表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

第6話 戦場の天使は翼をもがれる

 ノイグリア帝国軍から逃げて数日後、私はまだ戦場から離れられずにいました。


 私は隠れ家である洞窟の中で休憩し、捕まえた川魚を木の枝に刺して焼く。炎がパチパチと音を立て、魚の皮が焦げる匂いが漂う。私はじっくりと焼きながら、胸の奥でため息をつきました。


「でも……私がいることで戦争が長引いてしまうのなら、いっそのこと……」


 焼き上がった魚を口に運び、パリパリの皮を噛む。苦くてしょっぱい味が広がり、私は目を細めそうになった。


「戦争を終わらせたいのは……私だって……」


 争いを見たい訳ではない。でも戦場にいる。争いを続けたい訳でもない。でも、兵を治療する。私は…………何を間違えているのだろうか。


「でも……今の私には何もできない。怪我を治すだけ」


 私は木の実の殻を剥きながら、杖を握る手に力を込める。天使としての役目を果たさなければ、という思いと、現実の重さが交互に胸をよぎる。


「さて……そろそろ戦場を彷徨いますか……天使としての役目を果たすのです」


 私は立ち上がり、杖を手に洞窟の外へ出た。冷たい夜風がローブを揺らし、髪が頰を叩く。


 遠くから複数の足音が近づいてきたので、私は素早く木陰に身を隠し、息を殺す。


「まだこの辺りにいるはずだ!! 探せ!!」


「必ずこの近くにいる! 帝国につく前に捕らえるぞ!!」


「あの悪魔は生かして帰すな!!」


 王国軍の兵士たちのようですね。私は静かに距離を測り、彼らが通り過ぎるのを待ってから、別の隠れ家を探すことにしました。胸の奥が少し痛む。


 その後、しばらくしてから移動して近くの平原にたどり着くと、そこは大きな戦場となっていました。


 私は木々の間から様子をうかがい、戦地に足を踏み入れる。爆風と叫び声が体を震わせ、足元の草が血で濡れているのがわかる。人前に姿を現す。そこに負傷者がいるのだから。


「っ!! 天使だ!!」「悪魔が戦場に来たぞ!!」「あいつ何しにきやがった!」「邪魔ものが!!!!」「先に殺してやる!!!!!」「戦場を荒らす化け物が!!!!!!」


 帝国軍兵士が剣を振り上げて斬りかかってくる。私は即座に防御結界を展開し、光の膜が剣を弾き返す。次の瞬間、火球まで飛んできましたが、私は結界の内側にその兵士を引き入れ、治癒魔法をかけた。掌から淡い緑の光が広がり、焼けた皮膚を優しく包み、痛みを和らげていく。


 周囲に人が集まり、治療を終えた兵士は私を悍ましそうに見つめる。私は胸が締め付けられるのを感じながら、静かに光を収めます。


 防御結界の持続時間が切れた。私は平原の中心に立ち、両手を広げて範囲治癒魔法を発動する。淡い光が両手から放射状に広がり、平原全体をゆっくりと包み込んでいく。光の粒子が傷を癒し、痛みを消していく感覚が、私の体を通り抜ける。


「な、なんだこの光は!!」「身体から痛みが消えた!?」「傷が……癒えていく」「これが戦場の悪魔……いや、天使か?」


 光が消えると、両軍の負傷兵がすべて治癒されていた。


 私の治療で元気になった王国軍の人たちは歓声を上げる。


「なんだあの範囲魔法は!?」「すごい……傷が治った」「これでまた戦える!」


 私はその言葉を聞きながら、胸の奥が冷たくなるのを感じた。癒した命が、再び戦うために立ち上がる――その現実が、はっきりと目の前にあった。


 私は平原の端まで歩き、振り返った。戦場は再び動き出し、叫び声と金属音が響き始める。


「人間を救いたい。苦しんでいる人を助けたい……その気持ちを、どこに向ければいいんでしょうか」


 私は戦場を背に、ゆっくりと歩き出した。ローブの裾が血に染まった草を擦り、杖を握る手がわずかに震えた。私はこの日を境に、この戦場に姿を現すことはなくなった。


 序章 完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ