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宿命

目を覚ませば広がる光景に俺は絶句した。音のない驚き。沈黙の拒絶。寝る前に見たあの光景は消えていた。あの小屋も。あの若男も。全てが変わっていた。


俺は乱雑で閉鎖された空間に居た。ここが何処か。それはわからない。けれど机があって、俺を纏う布団を触った。感じたことのない軽く艶々した感触。俺は扉を探した。薄い布で隠された大きな入口を見つけた。布を引きちぎり入り口から見える世界を見た。要塞のような城のような、そんな灰色の世界が広がっていた。


俺はそこから下に飛び降りようと身を乗り上げた。しかし俺は拒絶された。結界が貼られていたのだ。結界が崩れるように俺は願った。しかし何度願ってもそれは叶わなかった。


しかめ面をする。すると鳴き声を聞いた。甲高い声。俺は声の主の元へ走って近寄った。あったのは小さくて硬くて重い四角かった。俺はそれを泣き止むよう言い聞かせた。さらに願ってもみた。けれど泣き止まなかった。だから仕方なく叩き壊した。低い声で泣いてそれからそいつは死んだ。


綺麗に装飾された美しい奴だった。惜しいことをしたのかもしれない。すると今度は誰かが何かを叩く音を聞いた。俺はバカだった。すぐそばに扉はあったのだ。誰かがドアノブを引いて扉を開く。俺はその様子を見てそして扉を開けた本人を確認した。


女だった。それも長い黒髪。派手な服を着たそいつは俺を見て腰を抜かした。俺は近づいた。そして聞いた。


「ここは何処だ。お前は誰だ。」


そいつは手で顔を隠すように隠れながら体を歪ませて怯えていた。その怯える顔が面白かった。そいつは応えた。俺の問いに。


「私は麗花。ここは神戸市。あなたは?」


聞きなれない地名に俺は頭を悩ました。そして彼女の尋ねに俺はどう答えようか頭を悩ました。


「俺は…」


いや、違う。


「俺は神だ。死神だ。お前を迎えに来た。」


鼻息が荒くなる。恐怖を求めて俺の口角は吊り上がる。けれども麗花という女は怖がることもなく笑い始めた。先ほどまで怯えていた女はすくっと立ち上がりこう言った。


「なんだ、凪君の友達か。驚いたな。でも勝手に女の子の部屋に入っちゃ駄目よ。」


安心し切った醜い唇。何より俺を見下すその瞳が許せなかった。俺は麗花という名の目の前の女を押し倒した。頭から床に衝突した麗花。俺は願った。願ってみせた。


けれど何も起きなかった。麗花は顔を背けていた。顔は赤く照っていた。息は荒く胸元から熱気が漂っていた。俺は身を引いた。今度は俺の口が震えていた。

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