AI時代になろう・カクヨムのランキングは生き残れるのか――増え続ける作品から「本当に読むべき一作」をどう見つけるか
前回の指摘を反映して、終盤の繰り返しをさらに圧縮しつつ、**「ランキングは順位表ではなく作品発見装置である」**という結論を最後まで一本で通しました。オレオ事件も、AI問題と同じ「ランキングの信頼性」という軸で回収しています。
# なろう・カクヨムの今後を考える――AI時代に「小説投稿サイト」のランキングは生き残れるのか
「なろう系は終わった」
以前から、そんな言葉を見かけることがあります。
異世界転生、追放、ざまぁ、悪役令嬢、スローライフ。
かつて一世を風靡したテンプレートも、昔ほどの勢いはなくなったように感じます。
特に異世界転生には、かつてほどのパワーはないように思います。
ただ、だからといって「なろう」や「カクヨム」そのものが終わるとは思いません。
ジャンルの流行は変わります。
読者の好みも変わります。
新しいテンプレートが生まれれば、古いテンプレートは廃れていく。
それ自体は、創作の世界では珍しいことではありません。
むしろ、これから小説投稿サイトに大きな影響を与える可能性があるのは、ジャンルの変化以上に**AI**なのではないでしょうか。
## AIによって作品が増えすぎる?
すでにAIを活用して制作された作品は存在します。
そして問題は、単純に「AIで小説を書く人が増える」ということではありません。
創作に必要な時間そのものが変わる可能性があります。
プロットを考える。
文章を肉付けする。
設定を整理する。
誤字脱字を修正する。
タイトルを考える。
キャッチコピーを作る。
場合によっては、一話分の文章を作る。
こうした作業の一部をAIに任せれば、これまでより短時間で作品を作れる人が増えるでしょう。
もちろん、AIの出力を自分の文章に直すため、逆に時間がかかるケースもあります。
それでも、AIによって創作速度を上げられる人が増える可能性は高い。
私自身がそうですしね。
そうなれば当然、投稿される作品数も増えていきます。
そこで問題になるのが――**ランキングです。**
小説投稿サイトにとって、作品を投稿できる場所を提供するだけでは十分ではありません。
大量の作品の中から、読者が「自分の読みたい作品」を見つけられることも重要です。
しかし、作品の供給量だけが爆発的に増えたらどうなるでしょうか。
読者が一日に読める作品数は、それほど増えません。
極端な話、作品が一万倍になったからといって、読者が一万倍の速度で読めるわけではないのです。
すると、
「作品は大量にある」
「でも、どれを読めばいいのか分からない」
という状況が生まれる可能性があります。
極端な話、
**「小説を書く人は増えたのに、面白い話を発見するためのはずのランキングが機能していなくて、結局は読む人が減る」**
ということすら起こり得ます。
つまり、AI時代に重要になるのは、作品を作る能力だけではありません。
**増え続ける作品の中から、価値のある一作を見つける仕組み。**
これも同じくらい重要になるのではないでしょうか。
## 異世界作品が教えてくれたこと
これは、過去の「小説家になろう」における異世界転生・転移作品とランキングの関係を考えると分かりやすいと思います。
以前は、異世界転生・転移作品がジャンル別ランキングの集計対象から外され、「異世界転生/転移ランキング」に分けられていました。
しかし、2023年にはこの扱いが変更され、現在は異世界転生・転移作品もジャンル別ランキングに掲載されるようになっています。専用ランキング自体は現在も存在します。
つまり、
**投稿される作品の構成が変われば、ランキングの仕組みそのものも変わり得る。**
ランキングは絶対に不変のものではありません。
作品の増え方や読者の行動が変われば、それに合わせて仕組みを変える必要があります。
これはAI時代にも参考になるのではないでしょうか。
## ならばAI作品もランキングを分けてはどうか
現在の「小説家になろう」では、AI利用状況について、
「AI直接使用」
「AI間接利用」
「AI補助的利用」
「AI不使用」
という区分が設けられています。
すでに「AIをどの程度使ったのか」を区別する仕組みがあるわけです。
ならば私は、これをもう一歩進めて、
**ランキングも分けてしまえばいいのではないか。**
と思います。
例えば、
**通常ランキング**
**AI活用ランキング**
の二つに分ける。
通常ランキングには、誤字脱字チェックやスペルチェックなどの補助的利用までを含める。
一方、本文の創作にAIが関わる「AI直接使用」「AI間接利用」は、AI活用ランキングへ回す。
こうすれば、AIを使いたい作者も投稿できます。
AIを使わずに書きたい作者も、自分たちの作品を読者に見てもらえます。
そして読者も、
「AI作品を読みたい」
「AI作品は避けたい」
「どちらでもいい」
という自分の好みに合わせて選べます。
これはAI作品を排除することではありません。
**住み分けです。**
もちろん、線引きには問題があります。
文章表現の改善までAIにやってもらったら?
プロットをAIに作ってもらったら?
AIが考えた展開を参考にして、自分で本文を書いたら?
この線引きは簡単ではありません。
ただ、現在の「小説家になろう」では、AIが本文の展開を決定づける内容を出力し、それを作品全体の下敷きとして利用する場合、「AI補助的利用」ではなく「AI間接利用」とする考え方が示されています。
すでに基準が存在する以上、それを土台に考えることはできるでしょう。
私は、
**誤字脱字・スペルチェックなどの補助的利用までは通常ランキング。**
**本文の創作にAIが関与する直接使用・間接利用はAI活用ランキング。**
くらいの線引きが分かりやすいのではないかと思います。
もちろん、これは私個人の案です。
## そもそもランキングは何のためにあるのか
ここで、本題に戻ります。
そもそもランキングは、何のためにあるのでしょうか。
単純にPVが多い作品を上に並べるためでしょうか。
ポイントを集めた作品を評価するためでしょうか。
それとも、
**「この作品を読めば面白いですよ」と読者に教えるためでしょうか。**
私は、最後の役割がもっとも重要だと思います。
AIによって作品数が増えれば、
「表面に見える数値的な人気作品をランキングに並べる」
だけでは、読者にとって十分な案内にならなくなる可能性があるからです。
実際、以前のなろうランキングはつまらないテンプレで占領されてしまい、使えないという意見も少なくありませんでした。
そしてランキングには、もう一つ重要な役割があります。
出版社などが、次に書籍化・コミカライズ・映像化などへ進み、そこで売れる可能性のある作品を発見することです。
ただし、
**Webで人気の作品と、商業的に成功する作品が同じとは限りません。**
Webでは無料だから読む。
しかし書籍になったら買わない。
そんな読者もいるでしょう。
逆に、ランキングでは目立たなくても、
「この作者の作品なら、お金を払ってでも読みたい」
という固定ファンを持つ作品もあるかもしれません。
ならば、
「なろうやカクヨムを読んでいない新規読者をどれだけ獲得できそうか」
「継続して読まれそうか」
「シリーズを追いかける読者がいるか」
「書籍化されたら購入してくれるほど熱心なファンがいるか」
といった情報も、本来は作品を発見するための材料になるはずです。
つまり、
**「今人気の作品を並べること」と「将来価値のある作品を発見すること」は、同じではありません。**
## カクヨムのランキングは、現在どうなっているのか
ここで、カクヨムについても考えてみたいと思います。
あくまで私個人の印象ですが、
**ランキングに作品そのものの評価だけではなく、作者同士の交流やコミュニティ内での応援が強く反映されているように感じることがあります。**
もちろん、作者同士が交流すること自体は悪いことではありません。
むしろWeb小説サイトの魅力の一つでしょう。
ただ、
「ランキング上位だから面白い作品なのか」
それとも、
「ランキング上位だから交流のある作者に支持されているのか」
が読者から見て分かりにくいのであれば、ランキングの意味が曖昧になります。
ここで考えたいのが、過去のカクヨムで起きた**「オレオ事件」**のような事例です。
もちろん、過去にそうした事例があったからといって、
「現在のカクヨムランキングも同じだ」
と決めつけることはできません。
サービスも利用者も変化しています。
だからこそ、
**かつてのオレオ事件のような、コミュニティや作者同士のつながりがランキングに影響する要素が、現在のカクヨムにも強く残っているのか。**
これは実際に検証してみる価値のある問題だと思います。
もし現在も影響が強いのであれば、
**「作品そのものへの支持」と「コミュニティによる支持」を、現在のランキングは十分に区別できているのか。**
という疑問が出てきます。
逆に、現在はそうした影響が小さくなっているのであれば、
「カクヨムのランキングは内輪受けが強い」
という過去からのイメージそのものを見直す必要があります。
重要なのは、どちらかを最初から決めつけることではありません。
**現在のランキングが何によって動いているのかを確認することです。**
そして、これはAI問題と本質的には同じです。
AIだから問題なのではありません。
コミュニティだから問題なのでもありません。
**ランキングの数字が、読者にとって「作品を発見するための適切な情報」になっているのか。**
そこが問題なのです。
## ランキングは「一つ」である必要があるのか
ここまで考えると、
**ランキングを一つにまとめて、すべてをそこで競わせる必要はないのではないか。**
私はそう思います。
例えば、
「総合ランキング」
「新着ランキング」
「新人ランキング」
「読者継続率ランキング」
「AI活用ランキング」
など、目的の違うランキングを用意する。
そして、何を評価しているランキングなのかを明確にする。
「今人気の作品」を探したいのか。
「新人作品」を発掘したいのか。
「長く読める作品」を探したいのか。
「AI作品」を読みたいのか。
逆に「AI作品を避けたい」のか。
目的が違うなら、見るべきランキングも違って当然です。
そうすれば、
**一つの順位に、すべての価値を背負わせる必要がなくなります。**
ランキングの数を増やすことそのものが目的ではありません。
**読者が、自分の目的に合った作品を見つけられること。**
これが重要なのです。
## AIは「使うか、使わないか」ではなくなる
ネット上ではAIに対する否定的な意見もあります。
「AIで書いた作品なんて小説ではない」
「AIに頼るのはズルだ」
「自分で書け」
という意見ですね。
こうした感情が出てくること自体は、理解できます。
創作には「自分で生み出した」ということに価値があるからです。
一方で、仕事や学習など、さまざまな分野でAIを補助的に使う場面は増えています。
そう考えると、執筆だけがAIから完全に切り離されるとは考えにくいでしょう。
むしろ今後は、
**「AIを使うか、使わないか」**
ではなく、
**「AIをどう使うか」**
という問題になっていくのではないでしょうか。
自分で考えたプロットをAIに整理してもらう。
書いた文章の誤字脱字をチェックしてもらう。
説明不足の部分を指摘してもらう。
キャラクターの行動に矛盾がないか確認してもらう。
こうした使い方なら、AIは「作者の代わり」ではありません。
あくまで「作者を補助する道具」です。
だからこそ、AI利用そのものを禁止するより、
**「どの程度AIを使った作品なのかを読者が分かるようにする」**
という方向のほうが現実的ではないでしょうか。
## 本当に終わるのは何なのか
結局のところ、AI時代に小説投稿サイトが生き残れるかどうかは、AIを禁止するかどうかでは決まらないでしょう。
重要なのは、
**AIによって作品が増え続けても、読者が「読みたい作品」にたどり着ける仕組みを作れるかどうか。**
です。
AIが小説投稿サイトを直接破壊するとは限りません。
むしろ怖いのは、
「作品が多すぎて、何を読めばいいのか分からない」
「ランキングを見ても、自分に合う作品が分からない」
「ランキング上位でも、本当に面白いのか信用できない」
という状態です。
そうなれば、読者はサイトを開かなくなるかもしれません。
作者も、
「どうせ埋もれるなら投稿しても意味がない」
と考えるようになるかもしれない。
だからこそ必要なのは、
**ランキングを「順位をつけるための装置」から、「作品を発見するための装置」へ進化させることです。**
AI作品を別ランキングにするのも、その一つでしょう。
新人作品を見つけやすくするのも、その一つでしょう。
継続率や固定ファンなど、別の評価軸を示すのも、その一つでしょう。
そして、カクヨムについては、過去のオレオ事件のような要素が現在もランキングに強く残っているのかを検証することも必要です。
すべての問題に共通しているのは、
**「ランキングの順位だけを見て、読者は本当に価値のある作品を見つけられるのか」**
という問いです。
「なろう系は終わった」という話ではありません。
「AIは善か悪か」という話でもありません。
もっと根本的な、
**「増え続ける作品の中から、読者が本当に読みたい一作をどう見つけるのか」**
という問題なのだと思います。
皆さんはどうでしょうか?
**現在のなろう・カクヨムのランキングを、「面白い作品を発見するための仕組み」として信頼できますか?**
信頼できるなら、その理由は何でしょうか。
逆に信頼できないなら、何を変えるべきでしょうか。
AI作品を別ランキングにする。
新人向けランキングを強化する。
コミュニティによる支持と作品そのものへの支持を分ける。
商業化につながる作品を発見できる指標を作る。
あるいは、ランキングそのものを一から作り直す。
方法はいろいろあると思います。
私は、これからの小説投稿サイトで本当に問われるのは、
**「どれだけ多くの作品を投稿できるか」ではなく、「増え続ける作品の中から、価値のある一作をどう見つけ出せるか」**
なのではないかと思っています。




