第0.5話 暗闇の中で
目を覚ましたのは、狭くて、暗い場所だった。
「うぅーん」
ぼくは、どうやら眠っていたみたいだ。
目を開けてみたけど、何も見えない。
ガタガタとした振動と、何かで移動しているような音が聞こえている。
ここ、なんだかすごく狭いんだけど!!
体中の綿が、ぎゅむぎゅむしている。
「もー、せまいもふ。ふわふわの綿が固まっちゃうもふ」
……それにしても、ぼく、なんでこんなところにいるんだろう?
……?
あれ?
ぼくってだれだっけ?
思い出せないもふ。
自分のことを思い出そうとしていたら、また眠くなってきた。
「……もうれつな、すいま……もふ」
まぶたが閉じる。
それに、目が覚める前から、胸のあたりがきゅっとなっている。
苦しいような、もやもやとした、変なかんじ。
ちょっと痛い。
ふっと、一人の女の人が、頭の中に浮かんだ。
赤いメガネをかけた女の人。
長くて綺麗な黒い髪。
まっすぐなまなざしをしていて、ちょっとさみしそうに笑っている。
だれだっけ?
また、胸がきゅっと痛くなる。
きっとぼくの大切な人だったもふ。
はっきり思い出せないけど、今すぐその人のところへ行って、ぎゅっと思いっきり抱きしめてあげたい。
でも、それができないということだけは、なんとなく分かった。
それにしても、なんて眠いんだろう。
ぼくは、また眠ってしまうみたいもふ。
「ふぁぁぁ」
眠りに落ちる直前、今度は別の人の顔が浮かんできた。
柔らかい笑顔の女の人。
ふわふわで長くて、明るいブラウンの髪の毛。
きらきらとした光の中で、優しくぼくのことを呼んでくれた。
「 」
きみに会えば、なにかわかるのかな。
そんなことを考えながら、ぼくは、また眠りに落ちた。
インディゴブルーの海のような、深い眠りの中へ。
───そうして、ぼくの物語は再び始まった。




