表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
関西弁の銀髪ハーフ美少女が俺を照れさせたいらしいが照れてるのはいつもキミだ  作者: 夜天 颯


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
25/43

25.  …なんで会う前から、もうこんなに無理なん

課題を一緒にやる日が決まってから、白銀ルナはずっと落ち着かなかった。


 夏休み四日目の夜。


 机の上には、学校から出された課題のワークと、読みかけの参考書と、飲みかけの麦茶。それから、さっきから何度も開いては閉じてを繰り返しているスマホ。


「……」


「……」


「何着て行けばええん……」


 誰もいない部屋でそう呟いて、白銀はベッドの上に倒れ込んだ。


 おかしい。


 課題をやるだけだ。


 図書館で待ち合わせて、一緒に勉強して、たぶん少し話して、終わるだけ。


 本来なら、そんなに構えることでもない。


 なのに、今の白銀にとっては全然そんなことはなかった。


 湊と、二人。


 その事実だけで、もうだいぶ無理だった。


「いや、ほんま何で……」


 枕に顔を埋める。


 でも、答えは分かっている。


 花火大会のあとからだ。


 気づいてしまったからだ。


 前までは、“気になる”で誤魔化せていた。

 前までは、“照れさせたいゲーム”でごまかしていられた。


 でも今は違う。


 湊の顔を見るだけでちょっとしんどい。

 優しくされるともっとしんどい。

 普通に話されるだけで、いちいち心臓が変な鳴り方をする。


「……恋ってめんどいな」


 思わず本音が出る。


 いや、楽しいのかもしれない。

 でも今のところ、白銀にとっては“しんどい”の割合が大きかった。


 スマホが震えた。


「っ」


 反射で取る。


 画面を見る。


 福原七海だった。


『明日、ちゃんと寝坊しないでよ』


「……」


「……なんで福原さんが言うねん」


 思わずそう呟く。


 でも、返信はする。


『せえへんし』


 すぐ既読。


『白銀さん、その“し”がもう怪しい』


 なんやねんそれ。


『うるさい』


 と返すと、七海からまた来る。


『服決まった?』


「……」


「……見えてるん?」


 そこまで読まれるとちょっと怖い。


 だが、たぶん白銀が今していることはかなり分かりやすいんだろう。


『決まってへん』


『ていうか分からん』


 そう送ると、七海から。


『気合い入れすぎると逆に変だよ』


『でも適当すぎても後悔するやつ』


『面倒だね』


「全部言うやん……」


 その通りすぎて、反論できない。


『何着るんが正解なん』


 と送ると、少し間が空いた。


『白銀さんは、頑張ってる感じ出さないほうが強い』


『自然なやつがいいと思う』


 その返事に、白銀は少しだけ止まる。


「……」


「……それ、妙に分かるの腹立つな」


 でも、たしかにそうかもしれない。


 変に気合いを入れすぎると、たぶん自分でも疲れる。

 そのうえ湊は、そういうところを変に意識しない。


 なら、自然に見えるほうがいい。


 そこへ、さらに七海。


『でも髪はちょっとだけ巻いたら』


『多分そのくらいが一番効く』


「効くって何にやねん……」


 言いながら、少しだけその案を採用しそうになる自分がいた。


『福原さん、なんでそんな協力的なん』


 と送る。


 既読。


 そして、すぐ返ってきた。


『面白そうだから』


「やっぱりそれや!」


 思わず声が出る。


 でもそのあと、もう一通来る。


『それと』


『白銀さんが変に逃げたままだと、つまらないし』


 その一文だけ、少しだけまっすぐで。


 白銀はスマホを見たまま、小さく息を吐いた。


『……逃げへん』


 短く返す。


『うん』


 七海からの返事も短かった。


 でもそれで、少しだけ背中を押された気がした。


     ◇


 翌朝。


 夏の朝はやっぱり早い。


 白銀は、目覚ましが鳴る前に起きてしまった。


「……早」


 時計を見る。


 まだ待ち合わせの二時間前だった。


 そこからもう一度寝るのは無理だった。


 顔を洗って、鏡の前に立つ。


 私服は昨夜のうちに決めた。


 白すぎない薄い色のトップスに、軽いスカート。

 頑張りすぎてない。でも、ちょっとだけちゃんとしてる。

 たぶん、ちょうどいい。


「……」


「……おかしくないよな」


 鏡の自分に聞いても、答えは返ってこない。


 髪も、七海に言われた通り少しだけ整える。


 やりすぎない。

 でも少しだけいつもと違うくらい。


 そこまでしてから、白銀はようやく気づいた。


「……うわ」


 めちゃくちゃ気合い入っとるやん、自分。


 ベッドに座って、また頭を抱える。


「いや、ちゃうねん」


「これはその……」


「普通に会うだけやし……」


 誰に向かって言い訳しているのか分からない。


 だがそうしていないと落ち着かなかった。


 スマホが震えた。


「っ」


 また反射で取る。


 今度は湊。


『着いたら連絡して』


 その一文だけ。


「……」


「……普通やなあ……」


 でも、その普通が今は危ない。


 白銀はスマホを見ながら、しばらくじっとしていた。


 短い文面。

 でも、それだけでだいぶきている。


『分かった』


 なんとかそれだけ返す。


 既読。


 すぐに来る。


『気をつけて』


「……」


「……無理」


 白銀はその場にうずくまった。


「そういうとこやねん……!」


 ただの待ち合わせ前の連絡だ。

 意味なんてない。

 でも、今の白銀には十分すぎる。


 頬が熱い。

 耳も熱い。


「今日、ほんま大丈夫かな……」


 誰もいない部屋で呟きながら、白銀ルナは立ち上がった。


 でも。


 怖いのと同じくらい、少しだけ楽しみでもあった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ