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関西弁の銀髪ハーフ美少女が俺を照れさせたいらしいが照れてるのはいつもキミだ  作者: 夜天 颯


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30/43

30.…残り少ないって言われたら、そら焦るやろ

勉強会の帰り道。


 駅前で三人と別れたあとも、白銀ルナの頭の中には七海の言葉が残っていた。


 夏休み終わる前に、何か変えたいって思うやつ。


「……」


「……うるさいねん」


 誰もいない帰り道で、小さく呟く。


 でも、その言葉がうるさいのは、図星だからだ。


 白銀は、自分の部屋に帰ってからも落ち着かなかった。


 鞄を置いて、制服じゃない私服のままベッドに座る。


 スマホを見る。


 何も来ていない。


 分かっている。

 さっき別れたばかりだ。


 それでも見てしまう。


「終わっとるな、ほんま」


 自分で言って、自分でため息をつく。


 でも、その“終わっとる”の中身も少し変わってきた。


 前は、好きだと自覚してしんどい、だった。

 今はそこに、時間の感覚が混ざっている。


 夏休みが、終わる。


 今のままで。


 課題回があって、今日みたいな勉強会があって。

 それなりに話して、それなりに近づいて。

 でも、決定的には何も変わらないまま。


「……それは嫌やな」


 口にすると、思った以上にはっきりした。


 嫌だ。


 ちゃんと嫌だ。


 自分の中で、その感情が前より少しだけ強くなっているのが分かる。


 スマホが震えた。


 七海だった。


『今日、最後ちょっとびっくりした』


『何が』


 と返すと、すぐに来る。


『白銀さんが次の話したやつ』


 白銀は思わずスマホを持ち直した。


『……そんな驚くことか?』


『うん』


『前の白銀さんなら、そこで引いてたでしょ』


 その言い方に、少しだけ止まる。


 前の自分なら。


 たしかにそうかもしれない。

 言いかけて、引っ込めて、あとで一人で後悔していたかもしれない。


『夏休み、もう後半やし』


 と白銀は打った。


 少し間を置いてから、送る。


 既読。


 七海から返ってくる。


『へえ』


『やっぱり焦ってるんだ』


「……」


「……うるさい」


 でも、それも否定できない。


 白銀はベッドに転がる。


『焦るやろ普通』


『残り少ないって言われたら』


 送る。


 すぐに七海。


『まあね』


『それは分かる』


 その返事は妙にあっさりしていて、少しだけ助かった。


『でも、焦ってるくらいのほうが動けるよ』


『今の白銀さんは、そっちのが強そう』


 白銀はしばらくその文を見つめた。


 焦ってるくらいのほうが動ける。


 それも、たしかにそうかもしれない。


 しんどいけど、前より止まりたくない。


『……なあ』


 今度は白銀のほうから送る。


『何』


『湊くん、今日どうやったと思う』


 既読。


 七海から少し間を置いて返ってくる。


『白銀さんのこと?』


『うん』


『気づいてるところと、気づいてないところが半々』


「半々かあ……」


 妙にリアルだった。


『でも前よりは見てると思う』


 その一文に、白銀は少しだけ息を吐いた。


『それならええわ』


『満足?』


『全然』


 即答だった。


『でも、ちょっとだけマシ』


 七海から、小さく笑ってるのが分かるような返事が来る。


『素直だね』


『福原さんにだけは言われたくない』


 そのやり取りのあと、白銀はしばらくスマホを見つめていた。


 やっぱり、七海は少しむかつく。

 でも、妙に話しやすい。


 たぶん七海は、白銀のことをちゃんと見ている。

 見ていて、面白がっていて、でもそれだけじゃない。


 そこが少しだけ厄介だった。


     ◇


 その夜。


 湊から短くメッセージが来た。


『今日はお疲れ』


 それだけ。


 でも、それだけで白銀はやっぱり嬉しくなる。


『そっちも』


 と返す。


 数秒。


『次、どこにする?』


 白銀はその文面を見て、少しだけ目を細めた。


 次。


 その言葉だけで、少し救われる。


 ちゃんと“次”がある。

 それだけで、今日一日のもやもやが少しだけましになる。


『静かすぎへんとこ』


 と返す。


 既読。


『カフェ?』


 シンプルだな、と思いながらも、白銀は口元を少しだけ緩めた。


『それでもええ』


 送る。


『じゃあまた決めよう』


 その返事を見て、白銀はベッドにごろんと転がった。


「……」


「……あかん」


 やっぱり普通に嬉しい。


 普通に嬉しいのが、今はもう隠しようがなかった。


 夏休みは後半だ。


 だからこそ。


 次は、もう少しだけ前に出たいと思う。


 前みたいに勢いだけじゃなくて、ちゃんと。


 そこまで考えたところで、スマホがまた震えた。


 今度は美羅李だった。


『今日、白銀さんちょっと変わったね』


「……」


「……また見とる」


 白銀は思わず笑ってしまう。


 この夏休み、気づけば誰にも見られている。


 でも、その中で一番見てほしい相手にだけ、まだ全部は届いていない。


 だからたぶん、もう少し頑張るしかない。

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