16.朝食後は本当に忙しかった
一般的に、貴族は馬車に乗る。当主や跡取りは乗馬の訓練をするが、街中の移動は馬車だった。にも関わらず、お母様を含めた全員で乗馬って……。
がっくんがっくん揺れる馬の背にしがみ付き、しっかりとタテガミを握る。そんな私を背中から支えるママが、からりと笑った。
「大丈夫よ、落としたりしないわ」
「馬車じゃな……っ、うぅ」
ママが平然と喋るから、釣られて返事をしたら舌を噛んだ。それも勢いよく、まったく容赦も遠慮もない噛み方だった。痛さに呻く私に、ママは「あらあら」と苦笑いする。鞍の端に座った私を引き寄せ、ぴたりとお胸に張り付く形で抱っこし直された。
驚いたことに、上からお胸で押されながらの乗馬の方が快適だ。上下が固定されて、揺れが格段に減る。柔らかな巨乳を頭に乗せ、まだジンジンと痛む舌を労わりながら馬に揺られた。街道を進むこと半刻ほど。到着した先は、賑やかな街だ。
前世の記憶通りなら王都の中心部だが、今は雰囲気が違っていた。地方都市の賑わいというのか、流行を追った感じが薄いと表現するべきか。忌憚なく言ってしまえば、ローカル感が滲んでいる。
「元王都だったんだけど、ほら国がなくなったでしょう? 今はお父様の領地の一部なの」
「……あ、うん」
付いてきたパパが最初に馬を降り、近くの預かり所へ渡す。その間ににぃにも馬を降りた。さっとママの馬の手綱を掴み、降りる手助けをする。私は下で待つパパに渡され、ひらりと優雅に降りたママと手を繋いだ。
馬はすべて預かり所へ繋がれる。街中は荷車や馬車が走っているが、騎乗はなかった。規制でもしているのかしら。馬に蹴られると、かなりの頻度で死ぬから。
街の人達にじろじろ見られたが、前世の記憶もあるので気にしない。ところでママと右手を繋いだら、左手をパパとにぃにが奪い合っていた。殴り合いに発展する前に、ママが裁定を下す。
「今はクリフォード、帰りはキースよ」
パパもにぃにも、逆らう愚かな行為はしない。素直にパパが差し出した手を繋いだ。すごく嬉しそうに笑う。愛されているなと感じた。
小さな歩幅に合わせて歩く家族と入ったのは、洋服屋さんだった。既製服はもちろん、オーダーも受けているみたい。ファッションショーが始まり、大量の服を試着した。その合間に採寸を済ませる。
「では、ここからここまで頂くわ。屋敷に届けてね」
ママがザ・お金持ち! なセリフを吐いて買い物が終了する。おそらくオーダーもしたのだろう。着替えに忙しかったから、何着買ったのか分からない。また手を繋いで、街へ出た。宝石店、靴屋、カバンや帽子などの服飾小物、革製品、なぜか玩具屋さんも回る。
疲れてきた頃、昼食を済ませてまた街を歩いた。この頃には眠くなり、にぃにが抱っこしてくれる。それを見てパパが羨ましそうに「狡い」と呟いたのが印象的だった。




