邂逅
純白の翼に乗せられて俺は空間の狭間をすり抜けた。
点滅している白い光を捉えるとすぐに、俺たちは闇を抜けていた。
突如広がった世界はなぜか見覚えのある世界だった。
「ここは…」
灰色の都市街。色を失った大地に突起物の山場。うめき声をあげる暴走列車に空をかける戦車。どれもが未知で、そしてそのどれもが知っているようだった。瞳に雫が散る。
「レイさん。」
そばの彼女を見返す。その白く透明な肌にも一筋の雫は流れていた。
「…ここは、涙を流してしまうような効用のある世界なのですか?」
「違うよ…ただ、懐かしくてね…」
隣の純白の天使は少し微笑んでみせる…けれども目の奥に見える未来に覚悟するかのようにグッと唇に力が入る。俺は前を見た。素朴な家屋が待っていた。
男と女が複数、俺たちを睨んでそこに立っていた。
そして一人。俺を信じがたいものを見るかのように、驚愕を讃えて。窓を開けて侵入した。依然として彼らは動こうとしない。
「俺らは敵ではないようだ。お前はカシウスを止める側だろう?」
俺はそう言って見せた。両腕を大きく広げて見せて、敵意をなくして。一人の男はひどく嫌な顔をしていた。その男はいった。
「お前がこの世界の俺か。」
そいつはため息をついた。そして続けて言う。
「もう分かっている。だから入れてくれ。」
俺はレイを見やった。彼女は頷いていた。だから俺は願った。あの高千穂での行為がここでも可能なのであれば、と。俺は見よう見まねで印を結んだ。けれど印はそこまで大事ではないようだ。すぐに辺りの闇が集まり始めた。
そうして黒い扉が顕現させた。けれども俺が願い続けないと今にも消えてしまいそうなほどに揺れていた。まるで空気の微振動で壊れてしまいそうな4次元への扉。そいつは静かにその中へ歩み寄った。
そばの少年が叫んだ。涙を流して。
「雄介…!」
そいつは低い声で寂しそうに言った。
「黙ってろ。今回は上手くやれよ。」
なぜかそいつは俺の目を見て最期の言葉を吐き捨てた。
俺は暑くなった額を手で軽く拭った。レイがその少年に何か話した。
「私たちもカシウスを破壊するつもりだ。あなたたちもだろう?」
「はい。」
少年は静かに頷いた。年老いた男も睨みながら頷き、そばにいた貧相の悪い少女は両手を広げて頷いた。
不思議な一段と共に俺らは空に舞い上がり、目の前に蔓延る白い巨人とやらを殲滅することに決めた。
レイは印を結び、俺の喉元からモノの呪いが振りまけられる。巨人とやらはたちまち灰となって空へ散った。




