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見えない嘘と、泣けない少年  

読む前に。


世界観:魔法というより「精霊の声と色・音の力」を中心とした異世界。血筋や家柄よりも「能力と信頼関係」が物語の軸


人間の会話「」

人間の本音・心の声:『 』

精霊(妖精)のセリフ:〈 〉

ルミナの心の声: ( )

パパの表向きのセリフ(咆哮):【 】(カタカナと漢字。唸り声も含む)


 噴水の事件から、数日後のこと。

 公爵邸の応接室には、重たい空気が沈んでいた。

 騎士に連れられてきた一人の少年が、部屋の中央に立たされている。痩せた体に、擦り切れた服。年の頃はルミナより少し上だろうか。だがその目は、年齢に似合わずひどく乾いていた。

「閣下。この少年は、街で虚偽の報告を繰り返しており……」 「盗みの疑いもあり、住民からの苦情が絶えません」


【……嘘ツキハ嫌イダ】 【咆哮:グルルル……ッ!!】

 ヴィクトルの低い唸り声に、少年の肩がびくりと震えた。

『ど、どうすればいい!? こういう時なんて言えばいいんだ!? 怒ればいいのか!? でも泣いたらどうする!?』


(パパ、完全に対応ミスだよ……)

 ルミナはそっと前に出た。

 少年は一切目を合わせようとしない。ただ、床だけを見ている。

「ねえ、名前は?」


 少し間があって、か細い声が落ちた。

「……リオ」


 その瞬間、ルミナの中に、別の“声”が流れ込んできた。

『どうせ……信じないくせに』


(……え?)

 ルミナの眉がわずかに寄る。


 その周囲を漂う精霊たちも、いつもと様子が違った。光が弱く、色がくすんでいる。


 ルミナの精霊が言う。

〈この子の精霊さん……元気ないよ〉

〈声が、うまく出てない……〉


(嘘じゃない)

(この子、“言えない”だけだ)

 ルミナは、さらに一歩近づいた。

「ねえ、リオ。ほんとに、嘘ついてるの?」


 リオ少年の肩が震える。

「……ちがう」

 かすれる声。


 その奥で、はっきりと聞こえた。

『助けて』

 ルミナの目の色が変わる。

 視界の中で、リオの周囲に絡みつく“何か”が見えた。

 黒く濁った、細い糸のようなものが、リオの精霊たちの口元を縛りつけている。

〈苦しい……言えない……〉


(……まただ。この前の“闇”と同じ、精霊もだけど、リオも上手く話せないんだ)

 ルミナの中で、何かが切り替わった。

「パパ」

 小さな声だったが、その場の空気が変わる。

「この子、嘘つきじゃないよ」


【……何ダト?】


「声を、奪われてる」


 騎士たちがざわめいた。

「声を……?」 「そんな馬鹿な……」


 ルミナはリオの手をぎゅっと握る。

「大丈夫。ルミナが、ちゃんと聞いてあげる」


 その瞬間、リオの目から涙がこぼれた。

『……言いたい事が言えないんだ……』

 言葉にできない思いが伝わってくる。


 ルミナは振り返る。

「パパ。このままだと、この子だけじゃない」

「街のみんなも、同じになるかもしれない」


 一瞬の沈黙。

 ヴィクトルの目が鋭く細められる。

【……分カッタ】

【咆哮:原因ヲ潰ス】

『娘が困ってる=全部敵』


(パパ、思考がシンプルすぎるよ……でも頼もしい)

 ルミナは小さく息を吐いた。

(翻訳するだけじゃ、足りない)

(助けなきゃ)

 その決意が、胸の奥で静かに燃え始めていた。



私からのお願い。

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