敗退
空は瞬いた。星は煌めき、太陽は燃え盛る。
大地を蔓延った巨人どもの轟は消失し、レイと俺。そして年配のおじさんと少年だけがそこにいた。あれ、さっきの少女はどこへ行ったのだろうか。
「とはいえそれで全てが終わり、カシウスはいなくなったのだろう…」
そう思った瞬間だった。
「あんたは嘘をつかれてる。こいつらに。」
俺は振り向いた。するとそこには鬼がいた。レイは小声で囁いた。
「あれがカシウスよ。」
レイは飛翔して鬼と俺らの間に立った。両手を広げて歌った。
「こいつがカシウスよ。鬼の姿をした化け物。この世界を破壊し、神仏の理を汚すもの。」
俺もまた死を願った。カシウスを殺すために。けれどもカシウスは笑いながら、全ての言葉をかき消すような大声を出した。耳が飛んだ。
「私はバケモノではない。私は凪航平の母親、そう、私は凪麗花だ。」
カシウスは少年の目をしきりに見ていた。
「洗脳…か?」
俺は咄嗟に保護膜を広げようと願ったその時だった。
年配のおじさんが声を出した。
「レイか?」
その刹那、そいつは落ちた。空から落ちた。
同時に少年が叫んだ。そのおじさんを浮遊させていたのはレイの霊術。俺は訝しげにレイの安否を確認しようと振り向いた。
少年は涙ながらの糾弾をする。
レイは決して俺に振り向かなかった。ただ、カシウスを睨んでいた。
そこには変わらず、鬼の形相をしているカシウスが微笑してそこにいた。
「お前たち、全員去った塵よ。」
気づいた時には空にいなかった。少年を掻っ攫い、少年の背中に突き刺すように何かを刺した。守れなかった。判断の瞬間が与えられなかったのだ。少年もまた落ちた。
少年が落ちていく瞬間。そのポケットから煌めくそれを俺はすかさず回収した。願いは届いた。カシウスは叫んだ。俺の手元にあるそれを見て、カシウスは俺に迫った。
その時、レイが霊術を繰り広げた。
紫の炎がカシウスの身を焦がした。
その炎に見覚えはあった。
「そう…僕らの親玉。黄泉の国の帝王。」
「…酒呑童子だ。」




