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《改訂版》双子探偵社  作者: 南条祝子
4.真相
9/11

4.真相〈1〉

 1


 家に帰ると私は叔父さんに連絡をした。


 公園であった事を叔父さんに話す。


 「女が見掛けられていたのは私も知っていたが、赤いバッグの話は初耳だ。沙織たち、報告してくれてありがとう」


 電話の向こうにいる叔父さんの笑顔が目に浮かんだ。


 しかし、その後すぐに「もう、この後は叔父さんたち警察に任せなさい。いいね?」と私に念を押してきた。


 そう言われてしまっては「はい」と答える以外できない。


 私は通話を切ると、叔父さんとの会話の内容を玲香とリズにも伝えた。



 翌日、リズが日直なので、私たちは三人で早めに登校した。


 いつもより早い時間帯の地下鉄は、ホームも車内も比較的空いている。


 今日からは、もう、あの公園に行くこともない。授業が終わったら、また、以前のようにまっすぐ家に帰るのだ。


 やがて犯人が逮捕されて、私たちはニュースでさやかの命を奪ったのが誰かを知ることになる。


 なんとなく感じる虚しさ。それを、私だけでなく、玲香とリズも感じているのは間違いなかった。


 三人ともが何を考えるでもなく、ぼんやりとしているうち、学校の最寄り駅に着いた。


 地上へ上がり、私たちはただ黙々と学校へ向かって歩き出す。



 日直の仕事と言っても、朝、教室の鍵を開けることと、休み時間に黒板を消すことくらい。もしも、誰かが早く登校していて、鍵を開けていれば、朝は取り立ててすることはない。


 が、案の定というべきか、日直よりも早く登校している人がいる訳もなく、私たちは職員室へ鍵を取りに行くことにした。



 職員室の扉をノックし、挨拶をして中に入る。先生たちの数もまだまばらだ。


 二年一組の教室の鍵を、たくさんの鍵がずらりと並んでいる壁面のフックから取る。


 鍵を手に職員室を出ようとしたとき、丁度出勤してきた三枝依子先生が職員室に入ってきた。


「おはようございます」


 挨拶をして三人で軽く頭を下げる。


 そして、その視線の先にあるものに衝撃を受けた。


 にわかに緊張感と焦りを感じて、心拍数が上がるのが分かった。


 三人とも無言で、ただし、大急ぎで教室に戻ると、私たちは誰からともなく向かい合い「見たよね?」と確認し合った。


「依子先生が……」


 玲香が今にも泣き出しそうな声を出す。


「でも、倉田先生とのことを考えると、あり得るわ」



 そう言うリズが考えた筋書きはこうだ。


 倉田先生が好きだった依子先生は、理事長である父の権力を使って倉田先生と結婚しようと試みた。


 しかし、倉田先生は毅然と断った。


 まさか理事長を相手にはっきりと断るとは依子先生も思っていなかっただろう。しかも断った理由が、結婚を考えている相手がいるということだから、心中穏やかではなかった筈だ。


 だから相手が一体どんな人物なのか気になって探し出すことにした。 


 やがて、依子先生は何らかの形でさやかに辿り着き、さやかの携帯電話の番号を入手すると、あの公衆電話から公園に呼び出した。


 その後は恐らく、その場で話すうちに揉めたのだろう。


「それが、結果的に殺人になってしまった、ということね?」


 私が確認すると、リズは頷いた。


「どうしよう……」


 玲香が両手で顔を覆う。


「叔父さんに電話するわ」


 私は携帯電話を取り出すと、叔父さんの携帯に電話を掛けた。


 けれど、何度コール音が響いても叔父さんは出ない。


「出ない」


 苛立って乱暴に耳元から腕を下ろす私を二人が見詰める。


 こんな時に電話に出てくれないなんて。


 が、私はすぐに、一昨日、中野刑事に電話を掛けたのを思い出した。


 慌てて発信履歴を表示する。


「あった」


 小さく叫んで、私はすぐに通話ボタンを押した。


 数回のコールで彼は電話に出た。


「どうしたの?こんな早い時間に」


 送話口から、中野刑事の驚いた声が聞こえる。


「沙織です」


「うん、もうそろそろ学校だよね」


 気持ちに余裕がなくて、私は中野刑事の問いに答えもせずに続けた。


「さやかに電話を掛けた人が分ったわ」


「えっ、本当に?誰?」


 彼の声が一音上がる。


 答える前に私は周りを見回し、まだ他の生徒がいないことを確認した。


 それでも敢えて声を低く抑え「三枝依子。うちの学校の先生よ」と名前を明かした。


「昨日、叔父さんに連絡した通りのバッグを持っていたの。たった今、三人で見たわ」


 電話の向こうの物音が慌ただしくなり、彼が出掛けようとしている気配を感じた。


「知らせてくれてありがとう」


 がさがさという音を聞きながら、「それじゃあ」と通話を切ろうとすると、「ちょっと待って!」と動きを止められた。


「沙織ちゃん、お願いだから、本当にもうここまでにしておいてよ」


 中野刑事がそう念押しをする。


 それで通話は切れたが、私はこのままでは納得いかない。


 再び職員室へ向かおうと教室を飛び出す私を、玲香とリズが慌てて追いかけてきた。

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