SS(華月視点)
華月視点です。思ったより長くなりました。
一ヶ月前
夢を見ている。
おにいちゃんがベットに寝て苦しそうにしている。
私はその隣でぼろぼろと涙をこぼしている。
お兄ちゃんが私が泣いているのに気づいてそっと撫でてくれた。
そこで目が覚めた。
苦い思い出。
私が知らずにジャガイモの芽をお兄ちゃんに食べさせて大変な事になった時だ。
もうあんな失敗はしない。
今日は日曜日。
色々やることがあってもう夕方だ。
私は明日のお弁当の材料が無い事に気づき買い物に出かけた。いつも掛けない目がねを掛け、マスクをする。一人で出かける時の格好だ。普通に歩くとナンパされそうになった事があるのでお兄ちゃんに相談したらそうしろって教えてくれた。
お兄ちゃんの分も学校がある日は毎日お弁当を作っている。あの日の事を教訓に私は料理の知識と腕を磨いている。
材料費は叔母さんにもらっている。ついでに岬ちゃんの分まで作ってるので叔母さんは手間が省けて喜んでいた。
お兄ちゃんも喜んで食べてくれる。それを見ると私も嬉しいし、やる気が出る。
買い物を済ませスーパーから出た所、何やら学生らしき男の人たちが屯っていた。
私は気にせずに通りすぎようとしていたのだが、その話声が聞こえてきた。それが無視出来る物であればそのまま帰っていただろう。でもそうでは無かった。
「五条のヤツ調子乗ってるよな」
「それな。あんな可愛い彼女がいてよ。マジ腹が立つ。確か新藤とか言ったか。あのレベルの美少女はめったにいねーな」
は?、五条?、もしかしてお兄ちゃん?、それと私?。何なのこの人達?。
私は見つからない様に身を潜め、こっそりその話を聞くことにした。
「あいつ、何とかしようぜ。腹立つから」
「でもどうどうするよ、吉田?。アイツ喧嘩強そうだし普通にいってもやり返されそうだぜ?」
吉田?、ああ、あの人見たことあるかも。お兄ちゃんのクラスにお弁当届けに行くとき、ニヤついていつもこっち見てる人だ。なんか嫌な感じの人。
「まあ、普通にはやらねえよ。今度のテストでカンニングペーパーをヤツの机に仕込むとかどう?」
「ああ、それだったらうまくいくかもな」
「それで思いっきり騒いでヤツの評判おとしてよ。幻滅した新藤をかっ攫うって魂胆よ」
「ああ、それいけるかもな」
何?この人達?お兄ちゃんに冤罪着せる気?。もし、そんな事になっても信じないし気にしないけど?。でもそれは私だけ。そんな事私は許せない。
話をしていた人達は私に気づかず行ってしまった。
買い物袋を持った私は多分、他の人が見たら異様な雰囲気に見えただろう。
そう、私は今、ものすごく怒ってます。
でも私は非力だ。一人では何も出来ない。お兄ちゃんの役に立ちたいけど一人だとやれる事は殆どない。
お兄ちゃんの手をあんな人達の為に煩わせたくない。
だから私は叔母さんと岬ちゃんに相談する事にした。
叔母さんと岬ちゃんは私の話を聞いてくれた。
「ふっふっふ、華月諜報兵。良い働きをした」
え?、諜報兵?。何?。叔母さんどうしたの?
「我が息子を貶めようとする輩がいるとは。私も本気を出すときが来たようね」
「お母さん?何言ってるの?普通に兄さんに言えば終わりだと思うよ?」
「岬上等兵、それではおも、ゲフン・・それでは華月諜報兵の働きが無駄になるのだよ。その働きに敬意をはらい我々は応えなくてならない」
「・・・・・」
岬ちゃんが呆れている。もしかして私、相談する人間違えた?。
「私は睦月型駆逐艦十二番艦の夕月。この砲が遂に火を噴く時が来たのだ!。戦争だ!。敵は一人残らず沈めるのだ!」
「いや、お母さん?ここ海じゃないよ?それにお母さんの名前ゆづきだよね?」
「セーラー服何処にしまったかしら?」
「いや、何それ?。もしかして艦○レ?夕月ってまだ実装されてないし?いや、それ以前に何着るつもりなの?その年じゃ無理でしょ!」
「あの子達は私より年上よ」
「いや、実際の年の話じゃないから!」
なんか岬ちゃんがハアハア言いながらツッコンでるけど全然話しが解んない。何言ってるんだろう?でも協力はしてくれるみたい。良かった。
「さて、冗談はここまでにしてまずは情報ね。相手の事が解らないと何も出来ないわ」
そう言って叔母さんはどこかに電話している。それが終わると悪い笑みを浮かべた。叔母さんも冗談言ってるけど多分相当怒ってる。岬ちゃんもなんだかんだ言ってるけど気持ちは同じだろう。
そして私にとって、お兄ちゃんに会えない地獄の日々が始まる。でも耐えてみせる。お兄ちゃんと幸せな未来の為に。
最初の一週間は主に敵情調査だった。
まあ、叔母さんの行動力は凄い。探偵みたいな人に頼んで吉田って言う人の身辺を洗い出してる。
その調査結果が・・・マジでこの男最悪。ちょっと顔が良いだけで女の人との交流が酷い。今は三人くらい関係を持ってる様だ。ただ、その調査結果なんだけど文字だけで決定的な証拠となり得るものが無い。どうせなら写真とか付けてくれたら楽だったのに。時間が無かったのかもしれないけど。
その内でどうやら本命は花子って人みたい。花子って人は吉田の幼馴染みたいだ。
その花子って人も浮気してるらしい。
マジで最悪。お兄ちゃんと私とは本当に対局な存在だ。
先ず、その花子て人の浮気の証拠を押さえる事から始めた。あれ?コレ本当に必要?私はあの吉田って人が私達に関わって来なくなれば良いんだけど。
叔母さんにそう尋ねると叔母さんは悪い笑みを浮かべながらこう言ったの。
「その屑には自分がやってる事がどんなにひどい事か思い知らせる必要があるわ。コレは必ず必要よ!」
そう言われたので私は納得する。確かに自分の行いがどんなに酷いか解らせないとまた同じ事を繰り返すかも。
私は岬ちゃんと一緒にその証拠をカメラに収める事に成功した。
私は本当に嫌だったけど、岬ちゃんはノリノリで協力してくれた。あれ?岬ちゃん。結構楽しくやってる?。やっぱり叔母さんの子供なんだろう。
そして二週間が経った。
ここから本当の作戦が実行される。
先ず私が吉田に近づき、色々な悪事の証拠をカメラで収める事。私が言い出したことなのであの男に近寄るなんて死ぬほど嫌だけど何とかやり遂げて見せる。
そしてその間は朝に行動を確認するためにお兄ちゃんとは登校せずに三人で話し合うことになった。
そして夕方は作戦実行。夕方もお兄ちゃんに会えないなんて・・・。
その前の朝。
「あのね、ちょっとやらなくちゃいけない事が出来たの。明日から少しの間一緒に行けない」
お兄ちゃんに話しを切り出した。
つらい。本当につらい。一日でもお兄ちゃんの顔が見られないなんて本当に私は耐えられるのだろうか。いや、それでは駄目だ。お兄ちゃんに甘えてばかりでは駄目なのだ。
「なんの用事?」
お兄ちゃんの質問の答えることは出来ない。
「・・・そっか、解った。無理するなよ」
私が黙ってるとお兄ちゃんがそう言ってくれた。お兄ちゃんは私に本当にやさしい。私がやる事を信じてくれてる。私も期待に応えなければ。
そして作戦は始まった。
私からあの男に近づいた。あの男の表情は本当に嫌な顔だった。私の事をニヤニヤしたいかにもスケベそうな顔で見てくる。本当に嫌。帰りたい。でもお兄ちゃんの為だと思って耐えた。
最初はカラオケなんかに複数で行って交流を深めようとしてるのが解った。でもあんな男に一ミリも心は傾かない。当たり前だ。もう嫌悪しているのだ。本当にそれを表に出さないのに苦労した。岬ちゃんの協力もあって私はあの男が不良まがいな事をやってる証拠画像を手に入れる事が出来た。
そしてあの日の朝。
「今日は夕方デートね」
「叔母さんデートじゃないわ。そんな身の毛もよだつ様な事言わないで」
「ふふふ。ごめんなさい。じゃあ、その時のリスクは考えておかなくてはならないわね」
「リスク?」
「例えば、一輝と偶然鉢合わせるとか」
「え?そんな事・・・・」
私その時の事を考えて背筋が凍る思いをした。そんなの絶対に嫌!。お兄ちゃんに見られるなんて死にたくなる。
青い顔をしてる私に叔母さんはその続を話してくれる。
「その時に貴方が取り乱したら作戦は失敗よ。だから言うことを決めておきなさい。そんな時って人は最初に浮かぶ事を言うの。一輝に向かって屑をどう思ってるか言えば良いわ」
「でもそれって、お兄ちゃんを傷つけない?」
「そうね。多分少しは傷つくかもね。でも一輝なら大丈夫だと思うわ。あなたたちが過ごしてきた時間。そんなに簡単に壊れない。もし一輝が誤解したままなら私がフォローしてあげるから心配しないでやり遂げて来なさい」
「・・・わかった。私やってみる!そして私がお兄ちゃんをあの男から守ってみせる!」
「まあそんな事になっても一輝は賢いからすぐに気づくはず。信じなさい。一輝を。装備はちゃんと持った?」
「うん。コレとコレとコレ!。ちゃんと持ってるよ」
「よろしい。岬、手筈の方は?」
「兄さんのクラスの部活の先輩に話し易い人がいるから大丈夫。作戦が成功したら放課後あれをあの男の机に入れれば良いのね?」
「あの男は節操が無い。華月ちゃんにスンデの所で躱されたら必ず他の女を呼ぶ。そしてそれは本命では無い子を呼ぶ事は今までの調査で解ってる。そこを画像に押さえるの。もし華月ちゃんが装備を使用した場合は作戦は失敗。即時その場から離脱せよ!。その場合は寝取られは破棄。ざまぁのみとする。今日が作戦最終日になる。各員作戦を実施せよ!成功を祈る」
「はっ!」
私と岬ちゃんは叔母さんに敬礼をする。あれ?私もなんかこの人達に影響されてない?
そして私はあの男と町中を歩いている。
ここで嫌そうな顔をしては駄目。
私は心を殺して目一杯よそ行きの顔をし、この屑と楽しそうに話を合わせながら歩いた。
「華月!」
後ろから私の今一番聞きたく無い声が聞こえた。
心臓がはねるのが解った。
声がした方向を見る。
そこにはお兄ちゃんがいた。
最悪だ。もう死にたい。私はこの時どんな顔をしてたのだろう。
多分、生まれて初めてする表情だったかもしれない。
「よう、五条。奇遇だな」
お兄ちゃんが私達の前に来て私を見ている。
「おまえ・・・、何やってんだよ?」
目がくらむ。
意識を手放しそうになった。がスンデの所で持ちこたえた。そして今朝叔母さんに言われたことを思い出した。
お兄ちゃん。私は今から言うことを正確に理解して!。お兄ちゃんならきっと直ぐ理解してくれる。私は気を取り直ししっかりお兄ちゃんを見据えた。
「俺とデートしてんの見て解んねえの?、なあ華月?」
気持ち悪い。私の事名前で呼んで良いって誰が言ったの?。ふつふつと怒りが湧いてくる。私はそれをお兄ちゃんに向かって言った。
「練れ慣れしく、名前で呼ばないで」
「は?、何言ってんだ、お前?」
お兄ちゃんが信じられないと言うような顔をしている。悲しい。そんな顔しないで。私はお兄ちゃんだけなの。本当に心が痛い。でも我慢する。お兄ちゃんを守る為に。
「わたしは貴方の事が、ずっと嫌だったの!。いちいち私の方ばかり見て凄く嫌だった!。」
私はこの屑に思ってる事をお兄ちゃんに向けて言った。お兄ちゃんはその言葉で放心している。ごめんなさい。お兄ちゃん。でも私は解ってる。お兄ちゃんはちゃんと理解してくれる事を。
「じゃあな、五条。そういう事だ。またな!」
そして私はそんなお兄ちゃんの横を通り過ぎていった。
私は下を向く振りをして後ろをちらちら見ている。無論お兄ちゃんを。
少ししたらお兄ちゃんは。動き出した。
そして私達に付いてきている。
お兄ちゃんはさっきの様なショックを受けた表情はもうしてなかった。私を心配してる時の顔。
私は目頭が熱くなる。
解ってくれた。
やっぱり私のお兄ちゃんだ。
「ふっ、あの野郎の顔、見物だったぜ!」
何か言ってる。でも私の耳にはそれは入ってこない。
解ってくれたお兄ちゃんの事で胸がいっぱいだ。お兄ちゃんが見守っていてくれる。私はこれだけで安心できた。
「なあ?」
「おい、どうしたんだよ?」
そこで私はこの屑の言葉を意識を傾けた。何時のまにかそこはいわゆるホテル街の手前に差し掛かっていた。危なかった。ここで私は気を取り直した。
「え?、何?」
「あいつの事気にしてんのか?」
「え?、全然・・全然気にしてないよ?」
「そうか、なら今日はあそこいかね?」
屑が言うのはラブホテルだった。行くわけ無いでしょ!汚らわしい!。
屑が私の肩に手を回してきた。触れた瞬間私は拒絶する。やんわり私はその手を払いのけた。
「そうゆうのはテストが明けてからね。私、勉強で忙しいから・・・」
「なんだよ、またそれ?」
「ごめん。でもテストが明けたら行くからそれまで待って」
行くわけが無い。貴方と会うのはコレが最後。私はやんわり躱す事に成功した。そして別れ相手の意識から私が無くなったことを確認して作戦を続行する。お兄ちゃんが見守ってくれているのは解っている。だから最後までやり遂げる。
私は使い捨ての手袋を脱ぎ捨て、触れられた肩を叩いた。本当に汚らわしい。でも今はあの男の監視が最優先。私は我慢強く待つことにした。そしてそれを成し遂げた。
私は岬ちゃんにメッセージを送る。
『ワレモクテキタッセイセリ』
そして岬ちゃんからもメッセージが届く。
『コチラモモクテキタッセイセリ。スミヤカニキトウセヨ』
『リョウカイ』そう岬ちゃんに送る。
私は成し遂げた。つらかったこの一ヶ月。後はこの画像を花子って人に匿名で送って結果を待つだけ。
汗をかいてる訳では無いけど額を拭う。多分私はその時いい顔をしていたと思う。
こちらを観察していたお兄ちゃんが、踵を返すのが見えた。
ここで私に声を掛けないのはお兄ちゃんの優しさだ。
まあ後で怒られると思うけど。
作戦は成功した。
あの屑と取り巻きが停学になった。
私は前と同じ様に朝、お兄ちゃんを待つ。
お兄ちゃんを待つ間いろんな感情を押し殺していた。耳が熱くなってる。
お兄ちゃんが出てきた。
いつもの様に挨拶をしてくれる。
私も挨拶だけしてだまり込んでしまった。
「おまえ、無茶しすぎだ」
お兄ちゃんにそう言われた時私は嬉しくて泣きそうになった。やっぱりお兄ちゃんは解ってくれていた。
「あの時言った言葉。俺の方を向いてたけど、俺に言った言葉では無かったのだろう?」
もう何も言うことは無いみたい。言い訳もいらない。多分謝罪の言葉もいらないだろう。
「おにいちゃんがいけないんだよ。いつもと違う場所にいるんだもん。私決めてたの。もしそういう時、あの人の事を言おうって。」
そう言ってしまった。照れ隠しだ。本当は最初にごめんなさいと言うべき所だったけど、お兄ちゃんは気にしないだろう。
「お兄ちゃんは私の事信じてくれるの?」
「信じるとかもうそんな仲じゃ無いだろ。もう俺達には許すとかそう言う言葉は無いよ。解ってるだろ」
解っている。でもその言葉を聞きたかった。私はその言葉を一生忘れないだろう。私はお兄ちゃんに寄り添いいつもの様に学校に向かった。
そしてあの男がお兄ちゃんに取り押さえられている。
「華月!何で俺をだましやがったんだ!」
屑が私に向かって叫んできた。だから私は応えてやる。
「名前で呼ばないで。汚らわしい。私、貴方がお兄ちゃんにカンニングの冤罪着せようとしてたの知ってるのよ」
低い声が出た。
本当に冷たい声。
お兄ちゃんも黙って聞いている。
「な、何でお前がそれを!?」
「あのスーパーの前で騒いでたの聞いたの。あんな場所で。私貴方みたいな人が大っ嫌いなの!。」
「な!」
「顔が良い?。貴方鏡見たことある?お兄ちゃんの方が何千倍かっこいいわよ!(華月アイ)。もう二度と私達の前に姿を見せないで!」
「あ、あ、あ・・・」
「もう良い華月。そのくらいにしておけ。どうせこいつは補導される。もう俺たちの前に姿を見せることは無いさ」
そして吉田は駆けつけてきた警官に補導された。
事情聴取を終えて私はお兄ちゃんと一緒に帰っていた。
「叔父さんに話したよ。もう何も無いはずだ」
「叔父さんって、○暴の?」
「そう、前に話しただろ?」
「そっか」
「華月、もう無茶するなよ」
「もうしない。約束は・・・」
もしこんな事があったら私はどうするだろう。きっと同じような事をしてしまうかもしれない。でも危険な事はやっぱりお兄ちゃんに言うべきだ。
「はあ、まあいいよ」
お兄ちゃんはその考えを見透かしたのか、すんなり解ってくれた。本当に優しいし私を解ってくれる。私ほ本当にお兄ちゃんが好きだ。世界中の誰よりも。
「お兄ちゃん」
「何だよ」
「大好き」
「今更だな。・・・俺も」
「あ、今なんか間があった」
「気にするな」
私達が幼かったあの日、泣きじゃくる私にお兄ちゃんは言ってくれた。
『お前に殺されるなら、俺は良いけど。でもそれでお前が悲しむなら死なないよ。だから泣き止め』
私の思い出。
苦いけどその言葉がずっとあの時のことを思い出させてくれる。
私はお兄ちゃんとずっと一緒にいる。たとえ今回の冤罪に引っかかって、お兄ちゃんが世間の信用を失ってたとしてもそんな事は関係無い。私はずっとお兄ちゃんの側にいる。これが私の行動理念だ。
読んでもらってありがとうございます。
本当は書くつもりは無かったんですが、思ったより評価をいただいたので解り辛い所を書きました。
ありがとうございました。
次作はざまぁみたいな売れ筋では有りませんが、その時はよろしくお願いします。




