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僕の羊と君が眠るまで。  作者: シュレディンガーの羊
◇恋に溺れる彼のセリフ5題
12/32

とある少年の片思い。



日直を交替した、と言われた。

「は?」

「委員会があるらしいので、清水さんと交替しました、中森です」

ぺこりと下げられた頭を凝視する。

それは間違いなく俺が好きな中森だった。



「澤谷くんは不真面目ですね」


やや呆れたように中森が日誌を示す。

そこには一行にも満たない文字の羅列。


「そんなに書くことないだろ」

「それでもたくさん書くのが仕事です」


シャーペンをノックして、中森が続きを埋めにかかる。

俺は手持ち無沙汰になって、さらさらと動くそのペン先を見ていた。


「そういえば最近、澤谷くん変ですね」

「いきなりだな」

「だってお弁当を逆さに包んできたりとか、ノート提出なのに教科書を提出してたりとか、体育でバスケ中なのにボール蹴ったりとかしているので」

「……よく見てるな」


奇行が多いのは中森に対する気持ちのせいだが、それを見られているのは辛いところだ。

正直、恥さらしもいいところ。

文字を綴る音が止んで、中森を見る。

中森はシャーペンを持ったまま悩ましげに眉をひそめた。


「二行残りました。あと何を書いて埋めましょうか」

「話変わるの早くないか。てか、全行埋めるつもり?」

「もちろんです」

「……担任の似顔絵でも描いたら」


そんな風に嘯けば、中森が途端にむくれた。

シャーペンを置いて、日誌を閉じる。


「真面目に考えてくれないならいいです。もう提出してきますから」


頬を膨らませて、中森が踵を返す。


「澤谷くんの考え方、私にはちっともわかりません」


その台詞に無意識に手を伸ばして、華奢な腕を捕まえる。

なんですか、と訝しげに振り返った中森に告げる。


「俺の頭ん中、お前ばっかなんだけど」


中森の動きが止まる。

驚きで見開かれた瞳をそのまま見つめていれば、みるみる内に顔が赤く染まった。

林檎みたいだ、なんて何気なく零せば唇をわななかせる。


「そ、そういうこと簡単に言わないでください!」

「簡単には言ってない。それに本音だけど」

「な、尚更悪いです!」


更に叫ぶ様子に思わず笑う。

目を泳がせて、顔を赤くして、慌てふためくその姿。


「可愛いな」


自然とそう零せば、紅潮したまま中森が再び固まる。

どうしたのかと顔を覗き込む。


「中森?」

「わ、わ、私、日誌出してきます!」


中森はわたわたと日誌を掴んで廊下に駆けていく。その背中に叫ぶ。


「待ってるから、早くなー」

「ーーっ」


返らない声に、それでも表情が手にとるようにわかりまた笑ってしまう。


「本当にお前ばっかだ」








恋に溺れる彼のセリフ5題。

2.頭ん中、お前ばっかなんだけど

『確かに恋だった。』より


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