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あいつだけに
ひみつをばらしてクラス内でのあいつの立場が一変した朝、引っぱられた廊下の隅、囁くように話し続けるあいつの声、ほとんど密着しかけている二人の距離、制服ごしの体温や体臭、愉悦としかいいようがないものを覚えたあの朝。
あのとき以来、俺の本当の微笑んだ顔を見た人間は一人としておらず、残念ながら、あいつ以上に悪戯したくなった他人を俺は見つけられていない。
大きなもの、連続性を持ったものより、小さな出来事を人は後生大事に抱えてゆくということは大して珍しくもない。だけど、やっぱりそれって奇妙なことだといえやしないだろうか。消えずに残り続ける特別なものが、一年の内の一つの季節の中の、さらに小さく区切られたある瞬間に凝縮されていたりするというのは。
俺の場合、それはよく見てみるまでもなく真っ黒だったりするから、本当にもう始末に負えない。




