表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君にもう一度  作者: Yasu
PR
3/11

第三章 再会

追跡失敗から十二時間後。

悠也は公安部の極秘部署の会議室で、冷たいコーヒーを前に腕を組んでいた。

捜索は完全に失敗し、アヤメの面影を持つ少女は如月残党に連れ去られた。

「七瀬班長。監視カメラと交通ログを全てチェックしましたが、目標車両は完全に都心のネットワークから消えました。プロの仕事です」

情報分析官の一人が報告した。

悠也は冷静に問うた。

「彼女は、どこへ連れて行かれた?

如月残党が求めるのは、人目のない実験場だ」

その言葉に、主任解析官が、ハッとしたように顔を上げた。

「班長!不審な深海調査船の情報と、その後の航路を追跡したところ、船は昨日未明、北海道の函館湾に面した小さな港に寄港しています。そして、その港から車で一時間の山間部に、如月テクノロジーズが十五年前に閉鎖したとされる、研究所の跡地があります。当時の資料によると、電力供給インフラはセントラルタワーと同系統を備えています」

悠也の目が鋭く光った。

黒いセダン、深海調査船、そして北海道の研究所跡地。すべてが、新たな実験場への連行を示していた。

「作戦を変更する。我々は、今すぐ北海道へ飛ぶ。七瀬賢人博士の残した技術が、再び悪用される前に、必ずその研究所を叩く」

悠也は、この場で結論を出し、夜明け前の出発に向けて準備を整えるため、重い資料バッグを肩にかけて警察庁のビルを出た。


深夜、悠也は仕事を終え、ビルの外壁沿いの暗い通路を歩いていた。

通路の角の、自動販売機の明かりが届かない影。そこに、一人の少年が立っていた。制服のような奇妙な衣服を身に纏い、十代前半に見えるが、その異様な存在感は周囲の空気を支配している。

悠也は、その雰囲気に、本能的な緊張を覚えた。

彼の脳裏に、数年前に地下のホールで見た、あの不気味なニコニコとした笑顔がフラッシュバックする。

「……ニャルラトホテプ」

悠也は、思わずその名を口にした。ニャルラトホテプは、悠也に気づくと、ゆっくりと影から一歩踏み出した。

少年の顔つきで、口元は僅かに緩み、常にニコニコとした笑みを浮かべている。

「ハハハ、七瀬のお兄さん。随分と出世したんだね。君の新しいアヤメを見送りにね」

悠也は怒りを抑えられなかった。

「ふざけるな、また犠牲者を出すつもりか」

「犠牲者?違うよ、お兄さん。

彼女は、最高の舞台装置だ。そして、君が僕の新しいゲームの主役なんだ」

ニャルラトホテプは、楽しげに笑った。

「北海道の寒冷地研究施設。素晴らしいチョイスだね。君の七瀬博士が、初めてナノマシンの基礎研究を始めた、あの場所だよ」

彼の言葉は、悠也の追跡が正しいことを裏付けた。

ニャルラトホテプは、悠也の顔をじっと見つめ、その不気味な笑顔をさらに深くした。

「さあ、急ぎなよ。制限時間は、短く設定してある。君の新しいアヤメが、もうすぐ目覚めてしまうよ」

そう言い終わると、ニャルラトホテプの姿は、まるで煙のように、影の中に溶け込んでいった。

悠也は、その場に立ち尽くし、全身の震えを抑えた。

北海道へ。全ての始まりの地へ。彼の使命は、ニャルラトホテプの新たなゲームを終わらせ、アヤメの面影を持つ少女を、今度こそ守り抜くことだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ