31.…ほんまに誘うん? うちが?
夏休み後半。
午前中の暑さは相変わらずだった。
白銀ルナは自分の部屋で、スマホを見ながらベッドの上を転がっていた。
「……」
「……ほんまに誘うん?」
誰もいない部屋で、自分に聞く。
昨日の夜から、ずっと同じところで止まっていた。
次の勉強会の場所を決める流れにはなっている。
だから話のきっかけはある。
でも、白銀が今送りたいのはそれだけじゃない。
もっと、もう少しだけ、勉強会っぽくない感じで誘いたかった。
たとえば。
帰りにかき氷。
ちょっと本屋。
それか、先に待ち合わせて少しだけ話すとか。
「……」
「……無理やろ」
言ってから、クッションに顔を押しつける。
でも、無理で終わらせたくもない。
夏休みが減っている。
その感覚が、ここ数日ずっとある。
今までなら、次でいいやと思えた。
でも今は、次を待っている間にも時間が減る感じがして落ち着かない。
「……残り少ないって、ほんま厄介やな」
小さく呟いて、またスマホを見る。
湊とのトーク画面。
昨日の最後は、
『じゃあまた決めよう』
で終わっている。
ここからどう送る。
「……」
「……」
「……いや」
白銀は一度起き上がった。
「ここで引いたら、また同じや」
自分に言い聞かせるみたいに呟く。
打つ。
『なあ』
止まる。
消す。
『次のやつ』
止まる。
消す。
『勉強会の前に、ちょっと早く来れたりする?』
そこまで打って、白銀は止まった。
「……」
「……これ、どうなん」
重いか。
いや、そこまででもないか。
でも理由がない。
理由がないのに早く来れるか聞くの、だいぶ怪しい。
「うわあ……」
また消す。
そこへ、スマホが震えた。
「っ」
湊だった。
『今、少しだけ決めてた』
「……」
「……は?」
何を。
と思った次の瞬間、続けて来る。
『次、図書館のあとかき氷でも行く?』
白銀は完全に止まった。
「……」
「……」
「……何で?」
声に出た。
その文面を見たまま、しばらく動けない。
かき氷。
それ、今ちょうど考えていたやつだ。
心臓が変な音を立てる。
「いや、何でこのタイミング……」
ベッドの上で正座になる。
落ち着け。
落ち着けるわけない。
でも、これは。
かなり大きいやつだ。
白銀は一回スマホを置いて、深呼吸した。
もう一回取る。
文面を見る。
やっぱり同じだ。
『行く』
と打ちそうになって止まる。
「いやいや待って」
「即すぎるやろ」
少し落ち着く。
でも、変に引っ張るのも違う。
『……行く』
結局、それに近い形で送った。
送信。
直後、白銀はベッドに倒れ込んだ。
「無理や……」
でも、嬉しい。
嬉しすぎる。
数秒後、湊から返ってくる。
『よかった』
その短い文面が、また危ない。
「……今日ほんま無理」
でも、スマホを抱えたままの白銀の顔は、隠しようがないくらい笑っていた。




