4.真相〈2〉
2
ぼちぼちと生徒が登校し始めてくる中、私は依子先生を校舎裏へ連れ出した。
「依子先生、さやかを殺したの、依子先生ですよね」
まどろっこしいのは嫌だ。私は単刀直入に依子先生に言葉をぶつけた。
一瞬、依子先生の表情がひきつったようにも見えたが、先生は静かな声で「沙織さん、いきなり怖いこと言わないでちょうだい」と笑った。
相手が子供だからと高を括っているのだろう。落ち着き払った声が私を苛立たせる。しかし、ここは堪えなくては。
「どうして、私が生徒を殺さなくてはいけないの。そんな風に思われるようなこと、したかしら?」
流暢に続ける依子先生。
違和感すら覚えるその落着きぶりに、依子先生が犯人だと確信した。
「依子先生、本当にそれで倉田先生を手に入れられたと思ってるの?」
私の問いに、依子先生は表情を崩すこともなく、答えもしなかった。
こうなったら、とことん怒るような事を言って本性を暴いてやろう。
私は依子先生を見据えた。
「依子先生はね、さやかを殺したことで、永遠にさやかに負けたのよ」
依子先生はふふんとおかしそうに微かに鼻を鳴らした。
その態度にかちんと来た私は留めの言葉を投げた。
「倉田先生は依子先生と結婚しても、ずっとさやかを想い続けるでしょうね。依子先生はね、さやかの代わりにすらなれないのよ!」
次の瞬間、依子先生が私の頬を平手で打った。
「子供のくせに、わかったような口を利かないで頂戴!私は勝ったのよ!」
お返しとばかりに、私も依子先生の頬を打つ。
「相手を子供だと思ってるなら、手をあげんじゃないわよ!それが負けてるっていう証拠よ!」
私がやり返すとは思っていなかったのか、依子先生の表情が凍りついた。
しかし、それもほんの一瞬で、すぐに私を睨み付ける。
「なんですって!」
綺麗な顔を醜く歪め、依子先生は悲鳴に近い声を上げて、私に掴みかかってきた。
「姉さん!」
「沙織!」
慌ててリズが止めに入ろうとするが、揉み合っている私と依子先生をうまく引き離すこができない。
「なんなのよ、高校生のくせに」
依子先生の細くて長い指が私の喉元を捉えた。
「そうやって、自分勝手な怒りに任せて、さやかを殺したのね!」
もう、誰に聞こえてもいい。私は声を振り絞って叫ぶ。
ちょうどその時、中野刑事と叔父さんが現れ、私たちは背後から引き離された。
「さっき言ったばかりなのに!」
怒った表情の中野刑事に怒鳴られる。
「全く、君って子は!」
肩を掴まれ、真剣な表情の彼に、私は反論できなかった。
「女同士で取っ組み合いだなんて!怪我でもしたらどうするんだ!」
そう言われて、ようやく私は蚊の鳴くような声で「ごめんなさい」と謝った。




