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《 行動監視 》

       1


八月十三日 午前七時



「坂口浩介が

アパートの部屋から出てきました。」


無線で、水月巡査が、出てきたことを一斉に知らせた。



水月巡査が、追加で伝えてきた

「現在、部屋から自家用車に荷物を運びだしています。」

「何を運びだしているんだ。」

と、田辺警部は、聞いた。


「ハードタイプのライフルケースが一つに、アタッシュケースが一つ。服などがはいりそうなボストンバックが一つです。それから、ブーツが一足です。」

「服装は、どんな感じですか?」

「はい、いたって普通な感じです。Tシャツに、デニムです。靴はスニーカーです。」

「水月巡査と藤田巡査は、張り込みを続けてください。その他の捜査員は、坂口浩介を尾行してください。」

と、田辺警部は、指示をした。


坂口のアパートを張っていた

    安田大輔警部補・工藤博一巡査部長

    新城泰治巡査部長・佐賀洋子巡査部長

の二台と、


捜査本部で待機をしていた

    酒田新平巡査部長・永井淳也巡査

 

計三台の、覆面パトカーで尾行を開始した。




尾行している工藤巡査部長が、無線で伝えてきた

「坂口浩介の車は、県道45号線を藤沢市の用田方面に向かっています。」


「新用田辻の交差点を右折しました。つづけて用田橋際交差点を右折して、県道43号線にはりました。」


「このまま、まっすぐ行けば、圏央道の海老名インターチェンジの入口です。」


「圏央道にはいりました。中央道方面外回りに乗りました。」


無線を聞いていた永井巡査は

「県央厚木インターチェンジから圏央道に乗って合流します。」

と、伝えてきた。



永井巡査から

「現在、最後尾につきました。」

と、追加の連絡が、はいった。


工藤巡査部長が、無線で伝えてきた

「圏央道の日の出インターチェンジを出ます。」


「日の出インターチェンジを出て、右折しました。」


「国道411号線と交差する瀬戸岡交差点を左折しました。青梅方面です。」


田辺警部は、無線で

「坂口の実家までは、一本道だから。気づかれないように、細心の注意をはらって尾行をつづけてください。」

と、伝えてきた。これを最後に、無線の電波が入らなくなった。




 同日 午前九時三十分



坂口の車は実家に到着した。お盆休みとはいえ朝の早い時間。比較的、道は空いていた



坂口の実家は、国道411号線からはいった都道を、清流沿いに遡って周辺は森に囲まれている場所にあった。

一度実家に訪れていた、捜査第一課11係係長の下条警部から、こんな報告があがっていた。一本道のため、部外者が通るような場所ではない。ただ、登山者であれば通る可能性はある。実家の先約2kmに、登山口があって、それまでの間にいくつかの駐車スペースがあるという報告を受けていた。


安田警部補は、永井巡査に覆面パトカーから降りるように指示をして、自らも覆面パトカーを降り、工藤巡査部長に運転を任せて、駐車スペースで待機するように指示をした。



二人は、坂口の動向の監視をはじめた。


実家には、坂口が所有しているもう一台の自家用車、ケーラが家の裏側に置かれていた。





同日 午後一時



坂口浩介が、実家から出てきた。

坂口は、チェスターで持ってきたライフルケース類をケーラに移しはじめた。

それをみた安田警部補は、無線でこう指示をした

「坂口が動き出す。新城君は、先に動き出して、国道411号線手前にある駐車場で待機してください。」

と、告げた。


新城巡査部長が運転する覆面パトカーが、実家の前を通過して行った。





同日 午後一時四十分



坂口浩介は、ケーラを運転して実家を出発した。



安田警部補は、無線で

坂口が、実家を出た。迎えに来てほしい。それから、新城君、見失わないでね。」

と、伝えた。

「了解しました。」

と、助手席に座っている佐賀巡査部長が、無線で答えた。


工藤巡査部長と酒田巡査部長が運転する覆面パトカーが迎えにきた



佐賀巡査部長が、逐一無線で状況を知らせていた。

「まだ、坂口が乗っているケーラは通過していません。」


安田警部補は、捜査本部にいる田辺警部に電話で坂口浩介が、実家を出発したことを連絡した。


佐賀巡査部長は

「坂口浩介のケーラが通り過ぎました。尾行を開始します。国道411号線を左折しました。さっき来た方向を戻っています。」

と、伝えてきた。


「行きに左折して国道411号線にはいった古里駅前交差点はまっすぐ、瑞穂・青梅方面に走行しています。」


「まだ、追いついていないから、逐一報告を頼みます。」

 安田警部補は、無線で、伝えた。

「了解しました。」

と、佐賀巡査部長は、答えた。


「現在、川井交差点を通過しました。まっすぐ青梅方面に向かっています。」

と、佐賀巡査部長が、追加情報を送ってきた。




新城巡査部長が運転する覆面パトカーが、御嶽駅前交差点に差しかかろうした時、無線がはいった。

「うしろについた。新城君は広い所で止まって、酒田君の覆面パトカーを先に行かせるから。」

と、指示をした。


軍畑駅の手前にあった広いスペースに新城巡査部長の運転する覆面パトカーが滑り込んだ。それをみた二台の覆面パトカーが通り過ぎて行った。

そして酒田巡査部長が運転する覆面パトカーが、坂口浩介が運転するケーラを尾行した。



しばらくして、坂口の運転するケーラは、圏央道の青梅インターチェンジから関越道方面外回りに乗った。


時間は、午後三時を過ぎていた。






       2


安田警部補は、捜査本部の田辺警部に電話で、圏央道に乗ったことを報告した。

田辺警部は、大和北署の浅倉警部補と一緒に、覆面パトカーで、追いかけることを伝えた。



坂口浩介のケーラは、圏央道から関越道を抜けて、北関東道にはいり、波志江スマートインターチェンジで降りて、赤城山の麓にある、赤城温泉のホテルにチェックインした。



夕方の六時を過ぎていた。



この行動の連絡を聞いて、田辺警部は少し不安を感じていた。あれだけの事件を起こしているであろう坂口浩介は、そんなにのんびりと、温泉のあるホテルに泊まるだろうか。それに、今日運転している車は、いつもサバゲーを楽しむ時に使用するジープだ。現に、チェスターは実家に置いてきている。しかも、銃の弾かもしれない物を、装填していた。

何を考えているのか、正直解からなくなった。





同日 午後八時二十分



田辺警部は、先に到着した安田警部補達と合流した。近くの温泉宿に宿泊のお願いをしたのだが、お盆休みの連休、どこも満室だった。坂口が宿泊しているホテルが、時間外だけど温泉の入浴はいいですよ。と言ってくれた。代わる代わる入浴することにした。







       3


 八月十四日 午前八時


三台の覆面パトカーは、国道353号線に出るまでの間で駐車ができるスペースで待機していた。


田辺警部が乗っている覆面パトカーはホテルの協力のもと、敷地内で待機をしていた。


「坂口浩介が、チャックアウトして、エンジンをかけた。そろそろだ。」

と、無線で田辺警部は、伝えた


昨日のうちに、担当の仲居さんに、今日の予定を聞いてもらっていた。今日の坂口浩介の予定は、朝9時までに、赤城山の麓のサバイバルゲームが楽しめる、『エアー・シューティング赤城』で、定例会に参加するということだった。

仲居さんの話だと、ものすごく紳士的な態度で、質問にも楽しそうに返してくれたということだった。

これを聞いて、田辺警部は、ますます坂口浩介の言動が腑に落ちなくなった。交通ルールには厳しいのに、人としての接し方には問題を感じない。



ちなみに

定例会を調べてみたらこんな感じだった


朝8時30分受付開始で、午前・午後の2回のゲームがあり、解散は午後4時30分。一人から参加が可能で、チームは、くじ引きで決まる。だから、友人同士で来ても対戦相手になることもある。

というルールになっていた。



『エアー・シューティング赤城』は、国道353号線から曲がるのだが、ここを利用する人以外が通ることのないような道路の先にあった。ただ、国道353号線からはいってすぐに、民間の施設があったため、許可を得て監視ポイントの一つとした。





 同日 午後四時四十五分



坂口浩介が運転するケーラが出てきた。 ケーラは、国道353号線方向に向かい、

国道を左折して渋川方面に出ていった。


四ケ所にわかれて待機をしていた覆面パトカーは、一斉に同じ方向に向かった


浅倉警部補が運転して、田辺警部が乗っている覆面パトカーが、集団のあとから尾行を開始した。


坂口浩介が運転するケーラを含め、何台かの車が連なっているのが解かった。

坂口の車の前に一台、後ろに二台の計四台の車が連なっていた。その後ろに、浅倉警部補の覆面パトカー。一台はさんで、三台の覆面パトカーがつづいていた。





同日 午後五時十五分



しばらく国道353号線を渋川方向に連なって走っていたが、四台の車は国道沿いにある道の駅の日帰り温泉施設を楽しむために、駐車場にはいった。

追っかけ、四台の覆面パトカーも駐車場にはいった。そして四台は、バラバラに駐車した


四台で来た、坂口浩介を含めたメンバーは、合計6人だった。少し駐車場でおしゃべりをして、温泉施設に消えていった。


新城巡査部長と佐賀巡査部長は、6人のあとを追い、入店するのを見定めた。

そして、入店したのを確認して、佐賀巡査部長は、田辺警部に電話で連絡をした。



新城巡査部長は、車のナンバープレートを書き留めて、田辺警部に報告した。


一、宇都宮 500 お 6458  男性 2人

二、長岡 300 し 7863   男性 1人  女性 1人

三、多摩 583 へ 1      男性 1人



田辺警部は、無線で各車両の尾行を、捜査員に指示した。


一、宇都宮 500 お 6458  酒田新平巡査部長・永井淳也巡査

二、長岡 300 し 7863   新城泰治巡査部長・佐賀洋子巡査部長

三、多摩 583 へ 1      安田大輔警部補・工藤博一巡査部長

四、坂口浩介の尾行         田辺潤警部・浅倉正和警部補



「各車両のナンバープレートからして、温泉施設から出たら、この駐車場で解散するだろう。そしたら、各自の担当車両を尾行してください。」



そして、次の指示をした。


一、帰宅途中のどこかに立ち寄った際には、その場で各人に質問をしてください。自宅まで立ち寄らな   かった場合は、自宅でお話を聞いてください

二、名前と住所、連絡先を聞いてください

三、質問は2つ

    ① 坂口の一日の状況を知る

    ② 拳銃の改造について

四、この質問は絶対に口外しないように確約をとること




そして、話を聞き終わったら、一度帰宅して明日午前10時に捜査本部に集まるように指示をした。



その後田辺警部は、捜査第一課課長の佐々木警視に現在までの状況の報告をした。そして、捜査第一課11係係長の下条警部と木島巡査に、坂口浩介のアパートを監視している、水月巡査と藤田巡査と一緒に、坂口の実家を監視するように捜査の協力を依頼した。



田辺警部は、水月巡査に電話で連絡をした。これから実家に戻ると思われる、11係係長の下条警部と一緒に、向かってほしい。と、伝えた。





同日 午後七時十五分



6人が温泉施設から出てきた。


各人、すっきりした顔つきで出てきた

 駐車場で、最後のおしゃべりをして






同日 午後七時五十分 


それぞれの車に乗って解散した







       4


八月十四日 午後九時二十分


二人の男性が乗る宇都宮ナンバーの車が、北関東道にある、パーキングエリアの出流原にはいった。

続けて尾行していた、酒田巡査部長の覆面パトカーもはいった。


二人は、トイレに行って、缶コーヒーを買って、テーブル席に座って、談笑していた


そこに、警察手帳を提示して、酒田巡査部長と永井巡査が声をかけた

「おくつろぎのところ、すみません。」

「なんですか?」

と、すこし怪訝な顔をして答えた。


「座っていいですか?」

と、酒田巡査部長は、言った。

「あぁ。」

と、短く返事をした。


そして、二人の刑事は席に着いた。



酒田巡査部長は、こう話をはじめた

「今日。一日『エアー・シューティング赤城』で、サバイバルゲームを楽しんでいましたよね。」

「そうだけど。それが。」


「その時の様子を教えて欲しいと思って、声をかけました。」

「なにを。」


「ゲームが終わって、温泉に立ち寄った6人って、昔からのご友人ですか?」

「いや、今日知り合ったよな。」

「そうだね。チームが一緒で、なんとなく意気投合して、温泉に行った。」

と、もう一人の男性が、答えた。


酒田巡査部長は、つづけて

「全員のお名前ご存知ですか?」

「そういえば、知らないな。LINEの交換もしなかったね。」


「温泉にも行ったのに?」

「あ、そうだね。そういえば、いつもなら一人くらいは交換するけど、今回は誰一人としなかったよ。」

「僕もしなかったよ。」


「そういう雰囲気じゃなかった。」

「いや、温泉にも一緒に行った人がリーダーシップをとってくれて、ものすごく楽しくて、2ゲームやったけど。心身ともにいい疲れが心地よくて、皆で笑って、敵を撃って、あっという間の一日だったよ。だから、名前なんか知らなくても、話しが盛り上がってね。」

「そういえば、そうだった。いままでにないくらい、充実していた。」


「ちなみに、そのリーダーシップをとっていた人って、この人ですか?」

と、酒田巡査部長は、坂口浩介の写真を二人に見せた。


「そうそう、この人。」

「あー、この人だよ。」

と、二人は口を揃えて、答えた。


「そんなに、盛り上がっていた。」

「そうそう、ガンの話から、フィールド内の動き方から、サバイバルゲームの極意なんかも教えてくれて。」

「そうなんだけど、あの人、このフィールドはじめてって、言っていたよ。」

「そうだっけ。」

「そうだよ。なのに、これだけのレクチャーをするなんて、すごいなと思ったよ。」


「ゲームには勝てた。」

「そう、2ゲームともに勝ったね。1ゲームの開始頃には、チームを掌握していたんじゃないかな。」

「そういえば、そうだったかも。」


「それは、どういう感じで。」

「動きの指示が的確で、無駄がなかったね。彼自身も、率先して撃ちまくっていたよ。だから、僕もチームとして撃ちまくった。」

と、言って、笑った。

「無駄がないと言えば、ゲーム中の話し方も、言葉数も無駄がなかったかも。やっていたときには感じなかったけど、いま思えば、そう感じた。」


「もうすこし詳しく教えてもらっていい?」

「手で合図をして、動きを決めていたんだけど。片手の5本の指だけで、5個の合図だけ決めて、でもそれで十分だったんだよ。」

「そうだった。5個の合図で、でも、個々のメンバーに5本の指で的確に指示をして、それに合わせて動いて、相手を倒した。」


「でも、皆楽しめた?」

「そうなんだよ。休み時間は、やっぱり知識が豊富だから、質問したり、誰かの銃を見て、特徴の話をしたり。」

「そう、だから皆、彼の虜になったというか。彼のいうことなら、間違いない。そんな感じ。」


「それで、勝てた。」

「1ゲームで結果出たからね。」

「そうそう、魔法にかけられていたかな。」

と、二人は、笑った。


酒田巡査部長は、本題にはいった

「銃の改造とかという話はあった?」

「モデルガンの改造?」


「そうなんだけど。」

「そんな話はでなかったよ。」

「なかった。なんでそんな話になるんだ。」


「いま、改造モデルガンが出回っていて、こういうフィールドで、売買されている可能性があるという話が出てきたんで、聞いてみたよ。」

「そんな話は、ないよ。」

「そんな話をする暇さえなかったくらいに、彼の話も面白くて、なにより相手を倒すという意気込みで、皆でワイワイしていたよ。だから、今日は充実してたよ。」


酒田巡査部長は

二人に名前と住所・連絡先を聞いた

      梶谷輝也 栃木県宇都宮市

      多田善治 栃木県宇都宮市


酒田巡査部長は最後に

「君たちを疑っている訳ではないんだけど。モデルガンの改造は、殺人事件にまで発展する可能性がある、だから犯人に気づかれて捨てられて、他の人が拾って使われてしまったらと最悪な事も考えられるので、この話は口外しないでほしい。早いタイミングで、犯人を特定して捕まえるから、協力してほしい。」

と、お願いをした。

「まだ、特定していないんだ。」

「そう、だからいろいろな話を聞いてみた。お願いできるかな。」

「わかったよ。」

「そうするよ。」

と、二人は、答えた。



酒田巡査部長は、二人に気をつけて帰るように伝えて、お礼を言って覆面パトカーに戻った。







       5



 長岡ナンバーの二人組と多摩ナンバーの男性は、渋川伊香保インターチェンジから関越道に乗って最初のサービスエリアで休憩をはじめた。

 そこに尾行していた捜査員が、警察手帳を提示して、酒田巡査部長が質問をした内容と同じ質問をした。


 一、お互いの名前は知らない

 二、坂口浩介が、リーダーシップをとっていた

 三、改造銃の話題はなかった


という結果だった。


五人の話は、一致していた。






       6



 八月十四日 午後十一時


 坂口浩介を尾行している田辺警部は、関越道から圏央道に乗り、行きと同じ青梅インターチェンジから降りた。お盆の真っ只中渋滞こそなかったが時折、混雑程度に巻き込まれた。

このタイミングで、水月巡査から電話連絡がはいった

「いま、坂口浩介の実家に到着しました。」

「わかった。こっちは、青梅インターチェンジを出たところだ、あと一時間程でそっちに着く。」

と、伝えた。



坂口浩介の車は、順調に実家に向かっていた。

古里駅前の交差点を過ぎたあたりで、田辺警部は、水月巡査に電話で連絡をした

「もうすこしで、国道から外れる、そしたら、尾行は中止する。実家までは一本道だから、実家に到着したら、連絡をください。曲がったよ。到着したらよろしく。」


「了解しました。」

と、水月巡査は、答えた。



 日付が変わった

 八月十五日 午前0時十分


 坂口浩介が実家に到着したという報告がはいった。坂口は荷物も降ろさないまま、家に入っていったという報告だった。

 その報告を受けて、田辺警部は監視を任せて、捜査本部に戻った。



捜査本部に戻ったのは、午前三時を過ぎていた。






       7


 八月十五日 午前九時


 捜査第一課10係係長の田辺警部は、捜査本部で朝を迎えた。さすがの遠征に、身体が強張っているのを感じた。

 そんな中、坂口の実家を監視している、水月巡査に連絡をした

「おはよう、そっちの状況はどうだ。」

「はい、特に動きはありません。坂口やその家族も、家から出てきていません。」

と、報告をした。



 さすがに、お盆の連休、家族ものんびり過ごしているのだろう。と考えていた。今年のお盆休みの連休は、今日が最終日。明日は16日になるから、社会が動き出す。そして、明後日が次の犯行日であろう一週間となる。




 同日 午前十時



 捜査員が集合した。


 田辺警部は

「昨日は、おつかれでした。ただ、単純に行動監視になってしまったことが悔しく思っている。これ以上死者を出したくない。毎回同じことしか言えないのが申し訳ないが、なにかを見つけてほしい、お願いする。」

と、あいさつした。



安田警部補は、田辺警部に近寄って、こう言った。

「一度、家に戻ってください。」

「わかった。着替えてくる。」

と、言って、捜査本部を出ていった。




 同日 午後一時三十分



 坂口浩介の実家を監視している、水月巡査から、電話で連絡がはいった。電話は、安田警部補がとった

「坂口浩介が、昨日乗っていた、ケーラからライフルケース等をチェスターに載せ替えています。」

「そろそろ、アパートに戻るかもしれないな。」

「はい。」

「後方は、11係係長の下条警部に任せて、水月君は、先に下の駐車場で、待機をしてください。」

と、伝えた。




 同日 午後二時



 坂口浩介が乗った、チェスターが実家を出発したという報告があった。


 それを聞いた安田警部補は、10係の永井巡査と大和北署の佐賀巡査部長にアパートの監視に行くように指示をした。




 同日 午後二時二十分



田辺警部が捜査本部に戻ってきた。そして、坂口が動いたことを報告した。


田辺警部は、神奈川県警捜査第一課課長の佐々木警視に、一度県警本部に戻って、打ち合わせをしたいという電話連絡をいれた。

そして、安田警部補に捜査本部を任せて、県警本部に向かった。







       8


八月十五日 午後三時四十分


神奈川県警本部に戻った捜査第一課10係係長の田辺警部は、そのまま、捜査第一課課長の佐々木警視の部屋に行った。


佐々木警視は

「おつかれさん。」

と、言って、迎えた。

「決定的な証拠を見つけることができませんでした、申し訳ありません。」

と言って、頭をさげた。

「それで、話しとはどんなことかね。」

と、田辺警部に、言った。



一拍空けて、田辺警部は、話はじめた。


「実はもうご存知の通り、坂口浩介の所有する、チェスターに銃弾と思われものが装填されています。」


「そうだね。その割には、昨日は群馬まで行って、サバイバルゲームを楽しんだということだったね。」

「そうです。でもそれは、もういつでも大丈夫、準備は出来ているという安心感から起こした行動だと考えています。それに、一緒にゲームを楽しんだ人達から、話を聞いたところ、坂口の性格が解かりました。」


「どんな感じに受け取った?」

「坂口浩介という男は、すべてが自分の世界で回っていると思っている節があります。だから、昨日のサバゲーでも先導をきって、撃ちまくって、相手を打ちのめしたと考えています。それから、周りを巻き込む力を持っていると感じています。ただ、それは自分を慕ってくれる人には全力で守る。自尊心が高いため、今回の事件のような交通ルールを守らない者に対しての敵対心は、人一倍強いと受け取りました。明日からは平日です。テレビ番組も通常に戻り、ワイドショーでも、あらためて取り上げてくれると思います。そうなれば、自尊心の塊の坂口も、明後日の17日の犯行をとめる要素はなくなります。いや、絶対にやると断言してもいいと思っています。」


「それで、今後どうしたいんだ。」

「ここからが、問題なんですが。」

「そうだな。何も手立てが見つかっていない訳だからね。」

と、佐々木警視は、言った。



田辺警部は、次のように説明をはじめた。


「これからの計画は、神奈川県警察本部に所属するすべての警察官を動員して行う誘導作戦になります。16日午後四時から18日午後四時までに勤務する警察官は、地域部の管轄である通信指令課の傘下にはいり、通信指令の指示のもと、坂口浩介の犯行を封ずる作戦になります。先ほども話をしました通り、明後日の17日に犯行を犯さないようにすればいいのです。」


「具体的には、どうするんだ。」

と、佐々木警視が、聞いた。

「自動車警ら隊の覆面パトカーが、坂口浩介のチェスターを追尾します。」


「それで?」

「その追尾は、通信指令ですべて把握できます。ですので、通信指令は追尾している覆面パトカーを参考に、制服パトカーと交番の警察官に、指示をして、坂口に堂々と警備をしている様子を見せつけるという計画です。」


「具体的には?」

「通信指令には、チェスターが通りそうな場所を先読みしてもらって、対向車から制服パトカーをすれ違うように指示をする。または、背後につけて牽制をする。交番の近くを通る際には、警察官を立たせて牽制をする。といった感じです。」


「要するに、17日に犯行をさせないということか。」

「そうです。」


「ただ、それでは、犯行は起きないかもしれないが、逮捕や捜索令状の発行はできないぞ。」

と、佐々木警視は、言った。


「いまは、それしか犯行を防ぐことはできません。死者をださない方法を考えるしかないんです。」

と、田辺警部は、言った。



佐々木警視は、頭を抱えてしまった。県警本部全体を動かすには時間がない。それに、もし失敗をして、犯行が起きて死者が出てしまったら、地域部や交通部、そこに関わったすべての警察官に汚点として残る。



佐々木警視は

「刑事部の本田刑事部長に、相談をしてくる。」

と、田辺警部に言って、部屋を出ていった。



時間は、午後四時三十分を過ぎていた。







       9


 田辺警部は自分の席に戻って、佐々木警視の返事を待った。



 八月十五日 午後五時二十分


坂口浩介を尾行している、水月巡査から電話連絡がはいった

「いま、坂口が自宅アパートに到着しました。ライフルケース類を、部屋まで持って行き、片づけをしています。」

「了解した、そのまま藤田巡査と監視をつづけてください。」

と、水月巡査に伝えて電話を切った。



そのあとすぐ、田辺警部は11係係長の下条警部に電話をして、協力のお礼をして、戻ってほしいと、伝えた



 同日 午後五時四十分



 田辺警部は、佐々木警視から第三会議室に来るようにと、電話連絡がはいった。



田辺警部は、第三会議室のドアを叩いて、入室した。

会議室には幹部が、勢ぞろいしていた。



 地域部部長・通信指令課課長・自動車警ら隊隊長・地域総務課航空隊隊長

 交通部部長・第一交通機動隊隊長・第二交通機動隊隊長

 刑事部部長・捜査第一課課長



総勢9人が、席に座っていた。



刑事部の刑事部長である本田智和警視正が、先に根回しをしていてくれていた。この事件が刑事部で解決されなかった時は、協力を願いたいと打ち合わせをしていてくれていた。


地域部の部長が、こう言った

「君の提案をそのまま引き継ぐ。明日の16日の午後四時から18日の午後四時まで、自動車警ら隊主導で、各方面がバックアップする。それから、航空隊にも応援させる。万が一、見失った時のことを考えて、空からもバックアップをする。交通部も第一・第二機動隊が全域をカバーしながら、通信指令のもと、動いてくれるようになった。」


田辺警部は

「ありがとうございました。よろしくお願い申し上げます。」

と、言って、頭をさげた。


田辺警部は、警察本部に残って地域部に協力することになった




 同日 午後六時四十五分



 田辺警部は、自分の席に戻って、安田警部補に電話で連絡した。

「明日の16日午後四時から18日の午後四時まで主導権は自動車警ら隊と通信指令課に変わる。これは、事件解決のための最大限の得策だ。ただ、いまの体制は変わらない。監視も変わらない、証拠を探すのも変わらない。ただ、ただ、令状を取りたいんだ。頼む。」

と、伝えた。



安田警部補は、大和北署にいる全捜査員と鑑識班を招集した。

そこで、田辺警部の考えを伝えた。犯行をさせないように、県警全体が協力している。だから、自分達は令状を発行させるための捜査をいま一度する。








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