパリで、世界各国から集まったマルクス主義に傾倒した者達や労働者団体、社会主義組織の代表が中心となって設立される。
だが結局は第一次世界大戦の勃発により、各国の労働者団体や社会主義組織はそれぞれの国に協力する形となり、組織は消滅する。
「第三インターナショナル」は1919年にソ連のモスクワで設立された。
ソ連共産党を中心に世界の共産主義組織が同盟したものである。
正式名称は「共産主義コミンテルン」で、単に「コミンテルン」と呼ばれる事が多い。
1942年の時点ではソ連という国が主導する組織として健在だ。
そして「第四インターナショナル」の登場となるが、トロツキーが1940年にソ連によって暗殺されると、求心力を失いバラバラとなってしまった。
そして、今回の歴史ではトロツキーの次男セルゲイ・セドフが設立した史実には無い「新インターナショナル」の登場となる。
セルゲイ・セドフのセドフは母方の姓だ。トロツキーは己の革命家としての行動が子供達に累を及ぼさないように子供達全員に母方の姓を名乗らせていた。
しかし史実では、スターリンはトロツキーの子供達や親族をも粛清対象にした。
長男は父の道と同じく革命家となっていたがフランスで毒殺されている。
次男のセルゲイは教師で政治活動とは無縁だったが、収容所に送られ1937年に射殺されている。
しかし、今回の歴史ではトロツキーの味方と称する者がセルゲイを収容所から助け出し国外に脱出させていた。
そして今、アメリカにいる。
共産主義者にとって血の繋がりは大きな問題とはなりえない。
大切なのは思想であり、行動力だ。
それでも多くの共産主義者にとってトロツキーの後継者として名乗り出たセルゲイは、トロツキーという巨星を失った者達にとって希望の星に見えたのである。
そして多くのトロツキーの思想に共鳴した者が「新インターナショナル」に集う事になる。
しかし、セルゲイ・セドフは知らない。
自分を収容所から助け出した者達がトロツキーの味方などではなく、閑院宮摂政の工作機関の者である事を。
そして「新インターナショナル」の設立にかかる費用や、宣伝費用、これから組織の維持にかかるであろう資金も全て、この工作機関から提供される偽札である事を。
当然の如く「新インターナショナル」に集まるであろう人々もそれを知らない。
全ては閑院宮摂政の手のひらの上で踊らされている出来事に過ぎなかったのである。
それをセルゲイ・セドフを始めアメリカに住む者達の殆どは知らない。
果たしてこれからアメリカの大地は如何なる歴史を刻むのか。
それは、まだ誰も知らない……
【to be continued】
【筆者からの一言】
そんなわけで2人目の共産主義に縁のある人なのでした。
果たして新インターナショナルは大きくなれるのか……
それは作者にもわかりません。




