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次の日の金曜日。
私はお兄ちゃんと一緒に普通に登校していた。
昨日の事を思い出す。
あれは私のせいかもしれない。
私はお兄ちゃんの事を彼氏ではないと言った記憶がある。だからあの人達は勘違いして嘘告なんかをやらせたのだろう。
もう彼氏とか付き合うとかそんな関係は私とお兄ちゃんの間にはない。
私達の関係は八等親の遠い親族。
曾々祖父母が同じなのだ。その頃は私とお兄ちゃんの家は一つの大きな邸宅だったらしい。性は四条。曾々祖父母には娘二人しか恵まれなかった。
相続で娘二人に等分の土地が与えられた。そして各々で家を建てた。それが私の新藤とお兄ちゃんの五条だ。
そして今に至っている。両家の関係も良好。もうお兄ちゃんとは家族なのだ。付き合うとか、彼氏とかの関係性ではないのだから。
そして幼い頃に結婚の約束をしている婚約者なのだ。それは今でも変わらない。婚姻届けも十六歳になった時に私は書いている。その時は気が早いと少し笑われたけど。
お兄ちゃんから言われてた。よく解らない相手には気を付けろと。昨日の私はクラスメイトの女子だからと気を緩めてしまった。本当に反省した。罰ゲームとか初めてだったから興味が湧いてやってしまったけどもうやらない。
私は昨日の事を頭の隅に追いやってお兄ちゃん尋ねる。
「今日明日はバイトだよね」
私はそのバイトに付き添っているのだから。もう用意は済ませてる。
「いつも通り付き合ってくれるのだろ?」
「私がやりたい事だから」
「ありがとう」
今日のお兄ちゃんのバイトは家庭教師だ。本当にお兄ちゃんは頭が良い。付き添いはその生徒が中学三年生の女の子でその時間は生徒の家族が不在だからだ。あちらからお願いだったのだが、それが理由で断られそうだったけど私が付き添うと言って了承してもらった経緯がある。
お兄ちゃんが私を見て優しい顔をしてくれる。私はそれだけでこれを引き受けて良かったと思っている。まあ、気持ち程だけど謝礼ももらってるけど。
昨日の事みたいに私はいつもお兄ちゃんの手を煩わせている。これくらい手伝わないと私の気がすまない。まだまだ足りないのだから。
その日の夕方。
一緒に生徒の家に行った。
呼び鈴を押すと、中から女の子が出てきて歓迎される。結構可愛い子だ。
お兄ちゃんとその子は直ぐに勉強を始めた。
その間付き添いと休憩時間のお茶の準備が私の仕事。
今日はブラウニーとクッキーを焼いてきてる。結構自信がある。
休憩時間、お茶を出すと二人は喜んでくれた。
そして気が緩んだのか生徒の女の子が楽しそうにしゃべり出す。
「ねえ、先生と華月さんって付き合ってるんですか?」
唐突にそんな事を聞いてきた。
私は笑顔を作る。もうそんな関係じゃないって言いたかったけど、ここはお兄ちゃんがなんて言うか聞きたかった。
お兄ちゃんが困ったようにしてる。少しドキドキする。
「付き合ってるって言うのは今更だね。俺たち生まれて直ぐに知り合ってるからね。もう他人じゃないんだよね」
他人じゃない。私もそう思っている。お兄ちゃんはこういう時はうまい言葉を選ぶ。
「えっ?、そんなに付き合い長いんですか?。ねえ、どんな関係なんですか?すっごく気になります!」
「もう結婚間近なんだ」
私はそれを聞いて吹き出した。まさかそう来るとは思わなかった。それを冗談っぽく言えるのもお兄ちゃんだ。冗談っぽいけどそれが本音であることを私は解っている。
「やっぱりそうなんですか!?じゃあ、何処までやってるんですか!」
「こらこら、それは話せないよ。華月も困ってるだろ」
私はその話を作り笑いをしながら聞いている。
何処までやってるかって?
チューはもう四歳の時に済ませました。後は子作りだけどこれはさすがにこれは私もお兄ちゃんも難色を示している。性欲処理だけでやるのを躊躇ってるのだ。避妊具とか使いたくない。いけない事をやってるみたいで後ろめたいし、何より隔たりを自分たちで作ってるようだから。
お兄ちゃんもそう思ってるのかそれ以上のことはしてこない。多分私はかなり大事にされてるだろう。そこに不満はない。私も家族以外の男の人とプライベートでは手も触れた事がない。この前は本当に嫌だった。寂しそうにしてたらハグしてくれるだけで私は十分だ。でも時が来れば・・・約束は守ってもらうから。
そして休憩が終わり、お兄ちゃんは仕事を再開する。私はその後も自分のやるべき事をする。ただそれだけだったけど私はとても満足していた。
次の日の土曜。
今日の午前中はお兄ちゃんの母方の道場で師範のバイトをしている。叔母さんの家系は刑事になる人が多いみたい。○暴の叔父さんは叔母さんの弟だそうだ。お兄ちゃんは主に子供達の指導だ。お兄ちゃんはこの年で剣崎流実戦武闘術という武術の師範になっているのだ。本当にものすごく強い。
私も小さい時にお兄ちゃんと一緒に居たいとの思いから少しだけトレーニングに付き合った事があった。でも直ぐに疲れから熱を出してしまった。どうやら私は必要以上に体を動かすのは良くないみたい。だからそれ以降はお兄ちゃんの手伝いに専念している。
今日もお弁当をもってお兄ちゃんと一緒に道場のお手伝いをしている。
道場の人もみんな私にやさしい。
「華月ちゃんが居てくれると、門下生が増えて助かってるよ」
師範の人が私にそう言ってくれた事がある。私はよく解らなかったけどお兄ちゃんもそうだと言うのでそうなんだと思うことにした。
今日のお兄ちゃんは子供に武器を持った人の対処方を教えている。
あの時、私が混乱せず通報出来たのはこの光景を見てきたからだ。普通ならパニクって何も出来なかっただろう。
お兄ちゃんが一仕事終えて此方に向かってくる。
私は冷たいタオルと飲み物を用意する。
他の師範の方にもお兄ちゃんに渡し終わったら、持って行くことにしている。
「ありがとう。華月」
お兄ちゃんが汗を拭く仕草。これを見た女の子はたまらないかもしれない。私もそうだから。本当に胸が熱くなる。
私は笑顔を崩さずにお兄ちゃんをみる。本当にこの時のお兄ちゃんはカッコいい。
そして時が経ち。お兄ちゃんは三年生になり、私も二年生になった。
ある日の朝、お兄ちゃんが私に向けてこういった。
来週の火曜日は行くところがあるから付いてきてほしいと。
来週の火曜日はお兄ちゃんの誕生日だ。
その日はお兄ちゃんの為にいろんな料理を作る予定だったけど、用事なら仕方がない。私は頷きながらそう考えていた。
そしてその日の放課後。
いつもと違う道をお兄ちゃんと歩く。
何処に行くのだろう?
そんな事を思ってると、行き先は市役所だった。
そこで私のお母さんと叔母さんが待っていた。
どうしてお母さん達が居るの?。今日は何するの?
そんな事を考えながら歩いていたら、着いた先は市民課だった。
そしてお兄ちゃんが窓口にある書類を渡した。
それは私がダウンロードして書いた婚姻届だった。必要な箇所は埋まっていた。お母さん達の同意書もある。あと二人の市民カードも。(注、この時は改正前で女性は十六歳、現在は十八歳)
え?。私は放心してしまった。
結婚?もう?確かに私はもう書いてたけどいいの?
「驚いた?。一輝君がね。私達に頼み込んできたの。どのみち貴方たちはするでしょう。早いか遅いかの違い。貴方が良くない誘いを断り易くする為だって。貴方危なっかしいからね。学校にも事情を話して条件付きで了解もらったわ。貴方たちが優等生だったからすんなり了解してもらったけど。貴方が嫌だったらここで取り下げるけどどうする?」
私はその言葉を聞いて我に返った。そんな事は決まってる。
「そんなの良いに決まってるよ!。もう子作りしても良い?。私学校やめて早くお兄ちゃんの子供が産みたい!」
みんな苦笑しながらはやる私を見た。
「それは駄目。それは学校を卒業して就職してから。それが条件よ。まあ私も早く孫の顔が見たいけど」
「え~~~」
周りから笑い声が聞こえてくる。私は自分の言ったことに少し恥ずかしくなった。
届けは受理され私達は帰路につく。お兄ちゃんと結婚したんだ。まだ実感が湧かない。
「華月」
お兄ちゃんが私を呼ぶ。私はお兄ちゃんの方を向く。
「手を出して」
私は言われるままに手を出した。そしてお兄ちゃんが何か私の指に付ける。
それは結婚指輪だった。
その時初めて私は実感した。
お兄ちゃんと結婚したんだって。
私はお母さん達が居るのにお兄ちゃんに抱きついた。私は嬉しさのあまり人前とういことをはばからず泣いてしまった。
そんな私をお兄ちゃんは優しく撫でてくれた。
私はその日書類上だけだけど五条華月となった。その日は両家でお祝いとなった。
それから学校で私達の事が広まった。
最初は友達から質問攻めに遭ったけど嫌ではなかった。
そしてお兄ちゃんの思惑通り、私に悪意を向けてくる人達はいなくなった。
これまでよく告白されてきたが、それがピタリと止んだ。告白される度に嫌な気持ちになって居たけどそれが無くなって私は快適だ。
不倫の強要は犯罪だ。
人妻にちょっかい掛ける人はさすがにこの年では居なかった。
たまに街中でナンパにあったけど左手の薬指を見せるだけで相手は去って行った。
私達はそれから何事も無く年を重ねていった。
約十年後
俺は大学を卒業して国家公務員資格を取り、警視丁に入った。叔父さん影響も強かった。
華月は女子短を卒業して、保育士の免許を取った。
最初はいろんな部署を回され、家を離れることも少なくなかったが、いつも華月は俺の側にいて支えてくれた。
そして今日も仕事を終え、家に帰る。
扉を開けると、華月の幼少期にそっくりな少女が出迎えてくれる。
「お父さん。お帰りなさい!」
俺の娘の羽月だ。
「ただいま。良い子にしてたか?」
羽月が俺に抱きついてきたので俺は抱えてやる。
「お帰りなさい。お父さん」
そこに華月がもう一人の子供を抱えて笑顔で俺を出迎えてくれた。
華月の俺への呼び方が変わったのは子供が生まれてからだ。
それも悪くはない。
「ただいま」
何気ない言葉だが、それを俺は普通とは思わなかった。
幼少期に交わした約束。その思いが変わらなかったから今がある。それはやはり特別な物だと思う。
あの日の事を思い出す。
華月が俺の為にあの何とか言うヤツを断罪した時。俺はあの時この子の強さを改めて感じた。
普段は何も出来ないのにいざとなったら自分の力以上の事をやってしまう。
思い。
それを大事なことだ。
いくらそれが重かろうと俺が重く感じなければ良いだけ。
それだけの事なのだ。
読んでもらえてありがとうございました。
題名からドロドロ物を期待した方には申し訳ありませんでした。
私にはドロドロものは無理です(笑)
次の作品は諸事情(艦○レ)の為に遅くなると思いますが、その時はよろしくお願いします。




