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46話 後始末

 しばらくの間、勝利の余韻に浸っていたが体も動くようになって来たしそろそろ動き出そう。蟹狩りと亀との戦闘でかなり時間が経っている。帰りの時間も考えると早く後片付けをして帰らないといつもの時間より大分遅くなってしまう。


 まずはみんなの回復からだな。

 あらためてギンやゴブリン達の状態を間近で見て確認する。

 イチ、ニー、サンの装備はボロボロで傷だらけだがやはり一番ひどいのはニーの装備だ。

 腕に着けていた盾は真っ二つというか上が食いちぎられて半分しか残っていない。他の防具も穴だらけで特に胴体の防具にいくつもの貫通した穴があるのはかなり痛ましい。

 下に着ている服も穴だらけだし血がいたるところについている。


 これはまずいと思い装備を全部引っぺがして体の確認をしたが体の方はもうほとんど傷はふさがっており血が出ている箇所はなかった。一番、傷が多かったニーでさえもう血が出ている傷がなかったので安心した。

 小さなからだで頑張っていたギンも体に傷跡があり、俺自慢の銀色のさらさらな毛も血と泥で汚れて大変な事になっていたが骨折とか血が出ているような怪我もなく。ボロボロの見た目に反して元気に走りまわっている。

 良かった。みんな無事で本当に良かった。『再生』や『硬化』が仕事をしてくれたみたいだ。


 見た目に反して元気な面々に安堵しつつ一応回復薬も飲ませておく。

 ちなみにドンはどこも怪我はしていなかったが飲みたそうにしていたので飲ませた。お前も俺の事を運んだり色々ありがとうな。


 ゴブリン達の脱がせた装備を再び着せたら次は持ち物の確認をする。

 

 亀に何かされて気絶したときに俺の背嚢の中がぐちゃぐちゃになってしまったので背嚢の中身をちゃんと確認する。

 薬を入れていた容器がいくつか割れており中身がなくなっている。

 幸いな事にもっとも危険な『消化』入りの溶解液の容器が全部無事だったので被害は少なくすんだ。回復薬が何本か割れていただけで済んで本当に良かった。

 後は使わない物や食料なんかをほとんどドンの荷物の方に積んでいて荷物が少なかったのもよかった。『麻痺毒』入りの麻痺毒薬をドンの荷物の方に入れていた俺グッジョブ。


 荷物の整理をしながらそういえば俺も結構怪我していたのを思い出し俺も回復薬を1本飲んでおく。気のせいかもしれないが回復薬を飲むとさっきまでふらふらだった体に力が入るような気がする。もし体力回復の効果があるなら今度から疲れた時にも飲もうかな。


 荷物の確認が終わったらいよいよ亀の後始末に入る。

 まずは亀の死骸の近くに落ちていたスキル石を拾う。『水魔術』3.8と『硬化』2.4だ。

 『硬化』は蟹のスキルと同じなのでスキル石を合体させておく。

 そして今回の死闘の一番の報酬はこれだろう。『水魔術』3.8のスキル、これがあれば確実に『水魔術』を使うことが出来る。

 『水魔術』を使いながら剣で戦う、いよいよこれで俺も魔法剣士だな。ようやく異世界始まったな。


 問題はどういう物に『水魔術』を付けるかだな。魔鉄鋼剣はもうスキル容量の空きがないので何か他のものに付けるのだが・・・。

 一番オーソドックスなのは杖かな。それも魔法使いが持ってそうな先端が曲がっている奴。

 ただ杖がないと『水魔術』が打てないからそれだと常に杖と剣を持った変則二刀流みたいな形になりそうで微妙だな。

 アリっちゃアリだけど武器を振り回してから気が付いたんだけど片腕で武器を扱うって言うのは思っていた以上に難しいし何より疲れる。なるべくなら武器は1つずつ使うのが現実的だな。

 ならば腕に持たない何か・・・、例えば腕輪なんかに付けてそこから出すとか。

 それなら武器を持つのに邪魔にならないし見た目も良い。ただ問題なのは腕輪にしてそのまま腕輪に触らず手首の接触だけで『水魔術』を発動させることが出来るのかどうかだな。


 そもそもそれを言ったら『水魔術』ってどうやって発動させるのかも分からないしどういう魔術が使えるのかも分からない。

 なんかで試してみるのが一番だが、この『水魔術』は貴重なものだからあまり分割して使いたくない。

 駄目だ今の情報じゃ分からないことが多すぎる。

 一旦保留して後片付けを再開しよう、もう結構いい時間のはずだ。


 スキル石の次は亀の死骸をどうするかだ。

 首だけ引っ込めていたのかと思ったが両方の手足も全て甲羅の中に入っている状態だ。

 そこに甲羅の前の方だけが割れていてその下から大量の血と潰れたものがまき散っている。

 この状態になって初めて分かったのだが亀の甲羅の下ってすぐに体の中になるのね。

 もともと持っていたイメージでは甲羅はヤドカリの貝殻みたいなもんで甲羅の下に亀の本体があるのかと思っていたがそうじゃなくて甲羅を剥がした下は直ぐに皮膚になっているし皮膚の下は骨とか身とか臓器がある。

 人間でいうと背中の皮膚が硬くなって甲羅になっているような感じなのか。生態的には違うのかもだけどこれを見ているとそう思う。


 イメージ的には亀の甲羅を剥がしてそれを戦利品として持って帰ろうかと思っていた。見るからに盾とかになりそうだし。

 ただこの構造だと甲羅を剥がすのはかなりの大仕事になりそうだ。気軽にバナナの皮をむくような作業じゃないな、諦めよう。

 従魔達が食べたがったので割れた甲羅の部分を除去して少し穴が開いている部分から身を切り分けて与える。

 ただ作業が大変なので中身を全部くりぬいて出す事は不可能だな。

 俺が身を出すのを止めてしまったので従魔達は勝手に頭を突っ込んだり手を突っ込んだりして食べている。

 取った甲羅の破片の一部は持って帰ることにする。もしかしたら売れるかもしれないし。


 後は亀をそのまま持って帰ることも一瞬考えて押してみたがびくともしない。どのくらい重量があるか想像もつかないが持って帰るのが不可能な事は分かった。


 特に持って帰るものもないので従魔達が一通り食べて満足したなら後はこいつを埋める事にする。

 埋めるのも大変なのでこのまま放置でもいいかもしれないと思ったが誰かに迷惑がかかったら嫌だし何より、これを見つけた誰かがうまい事素材を剥ぎ取って儲けたりしたらムカつくから埋めることにした。


 埋めると言っても穴を掘ってからそこに入れるのは無理なのでここは亀のしたに穴を掘って埋める事にする。

 普通なら亀の真下を掘るなんてことは出来ないがそこはうちの可愛い可愛いギンの力によって解決できる。


 「ギン。亀の周辺に大きな穴を作ってくれ。」

 「わん。」

 そう元気よく返事をすると亀の近くに行って前足を動かして掘る動作をする。

 ギンの前を掘っているように見えるのに実際は亀の下にある土が移動してどんどん亀の周りに穴が出来ていく。

 やっぱりギンが前足で掘るのは何の意味もないが嬉しそうにしっぽを振りながら掘る姿は可愛いので必要。

 

 穴を掘るのにも時間が掛かりそうなのでここはギンとゴブリン達に任せて俺とドンは蟹を倒していた場所に行く。

 倒した蟹はそのまま1か所にまとめていたのでその処理をしなくてはならない。

 蟹がある場所に着くと、昨日蟹を埋めた場所を掘り、そこに蟹の死骸を埋めていく。

 本当は亀の場所に一緒に埋めたいのだが蟹は30匹近くいるので持っていくのが大変なのでここに埋めていく。

 久しぶりに穴を掘るのと今までの疲労で穴を掘るのが大変だった。時間を気にせず亀を埋めた後にギンとこっちに来ればよかった。ちょっと後悔。


 そんなわけで頑張って何とか蟹を埋めたらドンと一緒にギンやゴブリン達の所に戻る。

 ちなみに蟹は昨日と同じように6匹と食べる用の手足を持って帰ってきた。


 ギンやゴブリン達に合流するともう大きな穴は完成していた。

 「ギン良くやった。」

 そう褒めながらギンを撫でていく。いつもはサラサラなのにすごいゴワゴワしている。帰ったら洗ってやらないと。

 一通り撫で終わったら、次は亀を埋めるように指示をだす。

 穴のふちに有った土が一気に穴に向かって動いていき一気に穴が埋まっていく。

 掘るよりも埋める方が速い。このままならあっという間に埋まるだろう。


 その間に近くに何か目印なるものがないか探す。

 小さい岩しかないがしょうがない、この岩に『発光』を入れて少し明るくして目印にする。


 穴も埋め終わったみたいなのでまたギンを褒めたらダンジョンから出る。

 帰りは登り坂なのだが、疲労のせいかいつもよりかなりきつく感じる。

 

 やっとの思いで地上まで戻るとギルドの素材買取所に素材を預けにいく。

 「これ亀の甲羅?」

 買取所の係りの人が預けた荷物の中にあった亀の甲羅を破片を手に取って聞いてきた。

 「そうですけど。」

 「砕けてるけどどっかで拾ってきたの?」

 「いや倒したんですけど、全部は持って帰れなかったのでそれだけ。」

 「え!?亀倒したの?」

 「はい。」

 くくく、驚いてる驚いてる。あれだけ強かったんだきっと倒したら事件になる、そんな敵に違いない。


 「それで残りの甲羅はどうしたの?」

 「えっ。持って帰れなかったので埋めて来ました。」

 「勿体ない。持って帰れば高い値段で売れたのに。」

 そっち。持って帰ってこない事の方が大事件なの?あれだよ結構苦労して倒したんだよそこの評価は?


 「持って来れないならギルドカード置いて来ればよかったのに。埋めちゃうなんて勿体ない。」

 「何ですかそれ」

 「あれ知らない?倒したけど持って帰れない魔物の素材なんかを後で持ち帰る場合、冒険者ギルドカードをその素材の目立つ所に置いておいて自分の物だって主張しておくの。で後から回収部隊を結成するなりしてそこに行って素材を回収するわけ。」


 「それって普通に他の人に持っていかれたりしないんですか?」

 「勿論その危険もあるけどね、大体は帰って来て直ぐに冒険者ギルドのカードを置いてきたってギルドに報告してするの。勿論、なんの素材かもね。それで取りに行って素材が無かったらギルドにそう報告するんだよ。素材なんて売れるところは決まっているから直ぐに足が付く、そうすると横取りした奴にはそれなりの罰があるってわけ。」

 なるほどそういうシステムがある訳ね。


 「当然、放置しておく時間によって他の魔物に食われちまったりするし持ち帰るのが大変な割には全然儲からない素材だってあるから何でもそれをやればいいてもんじゃないけどね。まあ亀の甲羅なら食い荒らされないし持ち帰っても高く売れるからやって損はないわけ。」

 そうだったのか。知っていればやっていたのに。でもまてよ。


 「あの重すぎて僕だけでは何回いっても回収できないんですけど。」

 「そういう時は冒険ギルドに依頼すれば回収専門の奴らがやってくれるよ。亀も何回か持ち帰って来てたし普通にやってくれるよ。まあそれなりに高いけど。」

 そんな部隊まであるのかよ。そりゃまあ個人やチームじゃあの重さは持って帰れないよな。

 

 「それでその甲羅の破片はどれくらいするんですか。」

 「割れてなきゃねそれなりにするけど、割れてるしこの大きさじゃねえ・・・。まあ思い出にしな。」

 買取拒否。処分するのもめんどくさいのかよ。

 ちくしょう、なら思い出にしてやる。将来孫におじいちゃん昔は亀をやっつけたことがあるんだぞわっははは的な奴にするから良いし、別に悔しくないし。

 

 あんだけ苦労して倒した亀が1ディールにもならない事が分かるとどっと疲れが押し寄せて来た。

 早く帰って寝よう。

 そう思い宿に戻る。


 「どうしたんだいその姿、ボロボロでドロドロじゃないか可哀そうに。」

 宿に着くとボロボロの姿を見た女将さんが目に少し涙を浮かべながら心配してくれた。主にギンやゴブリン達をだけど。

 女将さんはひとしきり無茶はするなというお説教をした後、お湯を大量に沸かしに行った。このドロドロの姿を見てどうにかしたいと思ってくれたらしい。

 こうしてみると女将さんはギンやゴブリン達を結構可愛がってくれていたんだなという事に気が付く。

 あまり無茶は出来ないな、今度からはもっと慎重に行こうと心からそう思った。


 お湯を鍋一杯に沸かして貰ったので裏庭で女将さんと一緒にみんなを洗う。

 自分も隅で体を拭いたら血の固まったのがぽろぽろこぼれてくる。頭からもこぼれてくるので頭のどこかも切っていたのかもしれない。

 そんな全身傷だらけの体をきれいにしたらすごい眠くなってきた。

 今までの疲労が一気に来た感じだ。


 本当にもう限界だったのでそのままベットに行って寝る。

 おやすみなさい。

 

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