《 第三回合同捜査会議 》
1
八月十二日 午前八時
これからの方針を統一するために、第三回の合同捜査を招集した。
召集したのは
神奈川県警捜査第一課課長 佐々木陽一警視
神奈川県警捜査第一課10係 田辺潤警部・安田大輔警部補・新城泰治巡査部長・
酒田新平巡査部長・永井淳也巡査・水月菜穂子巡査
神奈川県警大和北署刑事第一課
星野洋介警部・浅倉正和警部補・工藤博一巡査部長・
佐賀洋子巡査部長・藤田仁巡査
神奈川県警本部鑑識課 山辺雄平警部・下田淳巡査部長
神奈川県警大和北署鑑識班 守屋伸介巡査部長・三井孝也巡査
総勢 16人
招集した、捜査員と鑑識班を前に
神奈川県警捜査第一課課長の佐々木警視が、こう唇を切った
「一ヶ月以上、毎週毎週、射殺事件が起きるという、最悪の結果を引き起こしている。世間が、いや日本中が、警察はどんな捜査をしているのか。なぜ、犯人を捕まえることができないのか。そんな憤りが。マスコミをはじめ、いろいろな場所で噴出している。いま、有力な犯人である、坂口浩介の行動が掴めていない。真っ先に、本人の行動を把握して欲しい。それから、交流関係も把握してください。なぜこのような犯行を起こしたのかを、交流する相手からの聞き込みも必要になる可能性がある。悟られないように関係のある、人脈の確認をお願いする。」
2
神奈川県警捜査第一課課長の田辺警部は、今後の捜査方針を発表した
一、坂口浩介の行動監視
10係 永井淳也巡査・水月菜穂子巡査
大和北署 工藤博一巡査部長・藤田仁巡査
二、坂口浩介の交流関係
10係 新城泰治巡査部長
大和北署 浅倉正和警部補
三、坂口浩介の仕事関係
10係 安田大輔警部補
大和北署 佐賀洋子巡査部長
「どんなことをしても、家宅捜索令状の発行にこぎつけたい。坂口浩介の軽自動車が目の前にあっても、手も足も出ない状況である。それを早く打開したい。皆の協力なくして、発行は無いと思っている。何か一つ突破口になる物証を見つけて欲しい。」
と、捜査第一課10係係長の田辺警部は、あいさつをした。
3
八月十二日 午前十一時
お盆休みがはじまったこの日、朝から出版社のいくつかに連絡をしていた
捜査第一課10係の安田警部補と大和北署刑事第一課の佐賀巡査部長は、坂口浩介が寄稿している、月刊『コンバット・ガン』を発行している出版社が、話を聞いてくれるということで、訪れた。
安田警部補は、警察手帳を提示して
「お盆の最中、お時間いただいてありがとうございます。」
と、あいさつをした。
対応してくれたのは、編集長の大場隆久だった
安田警部補は
「今日からお休みですよね。お仕事ですか?」
「そうですね、出版社は、休日がないんですよ。締め切りだけに追われていますよ。取材があれば、土日・祝日は全く関係なくなりますよ。」
と、編集長の大場隆久は、笑った。
「それでは、連休もなしですか?」
「社としてはですね。ただ、編集者個々で、連休を取っていますよ。」
安田警部補は、本題にはいった
「早速ですが、フリーライターの坂口浩介さんの話をお聞きしたいのですが。」
「坂口さんですか?」
「そうです。」
「どんなことですか?」
「こちらで発行している月刊『コンバット・ガン』に寄稿していますよね。」
「そうですね。月刊誌ですが、年に十一回発行しています。」
「十一回の発行に、すべて寄稿しているんですか?」
「いえ、二ケ月に一度の寄稿をお願いしています。」
「どのような内容のものを、書かれているんですか?」
「坂口さんには、ガンの紹介文を書いてもらっています。雑誌としては、コンバットとガンを載せていますが、坂口さんは、コンバットには疎いですが、ガンに対しての知識はものすごく豊富で、その豊富な知識を書いてもらっています。」
「ガンというのは、モデルガンですか?それとも実弾を撃てる実際の銃ですか?」
「両方です。モデルガンであれば、メーカーさんの製品レビューです。」
「実際の銃であった場合は、どんな感じですか?」
「ちょっと待ってください。坂口さんは、何かしらの事件に関与しているんですか?もしかして、いま起きている連続射殺事件に関与しているんですか?」
「いえ、そんなことはありません。」
と、安田警部補は、答えた。
つづけて
「坂口さんに限らず、ガンに詳しい方の状況を調べているだけです。ですので、坂口さんがどうのこうのという訳ではなく、こういう雑誌が、どのように出来上がるのかも知りたいと思って、お聞きしています。」
「そうですか。」
と、編集長の大場隆久は、怪しいなと感じながら返事をしてみた。
「それで、実際の銃の時は、どうするんですか?」
と、安田警部補は、つづけた
「その場合は、海外で取材をします。アメリカが多いですね。坂口さんも何度か渡米して、記事にしてもらっています。」
「そうですか。ちなみに、近況ではいつ頃渡米していますか?」
「そんな事まで聞くんですか?」
「いえ、参考までです。調べないといけないようでしたら、大丈夫です。」
と、安田警部補は、話をさえぎった。
つづけて
「今後、坂口さんが寄稿する予定の雑誌は何月号ですか?」
「来月の9月号です。いま、まさにその号の最終確認を行っている最中ですよ。発売は、9月1日です。」
と、大場隆久は、答えた。
「それでは、先月取材をしたんですか?」
「いや、5月に取材をしてもらっています。」
「そうでしたね。二ケ月に一度、取材をお願いしているんでしたよね。」
「そうです。」
「ちなみに、先月の7月はどんな取材をお願いしたんですか?」
「先月は、モデルガンメーカーの取材ですね。新製品が、クリスマス商戦に合わせて発売される予定なので、その取材をお願いしました。」
と、編集長の大場隆久は、答えてくれた。
安田警部補は、質問をつづけた
「編集長は、ライターさんと呑みに行ったり、社内以外の場所で会ったりはするのでしょうか?」
「私自身は、年に二回ですね。忘年会と暑気払いの時に編集部とライターさんに集まってもらって交流会をしています。」
「坂口さんとは、年に二回しか話をしない?」
「まぁ、ここで会うこともありますのでその時は、世間話程度の話はしますよ。普段は、担当編集者とやりとりしています。」
「そうですか。その担当編集者の方に、少し話を聞くことはできますか?」
「先程からいろいろと聞いていますが、坂口さんは、事件に関与しているのでしょうか?」
と、編集長の大場隆久は、食い下がった。
安田警部補は、次の通り答えた
「いえ、先程もお話をしました通り、編集の方と、ライターさんの関係も知っておきたくてお聞きしたまでです。」
「うちの雑誌が事件に関与しているみたいな言い方に聞こえますが。」
「それも違います。単純に雑誌ができるまでのプロセスが解かればと思って聞いてみました。」
「わかりました。担当編集者を紹介します。」
「ありがとうございます。」
と、安田警部補は、頭をさげた。
三十歳位の担当編集者が呼ばれた
「坂口さんと一緒に仕事しています。担当編集の園田明です。」
と、あいさつをした。
「園田さんは、坂口さんより年齢は若いですね。」
と、安田警部補は、聞いてみた。
「そうですね。」
と、頭をかきながら少し笑顔になった。
つづけて、園田は
「よき先輩ですよ。年齢もそうですが、人としても、ですね。」
「そうですか。尊敬している?」
「もちろん、していますよ。」
「呑みに行ったことはありますか?」
「プライベートで、ですか?」
「そうですね。」
「それはないですね。呑みには行きますが編集者とライターさんの仲だけですよ。」
「どんな話をするんですか?」
「もっぱら、ガンの話ですよ。」
「雑誌の構成とかもですか?」
「そんな話はしないですよ。ガンの知識はものすごいですから、僕が疑問に思ったことを解かり易く話をしてくれるので、編集としても助かっています。」
「そうだね。坂口さんが寄稿をしはじめてから、読者からの反応が、好意的になったね。」
と、編集長の大場隆久が、口をはさんだ。
安田警部補は
「モデルガンの改造等の話をしたことはありますか?」
この質問に、大場と園田は顔を見合わせた
編集長の大場隆久は
「やはり、いま起きている事件は、坂口さんの犯行ということですか?」
安田警部補は
「もし、そうだとしたらどうしますか?」
と、質問をした。
編集長の大場隆久は、こう答えた
「うちの雑誌とは関係ないです。モデルガンの改造についても、記事にしたことはありません。そんな記事を掲載してしまったら、モデルガンを製造しているメーカーから、大変な抗議を受けることになります。閉刊になるような危険な記事は絶対に書きませんし、警察としても、黙っていられないですよね。」
「そうですね。そんな記事が出回ってしまったら、大変な事件ですね。」
と、安田警部補は、答えた。
つづけて
「園田さんは、いかがですか?」
園田は、少し考えて編集長の大場を立たせて、席を離れていった
しばらくして、二人は戻ってきた
戻ってきた園田は、次の通り話をした
「先程のモデルガンの改造の件ですが、話をしたことはあります。」
「どちらから、その話題を持ち出したんですか?」
と、安田警部補は、質問をした。
「坂口さんからです。二人で呑みに行ったときに、そんな話がありました。」
「それは、雑誌に掲載したいという話でしたか?」
「そうではなくて、モデルガンの改造をしてみたいという話でした。」
「モデルガンの改造は、出来たという話は聞きましたか?」
「いえ、聞きませんでした。正直、真顔で話をはじめたので、少し怖くなって、それ以上、聞くのをやめてしまいました。」
「編集長には、この話をしましたか?」
「いえ、していません。」
「どうしてですか?真顔で言われて、怖く感じていたんですよね。」
園田は、編集長の大場の顔をみて
「すみません。怖かったのは事実ですが、僕にとって、大切なライターさんでもあって雑誌としても必要な方でしたので。」
と、言って、頭をさげた。
編集長の大場隆久は
「良いってよ。仕方ない私だって、そんな話を聞いただけで、雑誌に穴があくとも思っていないよ。」
つづけて
「刑事さん、坂口さんが、犯人なんでしょうか?」
安田警部補は、こう答えた
「いろいろな方に聞いている中の一人です。それ以上でもそれ以下でもありません。」
4
八月十二日 午後一時
捜査第一課10係の新城巡査部長と大和北署刑事第一課の浅倉警部補は、箱根にある『シューティングターゲット箱根』到着した。
新城巡査部長は、警察手帳を提示して
「ここを利用する、お客さんのことをお聞きしたい。」
と、告げた。
支配人の西野智明が応対してくれた
新城巡査部長が、支配人と話をはじめた
「今日からお盆休みですね。今日は、対戦ゲームですか?」
「そうですね。今日は対戦ゲームのイベントを開催しているんですよ。そこに2団体が予約を入れてくれて、対戦ゲームを楽しんでいます。」
「総勢何人の方が、参加しているのですか?」
「今日は、各20人で40人の愛好家が、楽しんでいますよ。」
「サバゲーって、言うですよね。」
「そうです。サバイバルゲームを短くしてサバゲーです。今の人は、なんでもかんでも短くしますからね。」
と、支配人の西野は、笑った。
つづけて
「刑事さん、今日はなんですか?」
新城巡査部長は、顔写真を五枚見せた。
もちろんその中の一枚は、坂口浩介の顔写真だった
「この五人の人達に見覚えはありますか?」
「そうだね。」
と、支配人の西野は一枚ずつ写真を確認しながら。
「この人は、覚えているよ。」
と、坂口浩介の写真を指さした。
「この人をなぜ覚えているんですか?」
「あー、雑誌の記者さんだろ。フリーライターで、記事を書いているって、言っていたよ。」
「お名前は、覚えていますか?」
「え~っと、ちょっと待ってな。」
探してきた名刺を見ながら
「この名刺だよ。坂口浩介さんだね。」
と、名刺を見せてくれた。
名刺には、フリーライターの肩書と現在の住所、大和市の住所と携帯電話の番号とメールアドレスが書かれていた。
「この坂口さんが、事件の犯人なんですか?」
と、西野は、聞いてきた。
「いえ、ここの五人は拳銃等のガンに精通している人達と聞いたので、ここでも遊んでいるのかなと思って、聞いてみました。」
と、新城巡査部長は、答えた。
つづけて
「この名刺の内容を書き写してもいいですか?」
「いいですよ。」
というと、支配人の西野は、拡大コピーをして渡してくれた。
「いつも、この坂口さんは、車でここにきているのでしょうか?」
と、新城巡査部長は、聞いた。
「ここには、車でしか来られないんですよ。だから、利用者は、自家用車か乗合でこちらまで来ています。それに、ライフルなんかもありますからね。ライフルを背負っていたら警察から、職質に止められたなんていう話も聞きますから自家用車ですよ。」
「坂口さんも、自家用車ですよね。どんな車だったか覚えていますか?」
「覚えていますよ。さすが雑誌の記者さんでサバゲーが好きなんだなという感じの車ですよ。」
「どんな車ですか?」
「メーカーはC社で幌付きのジープだね。名前は、ケーラ (Kayla)だね。」
「そんな車があるんですね。」
「それは、思ったよ。はじめて見たからね。さすが、雑誌の記者さんだと思った。マニアックな車みたいだね。そんなに走っていないって、言っていたよ。」
「ナンバーなんか覚えていないですよね。」
「ナンバーね。覚えているよ。八王子330へ47 でしたよ。」
「よく覚えていましたね。」
「47って、ソビエト時代に採用した軍用の自動小銃のAK47なんですよ。だから覚えてしまったんですよ。坂口さんは、どこまでもガンが好きなんですよね。」
「改造してみたとか言っていましたか?」
「いや、そんなことは言っていなかったけど、ケーラは、ほんの一時、軍事の現場にも配置されていたということだったよ。だから、ロールゲージも市販品よりも太くてライフルの固定マウントも付いていたよ。刑事さん、坂口さんが犯人なのか?」
「いえいえ、そうではないです。今回の事件。テレビ報道でもされているように、交通ルールの問題になっているので、坂口さんもどんな車を持っているのかなと思って聞いてみました。その他の四人にも同じように聞いていますよ。」
と、新城巡査部長は、答えた。
つづけて
「こちらを利用するお客さんで、銃を改造したりするという話を聞いたことはありませんか?」
「フィールドに出てしまった場合、スタッフとの接触はなくなってしまうので、お客さん同士が、どのような話をしているかは、解からないですね。」
「銃を見たら、改造されているかどうかは判りますか?」
「それは、判りませんね。色を塗って迷彩色にしたとかなら、判りますけど。」
と、支配人の西野は、答えた。
新城巡査部長は、支配人の西野に、お礼を言って覆面パトカーに戻った。
覆面パトカーに戻った新城巡査部長は、捜査本部にいる、田辺警部に携帯電話から、坂口浩介の携帯電話の番号とメールアドレス。所有しているC社のケーラの存在とナンバープレートをメールで送った。
5
八月十二日 午後二時三十分
新城巡査部長からの連絡を受けた、捜査第一課10係係長の田辺警部は、坂口浩介の行動監視をしている、永井巡査に連絡をとった
「新城から連絡がはいって、坂口浩介にはもう一台所有する車がある。その車の所在を確認してくれ。詳細はデータで送る。」
しばらくして、永井巡査から田辺警部に連絡がはいった
「データで送ってもらった坂口浩介所有のケーラですが。アパート周辺を探しましたが、見つかりませんでした。」
「坂口浩介は、いまアパートにいるのですか?」
「はい。昨日から外出していません。ですので、部屋にいます。」
「部屋いるかどうか、あらためて確認をしてください。」
と、伝えて電話を切った。
田辺警部は、出版社で話を聞いて戻ってきた、10係の安田警部補と大和北署の佐賀巡査部長に、奥多摩に行くように指示をした
「坂口浩介の実家に行って、ケーラの所在を確認してほしい。」
同日 午後三時三十分
坂口浩介が、アパートから出てきた。
坂口は、チェスターに乗って出かけようとしていた。
覆面パトカーで待機をしている、
大和北署の工藤巡査部長に、永井巡査は無線で連絡をした
「坂口浩介が、車に乗って出かける。」
「了解しました。すぐにそちらに向かいます。」
永井巡査は、10係の水月巡査と大和北署の藤田巡査にアパートで待機するように指示をして、工藤巡査部長が運転する覆面パトカーに乗って、坂口浩介の追跡を開始した。
無線を聞いた田辺警部は捜査本部で待機をしている、10係の酒田巡査部長に合流するように指示をした。
坂口の実家に向かっている10係の安田警部補と大和北署の佐賀巡査部長に、連絡をいれた「坂口浩介が、動きはじめた。すぐに酒田巡査部長に合流してほしい。」
その後逐一、無線で状況を知らせてきた
「現在、坂口の車は、国道246号線に出て、厚木方面に向かっています。」
「了解した。酒田巡査部長と安田警部補にも覆面パトカーで尾行するように指示をしている。もう少し詳細を教えてほしい。」
「了解しました。現在、国道246号線を厚木方面に走っています。金田陸橋を側道に入りました。国道129号線を相模原方面に向かいそうです。」
酒田巡査部長から
「永井巡査が乗っている覆面パトカーの後ろにつきました。」
という、無線連絡が、はいった。
「二台で尾行をしてください。くれぐれも、気づかれないようにお願いするよ。」
と、田辺警部は、無線で指示をした。
「現在、国道129号線から県道511号線に移り、相模川沿いを走っています。」
と、無線で報告が、はいった。
田辺警部は、永井巡査に電話連絡をいれた
「坂口浩介がアパートを出たときの状況を教えてほしい。」
「はい、木箱を持ってアパートから出てきました。」
「それだけですか?」
「はいそうです。」
「どの位の大きさの木箱ですか?」
「両手で持って余る程の大きさです。」
「どこで、何をするか判らない細心の注意をはらって、動向を監視してください。」
と、田辺警部は、指示をした。
田辺警部は、電話を切ったあと、木箱のことを考えていた。銃弾なのだろうか。もし、そうだとすると、これから行く場所で弾を装填するのだろうか。
無線がはいった
「坂口の車は、相模川に架かる高田橋の袂にある広い敷地に入りました。」
と、永井巡査は、告げてきた。
それを聞いた、安田警部補は
「現在、圏央道の相模原愛川ICを出たところです。高田橋に向かいます。」
同日 午後四時三十分
八月十二日。お盆休みが、はじまったこの日、高田橋の袂には、バーベキューや川で遊ぶ家族連れや大学生のサークルだろうか、若者のグループが多く楽しんでいた。ただ、この時間になると、日も陰りはじめ、帰り支度をするグループが多くみられた。
坂口浩介が、この敷地に入ってきたことを気にする人は、一人もいなかった。そして車は、ひと気のいない方向へ走って行った。
追跡をしていた三台の覆面パトカーは一度止まり、体制を整えることにした。
安田警部補は、無線を使って指示をした
「このまま3台が並ぶのは、目立つことになる。一旦その場で止まってください。」
「了解しました。」
「いま、酒田巡査部長の乗っている車に、佐賀巡査部長に行かせます。二人でカップルを装って、坂口浩介の車が見られる場所まで行って監視してください。」
「了解しました。」
佐賀巡査部長は、酒田巡査部長が乗っている車まで歩いて行った。そのまま坂口の車を追いかけていった。
安田警部補は、工藤巡査部長と永井巡査に車で待機をするように指示をして、安田自身は、釣り人を装い坂口の車がいる場所まで歩いていった。
坂口浩介が運転するチェスターは、釣りができる大きな池の前に運転席が見られないように止まっていた。
運転席に本人が乗っているかどうかは、カップルを装って監視している、酒田と佐賀でも判らなかった。
そんな中、安田警部補が釣竿片手に現れた。その恰好は、いかにも釣り師というなりに、二人は吹いてしまった。
「坂口は、運転席にいるよ。」
と、無線で連絡をしてきた。
そして、安田警部補は、二人に指示をした
「カップルを装って、歩きながら池の対岸まで歩いていき、監視して。」
「わかりました。」
対岸に辿りついたのを確認した安田警部補は、その場を離れた。
酒田巡査部長から無線連絡がはいった
「坂口が、車から降りてきました。」
つづけて
「いま、運転席側のドアミラーのカバー外しています。そして、木箱から何かを出して外したドアミラーのカバーに取り付けています。」
「映像は、撮っていますか?」
と、安田警部補が、聞いてきた。
「はい、佐賀巡査部長が、撮っています。」
と、酒田巡査部長は、答えた。
「運転席側のドアミラーのカバーを、元に戻しました。」
「つづいて、助手席側のドアミラーのカバーを外しました。同じく木箱からものを出して、取り付けをしました。」
その報告に、田辺警部は
「取り付けたのは、一回だけですか?」
「はい。何かを一回だけ取り付けました。」
と、酒田巡査部長は、答えた。
一連の取り付け作業が終わった坂口浩介は、運転席に戻った。
「いま、坂口が運転席に戻りました。」
という報告を受けて、安田警部補は走って覆面パトカーに戻った。
安田警部補は、次の通り指示をした
「酒田巡査部長と佐賀巡査部長は、撮影した映像を捜査本部までお願いします。あとは、二台で尾行してください。」
「了解しました。」
カップルを装った二人は、ゆっくり歩きながら、その場を離れ覆面パトカーに戻った。
銃弾を装填したということだとしたら、この時間から、いつでも誰かを殺すことができるということになる。毎週起きている一週間まで、あと五日。でも、気になった交通違反を見つけたら、犯行を犯すことになるのだろうか
坂口浩介の車が、動きはじめた
「尾行します。」
と、無線連絡が、はいった。
「坂口の車は、さっききた道とは逆の方向に出ていきました。相模原市街方面です。」
「国道129号線を、厚木方面に右折しました。」
「金田陸橋を、国道246号線渋谷方面に左折しました。」
「午後七時五十分アパートに戻りました。」
という、無線連絡だった。
無線を聞いていた田辺警部は、ちょっと拍子抜けな感じを覚えたが、何もなかったことに、安堵した。
アパートで監視をしている水月巡査と藤田巡査には、そのまま続けるように指示をして、他の捜査員は、捜査本部に戻るように指示をした。
6
先に、捜査本部に戻ってきた、酒田巡査部長と佐賀巡査部長は、坂口浩介を撮影した映像を捜査第一課10係係長の田辺警部に渡した。
鑑識課課長の山辺警部も集合した。
田辺警部は
「一度見せてほしい。そのあと山辺警部に鑑識作業をお願いしてもいいかな。」
「もちろんです。」
と、山辺警部は、答えた。
カーテンを閉めて、プロジェクターにビデオカメラを接続して、いまいる全捜査員と鑑識班でみた。
映像をみた、田辺警部は
「詳しい事は、山辺警部が全力で対処してくれると思っているが、この車には間違いなく銃弾に値する何かが装着されている。坂口浩介が、この連続した事件の主犯だと思っていいだろ。」
と、述べた。
「ただ、令状を取るには、証拠として不十分だ。それに、次の犯行で現行犯では、死者が出てしまう可能性もある。あと五日。坂口浩介の行動監視を重点に置いてこれからの方針を固めていく。」
と、発言をした。




