とある少女の空虚。
なくしたものを数える度に心が冷める。
得たものから目を背けたくなるから。
「そういえば類と璃裕、付き合ったよ」
「璃裕から?」
「うん。璃裕が煮え切らない類を後ろからタックル気味に抱きしめて決着。今はラブラブすぎて正視するとハゲるって噂になってる」
「じゃあ、類もついにヘタレ卒業かー」
「ううん。相変わらずヘタレてるし、今はデレててヘタレ度増してる」
瑤くんに他愛もない報告をする。
私が知りうることで、瑤くんが知らないこの12ヶ月を辿り、口にしていく。
同級生の恋愛沙汰に友情戦争、文化祭の女装喫茶にカオスすぎた体育祭の借り物競争のこと。
いや、今思い出してもあれは本当にカオスだった。特にツチノコの件。
聞いていた瑤くんはお腹を抱えて目尻に涙まで浮かべて笑い転げた。
比喩でなく、本当に草むらに転がる辺りが瑤くんの面白いところだと思う。
5分ぐらいしてやっと笑いを納めた瑤くんが体を起こす。
髪の毛は草と土がついてひどい有様だ。それを対して気にも止めずに、瑤くんは私を見た。
「愛夢ちゃんはなんかあった?」
「なにかって?」
「テストで0点とったとか、赤点4つとったとか、反復横跳びで脇腹を攣ったとか」
「そんな馬鹿で憐れな事件はないよ」
呆れ半分に肩を竦めれば、瑤くんは静かに立ち上がって土を払った。
急に黙るその表情を見て、私は目を地面に落とした。
落ちはじめた紅葉が視界を赤に揺らす。
滲んだ視界はけれど、すぐに元に戻る。
瑤くんもぱっと顔を上げて明るく言った。
「なら、いいんだ」
「うん」
「愛夢ちゃんはマイペースで泣き虫だから、心配してたんだ」
「そうかな」
「そうだよ」
強い肯定に苦笑が零れる。
埋めようとするほどに遠ざかるように、私の言葉はこの空白を塗りかえることができない。
わかっているのに、埋めたって埋まらないことにはもう。
瑤くんはもう死んでるんだから。
戻ってきたあのひと7題。
4.空白を埋めるように
『確かに恋だった。』




