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盲目な君に約束の花を  作者: 廿楽 亜久


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02

「そういえば、魔獣いた?」

「いえ。特には」

「よかったね。南の森にも出たって話だから、移動したのかな……」


 魔獣の数は、決して多いわけではない。

 だが、凶暴性が高く、目撃情報があると、近隣の人々は駆除されるまで、不安な日々を過ごすことになる。


 近頃、西の森で、魔獣が目撃されていたが、つい先日、南の森でも目撃されたという。

 同じ個体ならば、南に移動したということなのだろう。


「普通の動物と違って、結構強いしね。グランも、もし会っちゃったら、逃げていいからね。荷物とか捨てて」

「ありがとうございます。ですが、大丈夫ですよ」

「?」

「実は、魔獣との戦闘は、経験がありまして」


 魔獣との戦いに慣れているのは、駆除する騎士団や傭兵たちくらいだ。

 だが、自信満々とばかりに、手袋をした指を立てているグランは、自慢気に言葉を続けた。


「”魔法遺物管理機関”は、魔獣の対応もしているんです」

「……傭兵ってこと?」

「そ、そういうわけではなく……いえ、まぁ、主な収入源ではあるらしいですが……」


 少し気まずそうに顔を逸らしたグランは、口布の上から、鼻をひっかく。


「魔法に関するものを管理している機関なのですが、魔獣も大きく括れば、魔法を扱える獣ですから、我々が管轄するものに当たる。という考えで」

「だいぶ大きく括ったね……」


 火や氷を吐いたり、電気を帯びた衣を纏っていたり、魔獣と普通の獣との違いは、主にその部分にある。

 そのため、魔法を使える獣という括りは、間違いではない。


 ただ、随分と雑に括ったものだとは思うが。


「まぁ……そうですね。その考えで、魔法使いなども、我々が管理するべきだと、もし生きている魔法使いがいたら、声をかけるように言われています」

「なるほど……そういうこと。本当に、雑に括ってるね」

「そう言われると、何も言えないのですが……」


 グラン自身も、結構、魔法遺物管理機関のその括り方は、雑だとは思っていた。


 今でこそ、魔法を扱える人は少なく、ほとんどいない。

 だが、魔力が消えたわけではなく、生物には皆、少なからず魔力を持っている。扱えるほどの量なかったり、扱える構造をしていないだけだ。


「ルミアさんみたいに、魔力量も巡りもいい人は、時々いますし」

「…………」


 グランがつい溢した言葉に、ルミアも目を見開いて固まれば、グランも慌てて顔を上げる。


「べ、別に、だから”魔法使い”というわけではなく!! 決して、0ではない、というだけで!!」

「え、あ、いや……グランは、人の魔力が見えるの?」

「…………あ、そうですね」


 ようやく、おかしなことを口にしていたことに気が付いたグランは、項垂れるように頷いた。

 そして、おもむろに、目があるであろう位置に触れながら、答えた。


「自分の目は、元々”魔眼”と呼ばれるものでして……」

「魔眼……」


 おとぎ話などに出てくることもある、魔法の力を持った目の事だ。

 その能力は、様々で、設定も話によって異なる。


 ただ、現実に魔眼を持っている人は、それこそ魔法使いと同じくらい、希少な存在であり、能力の詳細は当人以外には、ほとんど知られていない。


「その力で、魔力の流れを見ることができるんです」

「それで、私の魔力が……」

「はい……すみません。いきなりおかしなことを言ってしまって……」

「別にいいよ。驚いたけど、それが何か悪いことに繋がることも無さそうだし」


 淡々と答えるルミアに、グランも安心したように、頬を緩めた。


 魔法や魔力というものは、確かに存在していたが、すでに過去の遺物として、忘れ去られ始めているものだ。

 それを作り話ではなく、現実として受け入れてくれる人は少ない。


「ルミアさんは、魔法を怖がったりはしないんですね」


 ただ、自分に興味がないだけかもしれない。

 だが、自分を受け入れているようなものにも感じられた。


「怖がる必要ないでしょ」


 だから、あっけらかんと言葉を続けるルミアに、グランも、その続きに耳を傾けてしまう。


「魔法なんて楽しいもの、なんで怖がるのさ」


 半ば呆れるような言葉に、グランもトクリと胸が高鳴った音がした。

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