675/716
純愛を
例えば嘘吐きどもの中でも意味のある嘘を好む者もいれば無意味な嘘の味のほうが口に合うという者もいて、それでいったら僕は無意味な嘘だけを吐くタイプ。ただし、僕に害がないということではない。なぜなら僕は夢想するから。
ある時に僕がする夢想はこんなだ、死ぬまで相手に気づかれないような嘘を吐き続けたい、相手は死ぬ間際に気づく、なぜって、傍らの僕の表情は場にそぐわないものだから。そんな日に、そんな場所で、空の上に行こうとしている人間の一番近くで、浮かべていていいような顔では決してない。僕たちはずっと近くにいた者同士なのだ。呼び名は様々だが、本当に積み重ねていくものがあるとしたらそんなのは時間だけだし、事実はそれ一つ。その人はだから僕を見上げ続けることになってしまう、急に湧いた疑念から。時間だけしか味方ではないとはいえ、それなりに実るものある。そして点と線が繋がって、彼や彼女の中で一つの絵が浮かび上がってくるかもしれない。それは、斬新さなど欠片もない、至って凡庸な才能がそこにあるだけの絵だ。
相手に気づかれたことに気づいて僕は、いよいよ顔全体で笑うのだろう。何のために?
ああ、そりゃあもちろん、この瞬間のためだけに。




