表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義弟に嫌われているので侯爵家を出たら、なぜか毎日探し回られています。  作者: アキラ・モーリング


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
11/12

10 そうじゃない

本日2話目の投稿です!

 応接室が静まり返る。


 最初に口を開いたのはフェルディナンドだった。


「俺は構わん」


 腕を組み、淡々と言う。


「元々、籍がどこにあるかは大した問題ではない。リディアが働きやすく、事業が回り、利益が出るならそれでいい」


 実に商人らしい答えだった。


 続いてアレクシスが苦笑する。


「まあ、こちらとしては優秀な姪っ子が娘として来てくれると期待していたので、複雑ですがね」


「伯父様……」


 リディアはアレクシスの言葉に嬉しさを覚えながらも、どんどん話が進んでいく状況に戸惑っていた。


「それに、大きな再建案件の中心が侯爵家側へ移る以上、利益は確実に減る」


 アレクシスは肩を竦めた。


「ですが、最近は余計な横槍への対処で色んなところから人手をかき集めて対処していました。うちは他にもたくさんの事業を抱えているので、人手不足が解消され、事業がスムーズに流れるなら釣り合いは取れるでしょう」


 完全な否定ではなかった。


 むしろかなり前向きだ。


 レオニードも資料へ視線を落とす。


「侯爵家としても悪くない話だ」


 低い声が落ちた。


「これまでの商会の実績から利益が見込めるのは確実。商会側が問題ないなら、むしろ願ってもない」


 そこまで言ってから、レオニードはふっと息を吐いた。


 そして呆れたようにユリウスを見る。


「……それにしても、お前」


「?」


「ここまで執着しているとは思わなかった」


 ユリウスは眉を寄せた。


「執着ではありません。必要な調整です」


「ほう」


 レオニードの目が細くなる。


 フェルディナンドとアレクシスは、そんな二人のやり取りを察したように苦笑していた。


 一方。


 リディアだけが完全に話についていけていなかった。


「ま、待ってください……!」


 思わず声を上げる。


 全員の視線が集まった。


「わ、私は……ずっと侯爵家を出る前提で動いていました」


 困ったように視線を伏せる。


 侯爵令嬢として必要な高度な社交や派閥付き合い。


 いずれ出ていく立場だからと、深く踏み込まずにきた。


 だから今さら残ると言われても、どうしていいのかわからない。


「……侯爵家に残るということは、私が侯爵令嬢として残るということですよね? その……それは……」


 言葉が濁る。


 するとユリウスが即座に口を開いた。


「問題ない」


「え……?」


「何を心配しているかはなんとなくわかるが、それは余計な心配だ」


 迷いなく言い切る。


「リディアが変わらず、ここで好きな事ができるようになっただけだ」


 そう言って、ユリウスはリディアの手を取った。


 強引なくせに、離す気のない手だった。


 そのまま真っ直ぐリディアだけを見る。


「……俺は、リディアに侯爵家からいなくなってほしくない」


 驚くほど真っ直ぐな声だった。


 だが、リディアの不安はそれだけではない。


 貴族令嬢で居続ける以上、いつかは貴族としての役割を求められる。


 政略結婚も役割のひとつ。


 そして。


 結婚した女性は嫁ぎ先へ入るものだ。


 リディアは困ったように眉を下げた。


「でも……侯爵令嬢のままでは、いつか結婚しなければいけないでしょう? そうしたら、きっとお仕事は続けられないわ……」


 その瞬間。


 ユリウスの表情が止まった。


「だったら俺と結婚すればいい」


 場が止まった。


 空気が完全に凍る。


 リディアはぱちぱちと目を瞬く。


「え……?」


 レオニードが片手で額を押さえた。


 アレクシスが盛大にむせる。


 フェルディナンドは無言で天井を見上げていた。


 一方のリディアは、みるみる顔色を変えた。


「だ、駄目よ!?」


 慌てて首を振る。


 確かにユリウスと結婚すれば、侯爵家にいたまま仕事は続けられるかもしれない。


 でも、それではまるで。


 自分の仕事のためにユリウスの人生を使うようではないか。


「私が事業を続けるためだけに、そんな大事なこと決めちゃダメ……!」


「……は?」


「ユリウスなら、社交もちゃんとできる素敵な相手じゃないと! 私のために人生を決めるなんて――」


「そうじゃない!!」


 応接室へ声が響いた。


 リディアはびくりと肩を震わせる。


 ユリウスが、明らかにキレていた。


 今まで押さえ込んでいたものが、一気に溢れたようだった。


「リディアに侯爵家に残ってほしい」


「……」


「他の男のところへ行くのもダメだ」


 真っ直ぐすぎる声だった。


「俺はずっとリディアと一緒にいたい」


 リディアの目が大きく見開かれる。


 ユリウスは握った手へ力を込めた。


「だから残ってほしいって……結婚しようって言ってるんだろ……!」


 焦りも、苛立ちも、必死さも全部混ざった声だった。


 リディアは息を呑んだ。


 心臓だけがひどく早く動いている。


 でも、私たちは義姉弟で……


 家族で……


 その一線を常に超えないようにしてきた。


 なのにユリウスは、まるで躊躇いもなく踏み越えてくる。


 だから、確認するように小さく口を開いた。


「……それは、…家族、として……?」


 その瞬間。


 ユリウスのこめかみがぴくりと引きつった。


 握った手へさらに力が入る。


 誰が見ても分かるほど、限界だった。


「だから!」


 勢いよく立ち上がる。


 そして真っ赤な顔のまま叫んだ。


「リディアが好きなんだよ!!」

いつも応援ありがとうございます。

本作は、明日【土曜日の20:00】に最終話を投稿し、完結となります。

いつもより2時間遅い投稿となりますが、ぜひ最後まで見届けていただけますと幸いです!



「続きが読みたい!」と思ってくださった方は、ページ下部にある【ブックマーク登録】や、【星(☆☆☆☆☆)】での評価で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ