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僕の羊と君が眠るまで。  作者: シュレディンガーの羊
◇戻ってきたあのひと7題
22/32

とある少女の安堵。




変わらないことが美徳だとは思わない。

ただ、その事実に安堵する自分のことは嫌いになれない。




アーモンドみたいな瞳に綿菓子みたいな髪の毛、くるくると表情を変える人懐っこい顔。

サッカーが好きで、いやスポーツ全般が好きで上手くて、勉強もそこそこ出来て、でも数学は壊滅的で、皆に囲まれていつも笑っていた男の子。

そんな瑤くんは私の幼なじみだった。

家が隣同士で小さい頃からいつも一緒。

瑤くん、愛夢ちゃん、と高校生になってもその呼び名に戸惑いはなかった。

優しい周囲からは茶化されることはあまりなく、むしろ仲の良さを羨ましがられた。

さすがにもう二人でかけっこをしたり、怪盗ごっこをしたりはしないけれど、それでも私と瑤くんは仲が良かった。



去年の秋、瑤くんが交通事故で亡くなるまでは。



「瑤くんがいない間にポチが子供産んだよ」

「え、ポチって雌だったの?」

「ポチの本名はポテュリューナ二世だって知らなかった?」


近場のベンチに腰を下ろして、私たちは話しをしていた。

結局、肉まんはアスファルトの上に置いてきた。

誰かの靴に踏み潰されて、轢き潰されて、すり潰されて、見るも無惨になったらどうしようかと一瞬だけ考えたけど、一瞬で割とどうでもいいことになった。


「なら次はポテュリューナ三世になるじゃん。どっかの怪盗みたいだ」


瑤くんは笑うたびに片頬にだけえくぼができる。

なくとなくそれを見ていれば、瑤くんが目を瞬いた。


「どうしたの、愛夢ちゃん?」

「片頬にえくぼが出来るって不思議」

「それ、解明できてないよ」

「……骨盤の歪み? それとも性格の」

「アンバランス、アシンメトリー。ちょっと危険な感じに魅力じゃん?」


自分でそんなことを嘯いて、瑤くんはけらけらと笑う。

自然と私の口元も緩んだ。


「変わらないね、瑤くんは」

「変わらないな、愛夢ちゃんこそ」


そうやって笑い合う。

二人でいれば、私たちはいつだって幼い頃に舞い戻る。

二人して駆け回っていたあの頃のままに。

ふいに瑤くんが立ち上がった。

どうしたの、と見上げれば瑤くんは照れたように頬をかく。


「あの場所に行かない?」

「いいよ」


何の抵抗も、僅かな思考もなく私は応えた。

流れるように、伝い出た言葉に驚きはなかった。

瑤くんはそんな私に少しだけ目を瞬いて、それからちょっと苦笑した。



それは、瑤くんが嬉しいけど少しだけ悲しいときにする瞳だった。

だからこそ、私は知らないふりで目を反らした。








戻ってきたあのひと7題。

2.変わらないふたり

『確かに恋だった。』



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