19.エミュリさん、返り討ちに合う
ルイスとエミュリさんの戦いは、まだ続いている。
「残念ながら1発目は外しましたが、次はこんがり焼いて差し上げますわ。けど、安心なさって。このダンジョンの中では丸焦げになってブザマに死んでも、外に出れば無傷ですわ」
エミュリさんのその言葉に、ルイスはピクッと反応した。
「君の恐怖感が薄い理由は『それ』かい。だが、ブザマに死ぬのは君の方さ」
ルイスの動きは素早かった。
エミュリさんの『次』の呪文が完成する前に一気に間合いを詰めて、あの握力でエミュリさんの喉を握り潰したのだ。
「がっ・・・」
これでは魔法は発動できない。
つまり、エミュリさんの言う『次』はもうなかったのだ。
エミュリさんは必死で自分の喉を、そしてそこを掴んだルイスの手を掻き毟ろうとするけど、全くの無意味だった。
「君、ここで受けたダメージは外に出れば完全に無効だとでも思っているのかい。でも、無効になるのは君たちザコの弱っちい攻撃だけだよ」
そこまで言うと、ルイスはエミュリさんの喉を掴んだ手を少しだけ深いところに移した。
エミュリさんの首の骨を掴んだのだ。
「ふふふ・・・ためしにコイツをポキッとやって見ようか?」
ルイスはその手に、少しずつググッと力を込めていく。
コイツは本気だ。
その気になれば、自分の首の骨は簡単に粉々に砕かれてしまう。
その恐怖のメッセージは、確実にエミュリさんに伝わっていた。
ルイスの言った『ブザマな死』は、確実に近づいていたのだ。
ほんの指先だけで首の骨を砕かれて死ぬと言う、これ以上ないブザマな死が・・・。
「ひぃっ・・・」
ようやく空気が通るようになった気道から吐き出されたのは、エミュリさんの情けない、絶望の悲鳴だった。
この恐怖感は5年生のエミュリさんの限界をも越えていた。
しょ~・・・じょろろろろろ・・・
エミュリさんもわたしたちと同じように、恐怖のあまりおしっこを漏らしていた。
エミュリさんの騎士の鎧の下腹部からは、液体が出てくる音の他に、その液体が金属を打つ大きな音が聞こえた。
それから黄金色の液体がとめどなく流れ出る・・・。
「なんだい?最近は騎士様の家柄でも躾がなってないみたいだねえ。それとも君の家柄は騎士の鎧の中におしっこを垂れ流すのが作法なのかい?」
最大限の侮辱。
けど、エミュリさんはもはや、それに言い返す気力すら完全に奪われていた。
「さあ、君の勇者の力もいただくよ」
ルイスはエミュリさんからも勇者の力を奪おうとする。
けどその前に、そこにセリカが立ちはだかったのだった・・・。




