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僕の羊と君が眠るまで。  作者: シュレディンガーの羊
◇戻ってきたあのひと7題
23/32

とある少女の追想。




笑ってばかりの子供だった。

涙なんか知らない子供だった。




秘密基地なんて名ばかり。

公園の裏手に見つけた少し拓けた空間。

背の高い草に囲まれているから、二人だけの秘密になりえた場所。

瑤くんは気持ち良さそうにぐっと伸びをした。


「んー、懐かし」

「私も久しぶりだから懐かしい」

「あ、まだベンチあんじゃん」


草むらから引っ張り出されたのは丸太。

椅子がわりに二人でよく座ったのを思い出す。

腰を下ろせば、笑いが込み上げた。

きょとんとした瑤くんが振り返る。


「どうした、愛夢ちゃん?」

「どうもしないよ、瑤くん。ただね、私たちは笑ってばかりだったと思ったの」

「嘘だよ。愛夢ちゃんは泣き虫だった」

「嘘つき。瑤くんのほうが泣き虫だった」


決して涙をみせてくれないのに、いつも笑ってばかりだったのに、ちゃんと私は知っていた。

瑤くんは泣き虫だった。

泣かないくせに泣き虫だった。

秋めく風が草むらを揺らして、私の髪をなびかせる。


「瑤くんは私には泣いてくれなかったね。いつも赤い目をするだけで、私に笑ってみせた」

「謎だったよ。だってそうすると愛夢ちゃんは泣くじゃん」

「ずるいと思ってたんだよ。男の子ってこんなにずるいのかって怒ったの」


いたずらを叱られた時も、たくさん練習したのに運動会で負けた時も、近所の猫が死んだ時も、瑤くんは私の前では泣かなかった。

仲良しだと評判で、隠し事なんてないようで、気を許しあった仲のようで、でも瑤くんはずっとそうやって私と同じにはならなかった。


「……懐かし。愛夢ちゃんはよく俺のわからないことで怒ってた」

「それは思い出だよ。今の私は怒ってない」

「そう。だから、懐かしいんじゃん」

「なんかカッコつけてる」

「もとから俺はイケメン生まれだから」


瑤くんが思い出のままに笑う。

思い出と同じ温度で、同じ声で、同じ笑顔で笑う。

私はふいに風の冷たさに無意識に腕を抱いた。







戻ってきたあのひと7題

3.おもいでの場所で

『確かに恋だった。』

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