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第5話 天使に拘る

 私は今日も戦場で倒れる負傷者を治療していた。そんな時だった。


「メアリー・リヴィエール!! 貴女を捕縛します!!」


「っ!?」


 背後から声が響き、振り返るとノイグリア帝国軍の兵士たちが私を取り囲んでいた。十人が剣を構え、鎧が月光に鈍く光る。


「抵抗すれば斬ります」


「……兵……ノイグリア帝国軍ですね。数は十。いえ……茂みにも人間が二人いますね」


「っ!! ……よくわかったな」


 茂みから二人が飛び出した。一人が弓を構え、もう一人が装飾の派手な剣を抜く。おそらく彼が司令官ナノでしょう。


「捕縛目的。自軍だけの治療を希望されるということですね」


「そうだ。貴女は危険すぎる。だが、それと同時に自軍に迎え入れさえすれば……戦争が一層有利に運ぶ。貴女の治癒魔法は即時回復らしいじゃないか」


「捕まる気はありません。ましてここで私は死ぬこともできません。生き延びる誰かに救われた命を易々と捨てるだなんて……ヒーラーのすることではありませんので」


「ヒーラー如きに何ができる。十二対一。それもこちらは戦闘のプロだ」


「……なおさらおかしいですね。なめてかかってきている割には……兵力が多すぎるんですよ」


「っ!? ……やれ!!」


 司令官が叫び、弓兵が矢を放つ。鋭い音を立てて三本の矢が弧を描き、私の胸と脚を狙って飛んできた。


 私は杖を素早くかざし、防御結界を展開する。掌から淡い青白い光が放射状に広がり、薄い膜が全身を包む。膜は波打つように揺れ、光の粒子が細かく舞う。矢が次々に結界に防がれ、矢の先端が光に弾かれて火花を散らし、高い金属音が連続して響く。


「なっ!?」「馬鹿な!!」「ありえん」


「ますます欲しくなったぞ、メアリー・リヴィエール」


「野蛮なラブコールですね。この程度で欲しがられても困ります」


 私は結界を維持したまま周囲を見渡す。他に増援の気配はない。この崖の上には彼ら十二人だけ。


「いくらお誘いされたとしても……話は平行線なんです! 私は片方だけにつくつもりはありません!」


 私は崖の縁に一歩近づき、ゆっくりと微笑んだ。


「私はメアリー・リヴィエール……戦場の天使です」


「そんなことは知っている」


「さあ、もう一度私を見てください……戦場の天使メアリー・リヴィエール。貴方には何に見えますか?」


 私は崖から飛び降りた。風がローブを大きく翻し、髪が夜空に舞う。体が一瞬浮き、重力が引き寄せる感覚が全身を包む。落ちる速度が加速し、下に広がる暗闇が急速に迫る。


「逃げる気か?」「待て!! 逃すな!!」


 彼らは崖の縁に駆け寄り、私を追おうとしますが、下は断崖絶壁。落ちれば助からない高さで、足を止めた。


 私は暗闇の中で静かに舞い降りる。


「次に会う時は教えてもらいたいものですね……」


 私は崖の上を見つめます。いるはずの彼らが視認できません。かなりの高さのようでしたが、私は無事。だって……。


「壁に耳あり障子に目あり、負傷時に私がいない訳にはいきませんから」


 私は杖を握り直し、再び歩き出した。

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