とある少女の悲嘆。
私が恐れる怖いことふたつ。
暗闇に光る車のライト。
それから、閉ざされた瞳。
手を握ったまま歩いていく。
秘密基地に別れを告げて、瑤くんが優しく私の手を引いてくれる。
すれ違う人達はみな夕日に染まり、どこか淋しげに目に映った。
「もうすぐ日が落ちるね」
ふいに瑤くんが足を止めた。
私は瑤くんの横顔を見上げて、それから空を見上げた。
東は夜に染まりはじめ、西は夕日が沈み始めている。
瞬きはじめた一番星を見つめて瑤くんが囁く。
「愛夢ちゃん、星は好き?」
「嫌い。あれはただの惑星だから。小熊でもスプーンでもなんでもない。愛着なんてもてない」
聞きたくないものを振り払うように早口で言う。
瑤くんは私を見ないで、声を出さずに笑った。
「俺は好きだよ。星座は詳しくないけど、乙女座はわかる。一番光ってるのをスピカって言うんだ」
「そんなのどうだっていい」
俯いた拍子に涙が零れた。
嫌だと思うのにわかってしまう。
瑤くんの言いたいことがわかってしまう。
涙を零す私に瑤くんは小さく息をついた。
「やっぱり愛夢ちゃんは泣き虫じゃん」
「だって、私が泣いてたら瑤くん、隣にいてくれるでしょう? 私が泣き終わるまで一緒にいてくれるでしょ……?」
泣き濡れた瞳に瑤くんを映す。
泣かない瑤くんをずるいと言ったけれど、私も狡猾だった。
優しい瑤くんは泣いている私を放っておけないと知っていたから。
でも、だから瑤くんが泣いているときに隣を許されないことが悲しかった。
「愛夢ちゃん。日が落ちるよ」
水のように澄んだ声で瑤くんが告げる。夜が来るよ、と瑤くんは穏やかに告げた。
戻ってきたあのひと7題。
6.畏れていたきざし
『確かに恋だった。』




