断末
「なぁやり直したいとお前も思うのか?」
尋ねる言葉。俺は耳を疑った。幻聴か空耳か。それとも走馬灯か。
「おい聞いてるか?やり直したいか?」
どうやらそれは俺に語りかけているようだった。飽きていた俺にはちょうど良い。裂けた口を動かす。
「やり直したい。どのみちこのままいけば死んでしまうから。」
すると声が返ってくる。
「死ぬのは嫌か?」
今度は少し考える。
「死ねば安らかに眠れるぞ、僕みたいに。」
まだ考える。
「本当にやりたいことは何だ?やり残したことがあるのか?」
そして答えを導き出す。
「俺は…」
「俺はまだ何もしていないんだよ。」
「あんたみたいに魂の寿命が尽きるまで生きた訳でもない。誰かのために挑戦し続けた訳でもない。自然に生まれて特に何もせず、こうして今死にそうになっている。それが嫌なんだ。」
「だったら…」
「やり直すか?」
その問いは酷く魅惑的だった。俺の心が高鳴る。呼吸が速くなる。死にかけのこの体が最後の活躍を夢見て躍動する。
俺はそばの屍人に目を落とした。もう動かない死体。けれど確かに生命の残滓な訳で。俺よりももっと世界を本気で生きた戦士な訳で。結果はどうであれ英雄以外の何者でもなくて。
そんな屍人を眺めている俺の憧れの炎に俺は今ようやく気づいた。
なぜか笑いが先に起きる。目の前の屍人がただおかしい。鼻が痛いのに、口は裂けているのに。それでも笑うことを止めることはできなかった。
時間が経った。俺はさらに悪化した体を抱えてもう動かない瞳を必死に屍人に向けていた。
最期に望むこと。初めて望むこと。
「やり直したいこの思いは決して偽物ではない。」
「やり直させてください。神様。」
瞳は閉じた。いつしか何も感じなくなって事切れた。




