壮絶
陽光はたちまち隠された。赤い体が宵闇に紛れた。恐怖がこの地を支配した。
酒呑童子はその息吹をあげて俺の前に立った。守るように、その強靭な背中で。
しかしカシウスはまたもや大声を出した。それはそれは慣れた手つきで。両手を大きく広げて。俺らを見下ろして。
「傾げても畏め 黒羽の大神」
空が黒い翼に覆われた。紫の炎は消滅した。音が消えた。
「世の空の下に消える世の歪み」
全ての境界が溶けて消えた。拡張し、広がった物質が水のように空間に溶けた。
「禊ぎ祓へ給いし時に 成りませる単一の魂」
辺りが煌めき出した。七つの水神を見た。
「諸々の禍事、罰、穢れ あらむをば」
俺や酒呑童子はかきむしるように喉をかきむしった。喉から黒い塊が現れた。黒い罪で世界は染められた。
「求め追い抜き貫き給へと 申すことを求めんと」
腹部に強烈な一撃が走った。視界が暗転して、宇宙をこの目はうつした。赤い血で世界は染まった。
「畏み畏み申す」
闇に目を見た。カラスの頭。蛸の足。
俺は、見た。
神は去り、世は死んだ。
最後に見たレイの顔は酷く儚げで、
酒呑童子の叫びはすぐさま轟音にかき消され、
俺の喉に住まうモノはその身を浄化され、
そうして俺も死んだ世に溶けていく。
まるで世界が書き換えられるように。
まるで世界の正体に出会ったかのように。
広がる大地と時の狭間で。
俺たちは神の御姿に出会っていた。




